2016年11月06日

『オケ老人!』杏がかわいらしい素朴な手作り映画

 突貫工事の仕事の一段落が見えてきたところに、
 お客様から『オケ老人!』の試写招待券をいただきました。

 有楽町朝日ホールは私にとっては初めての会場でした。

 もう夜が早くて暗くなった夕方6時前、
 週末の和んだ人込みが楽しい銀座界隈の、
 ひときわ瀟洒な有楽町マリオンビルの11階、
 試写会場としてはとてもオシャレな雰囲気でした。

 『オケ老人!』というタイトルからは、
 中味が全く想像できなかったのですが、
 試写券が届く前にお客様から、
 「オケ」はオーケストラのことで、杏が主人公、
 老人役で左とん平と小松政夫が出ていると聞いて、
 そういえば杏の映画は見たことが無く、
 老人役のお二人は、失礼ながら、まだ生きておったか、
 と思ったくらいで、もしかしたら面白いのかもしれない、
 というのが事前の予感でした。

 試写券を引用しましたが、こんな感じです。
IMG_0003.jpg

 とてもほのぼのとした、後味のよい映画でした。

 11月11日(金)から上映ですので、
 秋の夜長に心を温める時間をすごせますから、
 是非観賞されることをお奨めします。

******

 個性豊かなメンバーで構成される素人楽団が、
 当初は演奏も心もバラバラでスタートし、
 中心人物の悪戦苦闘の末、最後に一つにまとまって、
 練習を重ねた思い入れある曲を演奏しきる、
 という映画やTVドラマは、
 『スウィングガールス』や『のだめカンタービレ』を始めとして、
 名作が多いのですが(ちなみに、私は上野樹里が大好きです)、
 本作も小粒ながらその伝統を彩る一つになると思います。

 北関東(足利市がモデル)の高校に務める若くて一途な教師(杏)が、
 市内のクラシックコンサートで「梅が丘シンフォニー」の演奏に感動し、
 趣味で続けたバイオリンに本格的に磨きをかけようと、
 「梅が丘シンフォニー」に入団しようとするところから映画は始まります。

 ところが、杏は、間違えて市内の老舗オーケストラである
 「梅が丘交響楽団」を訪れてしまいます。

 「梅が丘交響楽団」は、
 あの世とこの世の境にいるような老人ばかりの素人楽団で、
 杏は「しまった」と思いつつも、
 バンマスの老人(笹野高史)の強引な誘いを断り切れず、
 入団させられてしまいます。

 そこから、杏の悪戦苦闘がはじまります。

 オケ老人達のあまりの下手さに、杏は、
 退団を決意して「梅が丘シンフォニー」に入団します。

 しかし、笹野高史が心臓発作で倒れて代役指揮者を頼まれたり、
 笹野高史の孫で杏の生徒でもある女子高生(黒島結菜)と
 その年下のボーフレンド(萩原利久)、
 杏が片想いする同僚の年下の草食系先生(坂口健太郎)に助けられたリ、
 など、スッタモンダあった挙句、杏は「梅が丘交響楽団」に戻り、
 指揮者としてオケ老人達と苦難の道を歩むことになります。

 そして、2年間、あの世の方に行くメンバーを見送りつつ、
 奮闘努力の甲斐あって、
 市の公民館で、オケ老人達とオーケストラ演奏会に臨むことになります。

******

 『スウィングガールズ』は脚本・演出共にそつがなく、
 若さにあふれたアップテンポなエネルギーが充満していましたが、
 本作は、どちらかといえばかつての8mmフィルムの学生映画のような、
 素朴な手作り感があり、各場面とストーリーの流れは
 ステレオタイプで独創性があるとは思えないのですが、
 映画に対する愛に溢れた、多くのちょこっとした小技演出を
 存分に楽しむことができます。

