2016年09月10日

『レッドタートル ある島の物語』無常観漂うフランスアニメ

 今回もお客様から試写券を郵送いただき、
 郵送された翌朝の土曜日の9時に試写会場の一ツ橋ホールに駆け付けました。

 いつもありがとうございます。

 『シン・ゴジラ』『後妻業の女』と、俗物まみれの映画が続き、
 自宅でも俗物極まる『DoctorX』を楽しみにしている中、
 穢れた心を見つめ直す静かな時間をいただいた気がしました。

 『レッドタートル ある島の物語』は、
 9月17日からロードショーとのことなので、
 ご覧になることをお奨めします。

******

 大嵐の海の中に投げ出された人のよさそうな男が、
 絶海の孤島に漂着し、この島から脱出を試みるも、
 彼に惚れた赤い大ウミガメに阻まれ、さらに、
 この大ウミガメの求愛を受け入れて結ばれた末、、
 大ウミガメとの愛の生活を続けてこの孤島で生涯を終える、
 という無常観漂うフルアニメーション・ドラマです。

 試写券の紙面を引用しますので、雰囲気を感じてみて下さい。
レッドタートル.jpg

 男の容姿も、ウミガメを含めた自然描写もリアルで美しく、
 最初は、これは俳優による実写でもよいのに、
 何故アニメーションにしたのか不思議に思っていました。

 この映画は、男の島での行動を淡々と描くことに徹しでおり、
 前半はこの男が一人で、後半はウミガメと間にできた息子と共に、
 美しく荒々しい自然に逆らうことなく、
 3者の間の愛情だけを絆にして生活する様子を、、
 台詞を一切排して映像と音楽だけで淡々と描写していきます。

 アメリカ映画であれば、主人公が、絶海の孤島で工夫しだして、
 小屋を建てたり、火をおこしたり、記録を残したり、
 息子とバスケットボールを始めたり、
 といった知的創作活動を始めるものです。

 男は、最初に島を脱出するために筏を作る以外は、
 一切の知的創作活動をせず、文字も書かず、
 大ウミガメと息子との言葉によるコミュニケーションもいたしません。

 そしてセックスの要素は暗示はされますが、結局は排されてしまいます。

 俳優が演じると、ドラマから、
 ここまで知性とセックスの要素を排除することができないので、
 アニメーションにした意味があったのです。

 描写が淡々とし過ぎて、前半でうとうとしてしまうのですが、
 その静かな描写を受け入れて共に過ごすことが、
 この映画の素直な見方なのかもしれません。

******

 この映画は、オランダ出身のアニメ作家である
 マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督が、、
 スタジオジブリの制作と全面的なバックアップの下で、
 8年をかけて完成させたそうです。

 主人公に、知性とセックスと言葉を排して、
 自然と愛だけで人生を送らせるなど、
 いかにもフランス映画らしい無常観ですが、
 今どき、こんな浮世離れしたアニメーションを
 8年もかけて完成できるなんて、羨ましい限りであり、
 1時間20分のこの贅沢につきあうことができるというのも
 世知辛い日本にあって贅沢なことといえるでしょう。

******

 土曜日早朝の試写ということもあり、
 いつもほどの入りではありませんでしたが、
 比較的若い人が多かったように思います。

 試写が終わり、前の席からはるか後方の出口まで歩く間、
 4組ほどの連れの方々から
 「いったい何を言いたいのかよくわからなかった」
 という同じ趣旨のつぶやきが聞こえてきました。

 フランス映画には、「去年マリエンバードで」の昔から、
 アメリカ映画にはありえない瞑想的な傾向がありますから、
 たまには見た後「???」体験もよいと思います。

******

 俗物代表の一人としては以下のように考えました。

 大ウミガメも、男に知性が全くなければ相手にしてはおらず、
 絶海の孤島で、黙々と筏を作り、
 邪魔しても邪魔しても孤島からの脱出にトライする
 男の知性と勇気に惚れたのではないかと思います。

 この男も大ウミガメのとりこにはなったものの、
 大ウミガメと生活して結構ストレスが溜まったのではないでしょうか。

 あの世に行く前に、日本人であれば、
 「『DoctorX』の最新作を見たかった・・・」
 と心の中で無念たらたらつぶやいたのかもしれませんね。

******

 最後に不満点。
 こんなフランス映画らしいフランス映画のタイトルを、
 何故『レッドタートル』などという無粋なカタカナ英語にするのかなあ・・・

 原題『La Tortue rouge』を活かして
 『ルージュの海亀』くらいの方が、この映画の趣がでたのではないでしょうか。
タグ:ジブリ
posted by Dausuke SHIBA at 16:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/176825241
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック