2017年06月18日

TVドラマベスト10(第5位)

 2011年7月24日にアナログ放送が途絶えたときに、デジタル放送に切り替えず、
 TVを自宅では全く見なくなりました。

 しかし、それまでに出会った数々の素晴らしいTV番組は、
 私の人格形成に少なからぬ影響を与えており、ここに感謝の意味を込めて、
 2011年までの半世紀のTV鑑賞報告をさせていただきたいと思います。

 といことで、本体ブログの「Essay」に、
 「TVドラマベスト10」と「TV時代劇ベスト10」を連載したのですが、
 こちらのミニブログでの映画の短評記事が蓄積したので、
 誤記を修正し、ベスト10表を見易くし、リンクも飛び易くして、
 こちらに再度載せてみることにしました。

 既に「TV時代劇ベスト10」は報告しましたが、
 今回から「TVドラマベスト10」を報告します。

 と思い、第10位から順に報告しようとしたのですが、
 野際陽子さんが亡くなるという何とも寂しいニュースが入り、
 追悼の意味で、
 野際陽子さんの本当に初期の頃の準主役の当たり役となった
 第5位から始めたいと思います。
        §§§
 今でこそTVドラマには、当然に、
 トレンディな(時代の先端をいく)才色兼備の女優が主役・準主役を張りますが、
 野際陽子さんがその走りであったことは間違いありません。

 当時はドラマの女優といえば専ら映画畑から供給されていたのですが
 (それはそれで当時の女優の美しさは今風のタレントの比ではありませんでしたが)、
 TVアナウンサーであった野際陽子さんは現代を生きる女性としてのリアリティがあり、
 その凛とした美しさと現代的な知性は、齢を重ねてますます際だったと思います
 (私にとってはズーッとあこがれのお姉様でした)。

 野際陽子さんのすごいところは、年齢による衰えが最もでてしまうTVの世界で、
 半世紀にわたり、その年齢に応じてトレンディかつ美しくあり続けたことです
 (その代わり、TVドラマの映画化以外の映画や舞台での印象は希薄ですが、
  それは野際陽子さんにとっては勲章といってよいでしょう)。

 例えば、新垣結衣さんや米倉涼子さんらがTVの世界で80過ぎまで、
 存在感のある美人スターであり続けられるか、を考えると、
 野際陽子さんは、八千草薫さんと並び奇跡の存在であったといえます。

 また、野際陽子さんは、我が国の戦前・戦後の記憶がほとんどなくなった、
 世界でも稀有な平和な時代の開始をを象徴していたといってもよく、
 このタイミングで亡くなったことは、
 その平和な時代を大いに享受した我々の世代にとって、
 何かの終わりのようにも思います(こんなに早く終わりがくるとは)。
        §§§
 私は、当時会社での仕事が忙しく、冬彦さんの母親役はたぶん見ておらず、
 久々に野際陽子さんを意識したのはDVDで観た
 『トリック』での仲間由紀恵さんの母親役ですが、
 このあたりのことは、またの機会にお話ししようと思います。

 なお、当時の本体ブログでの連載は、かなり適当に書いており、
 あまりに昔のドラマについては記憶違いも相当にあり、
 その記憶違いもそれなりに面白いかと思いますので、修正しないままにしておきます。

 なお、当時の連載の中で、後日に記憶違いに気が付いて入れた《お詫びと訂正》を、
 本報告の最後に移動しておきました。

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第5位 『ローンウルフ一匹狼』(1967〜1968)
     『非常のライセンス』(1973〜1980)


第5位.jpg

 前回までの第10位から第6位までは、1960年代3本、2005年以降が2本と、
 TV草創期から最近までの間40年程が抜け落ちていますが、
 第5位から第1位では、その間が少しだけ補充されます。

 『ローンウルフ一匹狼』は、
 天地茂演じる刑事が、美貌の妻「冴子」(野際陽子が本当に美しい)の失踪を機に、
 刑事を辞めざるをえなくなり、
 妻の行方を捜しつつ事件に巻き込まれて孤独な闘いを続ける
 『逃亡者』(1963)の流れもくむハードボイルド系の名作ドラマです。

 『非常のライセンス』は、
 警察機構内に視点を定め、天地茂演じる会田刑事が、
 掟破りの捜査によって巨悪と孤独な対決をする、
 今考えると『ダーティハリー』(1971)の流れをくむ
 「警察ハードボイルドアクション」の走りであり、
 『新宿鮫』(小説1990)の原型の1つといってよいと思います。