 出だしの、杏が楽団を間違えてしまうエピソードでは、
 やけに整った綺麗な市民会館のセットと、
 映画的とはとても思えない平面的なカメラアングルの中で、 
 大ベテランの左とん平、小松政夫、笹野高史だけでなく
 藤田弓子(私の高校の先輩です)とか、石倉三郎とかの、
 まだまだこの世に未練たっぷりの怪しい老人たちが、
 背景と異様にミスマッチして登場し、
 かわいらしくもぎこちないヘタウマ演技の杏と、
 ぎくしゃくした会話を始めます。

 その後の、
 杏が笹野高史に陥れられてお馬鹿な罠に嵌るエピソードとか、
 杏が住むマンションの自宅の模様替えのエピソードとか、
 杏が「梅が丘シンフォニー」でのしごきに苦しむエピソードとか、
 が、結構わざとらしく突っ込み所のあるギクシャクした演出で描かれますが、
 
 見舞いに行った杏と入院中の笹野高史とのしみじみした会話、
 演奏が少しずつ様になって、杏とオケ老人達との一体感が生じていく過程、
 山に囲まれたひなびた足利市のコマ撮り定点撮影による時の経過ショットとか、
 これらのエピソードの間を繋いでいくことによって、
 次第に映画らしくなり、テンポはズレっぱなしなのにもかかわらず、
 淡々とした落ち着いたまったり感が、見ていてとても心地よいのです。

******

 杏は、本作が主演第1作ということでしたが、
 私は、評判になった『ごちそうさん』も見ておらす、
 『真夏の方程式』に出ていたことも全く忘れており、
 先入観なしの初対面みたいなものでした。

 杏は、どちらかといえばファニーフェイス、
 コケティッシュでスレンダー、八頭身のモデルのような長身で、
 不器用そうに百戦錬磨の老人俳優達と掛け合う姿が、
 とてもかわいらしく、素敵です。

 役名はあるのですが、「杏」という方が似合っており、
 怪優達との競演で主演を張るという緊張の中、
 劇中の悪戦苦闘と共に力演して最後まで演技を全うしていく姿に、
 映画ののクライマックスと重ね合わせて感動してしまいます。
 
 杏は、とてもよい映画で初の主演を果たせて、本当によかったと思います。

******

 そして、やっぱりです。

 このブログ記事を書くために脚本・監督の細川徹のことをウィーキペディア調べたら、
 彼は、成城大学の映画サークル出身(ということは大林宣彦監督の後輩)
 であることがわかりました。

 今46歳なので、ぎりぎりフィルムの8mm映画を作ったかもしれません。

 宮藤官九郎の盟友で、相当にオタクっぽい活動をしているようですが、
 宮藤官九郎よりもずっと品がよくて、暖かい感じがします。

 それと、本作は、笹野高史と孫との掛け合いが少しあるだけで、
 オケ老人達の家族との交流などほとんど描かれず、
 杏に至っては、親兄弟の写真も場面も一切なく、
 現時点の杏の人格とオケ老人達その他の登場人物との掛け合いだけを
 見せています。

 このようにベタベタした感覚が全くないのは、
 学生映画の特徴を引きずっている、かっこよく言えば、
 ハードボイルドに徹しているといえます。
 (杏とつりあう親の役を誰がやるのか、というのも難問で、
 杏の部屋に置いてある写真に渡辺謙が写っている、
 などという演出をせざるをえないか)。

 大林亘彦大森一樹の8mm映画第1、第2世代が一線から後退しつつある中、
 細川監督が、
 映画への愛に溢れた8mm映画世代を引き継いでくれたら嬉しいのですが。
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posted by Dausuke SHIBA at 17:05| Comment(1) | TrackBack(0) | 映画
この記事へのコメント
たいへんユニークな内容を拝見し、特許業界・知的財産業界情報トップス(http://iptops.com/)にリンクを追加させていただきました。特許業界・知的財産業界情報トップスをリンク集などに加えていただくようなことがございましたら幸いでございます。今後もよろしくお願い申し上げます。
Posted by 特許業界・知的財産業界情報トップス at 2016年12月27日 07:36
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