2017年07月16日

TVドラマベスト10(第7位)

第7位 『白い巨塔』(1967)

第7位.jpg

 当時子供であった小生は田宮二郎の映画版は見ておらず、
 このモノクロフィルムのTVドラマ版『白い巨塔』のイメージが
 刻み込まれてしまいました。

 もともと悪役が多かった演技派の佐藤慶の財前五郎は、
 医学部の教授になるために患者をも踏台とする脂ぎった権力の信奉者で、、
 根上淳が演じる正義の里見先生と対象的で、
 悪の匂いが充満した迫力があり、子供ながらに怖かったものです。

 財前五郎を疎ましく思う上司の東教授を山形勲、
 その妻を小暮美千代、その娘を村松英子(とても美しい)、
 財前五郎の教授昇進を阻止するため色々と画策し、
 それはそれで財前五郎に引けをとらぬ俗物医師たちである、
 鵜飼教授を河津清三郎、菊川教授を南原宏治、
 財前五郎の義父の産婦人科院長を小池朝雄と、

 今みればそうそうたる役者陣ですが、
 当時の映画界では悪役専門の脇役ばかりの二線級キャスト、
 それも片岡千恵蔵、市川歌右衛門、大川橋蔵に叩斬られる、
 時代劇の悪代官と悪女ばかりであったと思います。

 しかし、さすがに映画俳優、
 TVのフレームでは俗悪が思い切りはみ出しておりました。

******

 この『白い巨塔』は、財前五郎が医療裁判に勝つまでが描かれており、
 悪が勝ち、正義が負けるという不条理を知り,
 何とも暗い気分になりましたが、社会勉強になりました。

 阪大医学部がモデルといわれており、
 教授を頂点とする絶対的なヒエラルキーの大学医局制度の中で、
 権力闘争に明け暮れ、これでよく普段の診療ができると思いましたが、
 大人の世界の異様な毒々しいエネルギーに圧倒されたものです。

 その後観た田宮二郎の映画版『白い巨塔』(1966)も素晴らしく
 (山本薩夫監督なので当然ですが)、小生にとっては、
 財前五郎は佐藤慶と田宮二郎の迫力が印象に残りすぎてしまい、
 村上弘明君と唐沢寿明君の財前五郎では、
 なぜか笑いがこみ上げてしまい、食指が動きませんでした。

 『白い巨塔』は、山崎豊子の原作小説と、
 佐藤慶・田宮二郎版のTV・映画の完成度が高く、
 四半世紀以上経た時代にリメイクしようとしても、そのまま描くしかなく、
 そうなると時代錯誤と役者の軽量ばかり目立つ、ということになると思います。

 黒澤・三船・仲代の『天国と地獄』(1963)をリメイクした
 鶴橋・佐藤・杏の『天国と地獄』(2007)も無惨でした(杏がでてたんですね)。

 その医局制度が崩壊した現代医療の世界に颯爽と現れたのが、
 『ドクターX』でした。

 『ドクターX』のオープニング・ナレーションは、
 『白い巨頭』の正当な後継者であることを自負しているようです。

******

 今回、この記事を書くにあたり、監督を調べたところ、
 何とも不思議な縁を見出してしまいました。

 監督の関川秀夫は、ウィキペディアによると、
 東宝の前身会社PCLで黒澤明と同期の助監督になって以降、
 東宝、東映、独立プロ、松竹を渡り歩いた一匹オオカミの筋金入りで、
 節操があるのかないのか、社会派・ドキュメンタリーを基軸として、
 『少年探偵団シリーズ』(1950年代)等の娯楽映画も多く、
 TVドラマ『あゝ同期の桜』『白い巨頭』の後に、
 エロ・グロ耽美系の映画『いれずみ無惨』を経て、、
 映画『超高層のあけぼの』(1969)を撮っています。

 この『超高層のあけぼの』は、
 日本で最初の超高層ビルである霞が関ビルの完成における、
 関係者の苦闘を描いた、
 今でいえばスカイツリーの建造物語のようなドラマでした。

 関係者を、
 池部良、木村功、丹波哲郎、平幹二朗、佐久間良子、新珠三千代、
 田村正和、佐野周二、中村伸郎、根上淳・・・
 って、おいおいおい、今では考えられないであろう
 豪華キャストが演じていました。
 
 上記の俳優のファンであった父に連れていかれ、しぶしぶ見たのですが、
 これが『下町ロケット』のような、
 地震国である日本で超高層建造物を最先端技術を駆使して作り上げようという
 技術者たちの知恵と努力を真っ直ぐに描いたドラマで、
 すっかり感動してしまいました。

 なにしろ、パソコンもインターネットもなく、
 国産の超大型コンピュータで、パンチカードと紙テープで情報の入出力をしていたのが
 最先端技術の象徴であった時代ですが、
 それを縦横に駆使して妥協を許さない技術者と、
 難しい決断を迫られる経営者との葛藤に、
 手に汗を握り、霞が関ビルの完成を共に祝うことができたのでした。

 築43年で東北大震災を受けた後、築50年を迎える霞が関ビルは
 まるで最近建造されたばかりのような美しい姿ですよね。

 我が国の技術力の高さは素晴らしいと率直に思います。

 というわけで、小生は、関川秀夫監督の『超高層のあけぼの』を観たおかげで、
 理科系の道を歩み、建築とは全く畑違いですが、
 化学分野で研究開発をし、少し道を踏み外して弁理士となりました。

 関川秀夫監督とはとても不思議な縁で結ばれていたということになります。
posted by Dausuke SHIBA at 09:40| Comment(0) | TrackBack(0) | TVドラマ
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