 山村聰の上司や渡辺文雄の東大卒キャリアとの葛藤など、
 渋い役者が濃い演技をしておりました
 (今思うと『必殺仕掛人』(1972-1973)テイストも濃厚か)。

 回想の場面の会田刑事の亡き妻の上村香子が美しかった。

 『ローンウルフ一匹狼』はTVオリジナルで、原案が都築道夫、深沢欣二であり、
 『非常のライセンス』は、
 原作が生島治郎で、脚本に橋本忍、赤川次郎も参加していたとなれば、
 傑作ができるのも当然かと思います。

 『非常のライセンス』は、てっきり1960年代のドラマかと思っていましたが、
 今回駄文を書くにあたり、
 1970年代前半から始まり1980年まで続いていたのを知り驚きました。

 野際陽子は、『ローンウルフ一匹狼』での印象が強烈だったのと、
 『非常のライセンス』ではテーマソング(名曲!)を歌っていたこともあり、
 『非常のライセンス』でも天地茂とコンビを組んでいたかと勘違いしており、
 私の中で、2つのドラマが完全に融合しておりました。

 天地茂は、
 当塾生のMs.M.K.の永遠の憧れの人である成田三樹夫の少し先輩にあたり、
 初期の映画やTVドラマでは、あの三白眼を活かした悪役専門であったのが、
 『座頭市物語』(1962)の平手造酒役の
 労咳病みの素浪人を悲哀たっぷりに演じて以降、本当にいい役者であり続けました。

 亡くなった母が天地茂が好きで、
 『ローンウルフ一匹狼』〜『非常のライセンス』を欠かさず観ており、
 Ms.M.K.もそうですが、大人の女性というのは、
 必ずしも二枚目でなくても心がときめくものなのだ、
 ということを教えてくれた人生教訓ドラマでもありました。

 また「美貌の妻」は、それだけで、
 こういう渋い男が探し求める強い動機付けになるということも新鮮でありました
 (野際陽子だから当然か)。

《お詫びと訂正》

 今回作成した表を、最初に作成してから書き出せばよかったのですが、
 記憶だけで書き流していたため、
 TVドラマベスト10(第5位)で、とんでもない勘違いをしておりました。

 『非常のライセンス』の主題歌は、天地茂が歌う「昭和ブルース」でした。

 天地茂の真っ暗な雰囲気が、当時、耳にこびりついていたことを思い出しました。

 野際陽子の歌う「非情のライセンス」は『キイハンター』の主題歌でした。

 『ローンウルフ一匹狼』の天地茂−野際陽子コンビの印象が強烈で、
 『非常のライセンス』の記憶がごちゃごちゃになっているようです。

 ここに謹んでお詫びしますと共に、訂正させていただきます。

 なお、『非常のライセンス』のオープニング曲を提供した渡辺岳夫は、
 栗塚旭初期三部作『新撰組血風録』『俺は用心棒』『燃えよ剣
 の主題歌の作曲の方で有名ですね。

posted by Dausuke SHIBA at 10:27| Comment(0) | TrackBack(0) | TVドラマ

2017年06月11日

『マイ・インターン』女性の言って欲しいことを全て言ってくれる男達

 この5月に事務所を移転したのを機に、
 本体ブログをリニューアルする予定でいるのですが、
 忙しさにかまけてなかなかすることができません。

 本体ブログの『Essay』は、こちらのミニブログに移転しようと思っていますが、
 最近、仲間由紀恵さんの身辺で起きたお馬鹿な事件を知って、
 以前本体ブログの『Essay』で書いた記事を思い出してしまいました。

 折角の機会ですので、今回はこの記事を移転してみました
 (レイアウト等の関係で少し修正しています)。

 何故、この記事を思い出したかは、
 最後まで読んでいただけるとわかると思います。

 2015年の秋に書いた記事ですので、そのときの気分のままです。

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 今年の秋に、久々に映画『マイ・インターン』を見に行きました。

 行きつけの「新宿ピカデリー」は全回満席であったため、
 日本橋三越の近くのCOREDO室町に入っている
 TOHOシネマズ日本橋まで行ってきました。

 日本橋をウロウロするなどというのも何十年ぶりで、
 青空の下、オリンピックロゴのフラッグが並び、
 女性が1日いても飽きないようなにオシャレな気持ちのよい街並みになっていました。
図1.jpg

 『マイ・インターン』は、
 新宿ピカデリーで『進撃の巨人(第一部)』を見たときに目にした、
 ロバート・デ・ニーロと、アン・ハサウェイの
 ツーショットポスターが何ともかっこよかったので、
 楽しみで、実際、期待通りお奨めの絶品でした。

