2017年06月05日

『ちょっと今から仕事やめてくる』山本周五郎の時代劇としてみるといいかも

 公開(2017年5月27日)の1週間前に、イイノホールで、
 お客様にいただいた試写券で試写会を観て来たのですが、
 仕事にかまけてなかなかブログにアップできませんでした。

 まだ上映されているようなので間に合ったという感じです。

******

 試写会に行く前に全く予備知識はなく、試写券を見たときは、
 タイトルがとぼけたており、今風イケメンが並んで写っているので、
 チャラけた恋愛ドラマかと思い、私もいい年をしたおじさんであり、
 試写会でもなければまず見に行くことはないな、と思っていました。

 試写券の写真を引用しますので、雰囲気を想像してみて下さい。
ちょっと今から仕事やめてくる01.jpg

 しかし、実際に映画が始まると、
 これはシリアスな山本周五郎の時代劇だということになりました。

******

 大店の商家に、故郷の親と別れて丁稚奉公している杉作が、
 商家の年長の手代と番頭に徹底的に苛められ、
 橋の下で首を括ろうとしているところを、
 通りかかったいなせな兄さんに助けられます。

 以後、杉作と、どこの誰ともわからない兄(あに)さんとの交流が続きます。

 しかし、番頭の苛めは止まらず、信頼していた小番頭にも裏切られ、
 杉作はまた橋の下に行くのですが、どこからともなく現れた兄さんから、
 「丁稚をやめて故郷に帰ったらどうか」と救いの言葉を掛けられるも、
 兄さんはそのまま姿を消してしまいます。

 故郷で心が癒えた杉作は、兄さんの行方を捜す旅にでますが・・・

******

 時代劇であれば、頼れる法的制度はなく、
 無学の杉作はこの兄さんでもいてくれなければ、
 そのまま首を括るしかありません。

 しかし、現代劇でそのまま時代劇をやっては拙いのではないでしょうか。

 広告代理店で上司の部長(吉田鋼太郎)による過酷なパワハラを受ける
 主人公の青年(工藤阿須加)は大学出で、そう貧しいわけではなく、
 人並にパソコン・スマホを使いこなせ、
 仕事もまずまず努力しただけの成果は出せる程度の能力を有しています。

 そうであれば、パワハラがこれだけ話題になっている現代で、
 その対抗策についてはネットに溢れており、
 法テラス等の相談機関もあるのですから、
 この青年が相談機関に行くくらいの設定があってもよいはずです。

 あれだけの派手なパワハラ(TVではかっこいい役が多い吉田鋼太郎が、
 思い切り感じの悪いデタラメ部長を楽しそうに演じています)は証拠に残し易く、
 失業保険の知識が少しでもあれば、ああいう辞め方はしないはずです。

 若者がミステリアスな兄さん(福士蒼汰)を追って、
 同じ専門職の道を歩むことを示唆して映画は終わります。

 青年にとって、このような専門職を目指すことは正解と思いますが、
 この専門職の現実も踏まえて、
 青年が覚悟を決める社会的視点も欲しいところです。

******

 監督の成島出は、
 昨年話題になった『ソロモンの偽装』も平板なミステリーにしていましたし、
 本作も、兄さんの素性を明らかにする過程を、
 青年と、兄さんの過去を知る孤児院の園長との会話を中心に説明してしまうので、
 せっかく小池栄子が園長を演じているのに、
 勿体なくも、平板なストーリーにしてしまっています。

 ということで、本作は山本周五郎の時代劇だと思って見ると、
 あまり余計なことを考えずに、
 のめり込んでみることが出来る良心作であると思います。
posted by Dausuke SHIBA at 19:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画