■物語■
 レトロな外観ながら現代的内装のビルで、
 ファッションサイトを運営する社長のジュールズ(アン・ハサウェイ)は、
 忙しすぎることから、会社全体を把握しきれず、運営に綻びが見え始めていた。

 危機感を抱く専務(40才際前後の毒にも薬にもならない男)に、
 社長を雇って経営を任せるべきだと提案され、ジュールズはショックを受ける。

      §§§

 そこに、70歳ながらそつのない老ビジネスマンのベン(デ・ニーロ)が、
 会社のシニア・インターン制度に応募してきた。

 ジュールズは、制度を企画したことすら忘れており、
 ITに完全に取り残された時代遅れの老インターンを厄介者扱いして遠ざける。

 しかし、社内外の危機に見舞われるジュールズを、老練な営業力で助けるベンを、
 ジュールズは心の支えとして他の誰よりも頼りにしていくようになる。

 ジュールズの多忙は、さらに愛する夫と娘とで営む家庭まで危機に陥れるが、
 やはり頼れるのはベンだけという状況に・・・。

 ベン(ロバート・デ・ニーロ)とジュールズ(アン・ハサウェイ)を映画パンフレットから引用しました。
IMG_0001.jpg

■ロバート・デ・ニーロ(ベン)■
 かっこよすぎです。

 あのアメリカン・ニューシネマの名作『タクシー・ドライバー』(1976)で
 不気味な運転手を演じ、どの映画でもアクの強すぎるデ・ニーロですが、
 年を重ねて、
 彼女の家に行ったら奥から父親のデ・ニーロが笑みを浮かべて迎えに出てきた、
 というようなシュールなシチュエーションで、
 チャーミングな訳の分からないロートルオヤジを演じています。

      §§§

 今回も、定年までは凄腕の電話帳メーカーの営業販売部長で、
 退職後は妻に死なれ家族とも離れてやや空しい日々を送りながらも、
 ジュールズの会社のシニア・インターンに思いを込めて応募し、
 ジュールズを助ける一方で、
 一回りほど年下の会社の健康トレーナーを口説いたり、
 ビジネススーツとビジネスバッグがきまり、
 会社の毒にも薬にもならないジーンズスタイルの若手社員に憧れられたりと、
 ど真ん中のはまり役です。

 ジュールズが深夜まで仕事をしているオフィスで、
 部下として共に残り、夜食を食べながら、
 ベンがジュールズに、何故この会社に応募したかをしみじみと語る場面は、
 心にこみ上げてくるものがあります。

■アン・ハサウェイ(ジュールズ)■
 ジーンズを履いても通常の女性の足よりも細い、という信じられないスタイルで、
 ビジネスシーンのブランドファッションを次々と着こなしていました。

 『プラダを着た悪魔』(2006)で、デ・ニーロよりもさらに不気味な
 メリル・ストリープのファッション会社社長に苛め抜かれた、
 あの可憐な田舎娘が、こんなにも都会的にブラッシュアップされるのかと、
 感慨深いものがありました。

■ナンシー・マイヤーズ(監督)■
 懐かしい『赤ちゃんはトップレディがお好き』(1987)で脚本・制作をした、
 ジュールズを地で行くような美人のベテラン女性監督。

 毒にも薬にもならないおたく坊やたちを率いる女性社長ジュールズが、
 ひたすら美しく、聡明かつ人生に立ち向かう女性として描かれる一方で、

 彼女の公私を包容力豊かに厳しくも暖かく支えるベンだけではなく、
 ジュールズのために専業主夫となる愛すべき夫といい、
 女性が言って欲しいことやって欲しいことを全部してくれる男たちが配置され、
 女性の映画に期待するツボが全て抑えられているところはさすがです。

■日本版『マイ・インターン』■
 この映画を日本で制作したら、
 どういうスタッフ・キャストになるかを考えてみました。

《ジュールズ》
 30代で美人でスタイルがよく、演技力もある好感度の高い女優となると、
 やはり今が旬の仲間由紀恵で決まりでしょう。

《ベン》
 しかし、ロバート・デ・ニーロに匹敵する存在感があり、
 品がよく、かつコメディ演技に長けた日本男優の選考は難航しました。

 内野聖陽が年季を積めばピッタリなのですが、いかんせん若すぎます。

 佐藤浩市もまだ若すぎ、舘ひろしは軽すぎ、
 北大路欣也も元凄腕の営業部長の雰囲気がでそうにありません。

 ということで悩んでいたのですが、思いついた人がおり、
 この方を中心にすると、周りの配役・設定も自然に決まりました。

《監督》
 堤幸彦は『天空の蜂』(2015)で、
 自ら育て日本を代表する美人女優となった仲間由紀恵に
 何と酷い役をやせたのかを反省すべきです。

 また『トリック』(2014)や『イニシエーション・ラブ』(2015)
 での森田芳光に相通じるやや品性に欠ける女性感覚を、
 ナンシー・マイヤーズの脚本をじっくり味わって叩きなおす必要があります。

■日本版『マイ・インターン』のキャスト・スタッフ(案)■
 表をクリックすると鮮明に見ることができます。
日本版『マイ・インターン』.jpg
posted by Dausuke SHIBA at 09:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2017年06月05日

『ちょっと今から仕事やめてくる』山本周五郎の時代劇としてみるといいかも

 公開(2017年5月27日)の1週間前に、イイノホールで、
 お客様にいただいた試写券で試写会を観て来たのですが、
 仕事にかまけてなかなかブログにアップできませんでした。

 まだ上映されているようなので間に合ったという感じです。

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 試写会に行く前に全く予備知識はなく、試写券を見たときは、
 タイトルがとぼけたており、今風イケメンが並んで写っているので、
 チャラけた恋愛ドラマかと思い、私もいい年をしたおじさんであり、
 試写会でもなければまず見に行くことはないな、と思っていました。

 試写券の写真を引用しますので、雰囲気を想像してみて下さい。
ちょっと今から仕事やめてくる01.jpg

 しかし、実際に映画が始まると、
 これはシリアスな山本周五郎の時代劇だということになりました。

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 大店の商家に、故郷の親と別れて丁稚奉公している杉作が、
 商家の年長の手代と番頭に徹底的に苛められ、
 橋の下で首を括ろうとしているところを、
 通りかかったいなせな兄さんに助けられます。

 以後、杉作と、どこの誰ともわからない兄(あに)さんとの交流が続きます。

 しかし、番頭の苛めは止まらず、信頼していた小番頭にも裏切られ、
 杉作はまた橋の下に行くのですが、どこからともなく現れた兄さんから、
 「丁稚をやめて故郷に帰ったらどうか」と救いの言葉を掛けられるも、
 兄さんはそのまま姿を消してしまいます。

 故郷で心が癒えた杉作は、兄さんの行方を捜す旅にでますが・・・

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 時代劇であれば、頼れる法的制度はなく、
 無学の杉作はこの兄さんでもいてくれなければ、
 そのまま首を括るしかありません。

 しかし、現代劇でそのまま時代劇をやっては拙いのではないでしょうか。

 広告代理店で上司の部長(吉田鋼太郎)による過酷なパワハラを受ける
 主人公の青年(工藤阿須加)は大学出で、そう貧しいわけではなく、
 人並にパソコン・スマホを使いこなせ、
 仕事もまずまず努力しただけの成果は出せる程度の能力を有しています。

 そうであれば、パワハラがこれだけ話題になっている現代で、
 その対抗策についてはネットに溢れており、
 法テラス等の相談機関もあるのですから、
 この青年が相談機関に行くくらいの設定があってもよいはずです。

 あれだけの派手なパワハラ(TVではかっこいい役が多い吉田鋼太郎が、
 思い切り感じの悪いデタラメ部長を楽しそうに演じています)は証拠に残し易く、
 失業保険の知識が少しでもあれば、ああいう辞め方はしないはずです。

 若者がミステリアスな兄さん(福士蒼汰)を追って、
 同じ専門職の道を歩むことを示唆して映画は終わります。

 青年にとって、このような専門職を目指すことは正解と思いますが、
 この専門職の現実も踏まえて、
 青年が覚悟を決める社会的視点も欲しいところです。

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 監督の成島出は、
 昨年話題になった『ソロモンの偽装』も平板なミステリーにしていましたし、
 本作も、兄さんの素性を明らかにする過程を、
 青年と、兄さんの過去を知る孤児院の園長との会話を中心に説明してしまうので、
 せっかく小池栄子が園長を演じているのに、
 勿体なくも、平板なストーリーにしてしまっています。

 ということで、本作は山本周五郎の時代劇だと思って見ると、
 あまり余計なことを考えずに、
 のめり込んでみることが出来る良心作であると思います。
posted by Dausuke SHIBA at 19:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画