2017年11月05日

『天の方舟』不競法改正の裏で奏でられた大人のドラマ

 毎日が月曜日状態が続いていますが、
 毎週末にTUTAYAでDVDの旧作をまとめて借りて、
 晩酌しながらドラマを見るのが至福のときになっています。

 2000年代に入ってからの我国のTVドラマは面白いものが多いですが、
 WOWOWの一連のドラマ群の質が高く最近はよく見ています。

 中でも三上博史版『下町ロケット』(2011)は、
 特許騒動がテーマのど真ん中であるだけでなく、
 三上博史の佃社長が思索的で渋く、
 原作では男性の神谷弁護士を寺島しのぶに演じさせるなど、
 ドラマのアレンジとしては、私は、WOWOWの三上博史版の方を、
 剛速球なるも色気の乏しいTBSの阿部寛版よりも買っています。

 最近も地熱発電をテーマにした『マグマ』(2012)が面白く、
 主人公のハゲタカファンドの敏腕マネージャーである尾野真千子が、
 生涯を地熱発電に賭ける熱血の研究所長である長塚京三と仕事を共にするうちに、、
 研究の夢絶たれ若くして亡くなった自分の父親に重ねて見るようになり、
 その長塚京三の夢を継いで地熱発電の実現に渾身傾けるという、
 何とも、長塚京三がかっこよすぎて自分に重ねてみてしまい
 心地よくなってしまうという内容でした。

******

 今回の『天の方舟』(2012)は、予備知識が全くなく、
 WOWOWのドラマという理由だけで借りたのですが、

 なかなか見ごたえのある大人のドラマというだけでなく、
 何と不正競争防止法(不競法)の改正の裏を知ることができたという意味で、
 弁理士が見ると倍楽しめるものでありました。

《ストーリー》

 黒谷七波(水野美紀)は新潟の個人農家の娘として育つが、
 父親が地震の被害で農業経営に行き詰って自殺するという暗い過去をもつ。

 しかし、七波は頭がよく東京大学に進み、
 開発途上国の政府開発援助(ODA)に興味を持ち、
 ODAが開発途上国の役人と日本の商社・ゼネコンとの間で
 賄賂だけで動いてく汚職まみれの裏の仕組を知るようになり、
 貧しさから抜け出すために、自らその汚職の世界に飛び込んでいく。

 七波は、最初は学費を稼ぐために夜の商売でホステスをしていたのだが、
 ある日、ODAに群がるある建設会社の腕利きの重役である宮里一樹(伊原剛志)
 と互いに惹かれあい、抜き差しならぬ関係になると共に、
 宮里の手引きにより、その建設会社と開発途上国を結び付けるための
 コンサルティング会社に就職する。

 七波と宮里は、男と女の関係を続けながら、
 ODAを介して利用しあう会社の中心人物として裏の世界に突き進むが・・・。

 東南アジアに大ロケーションを敢行しています。

《伊原剛志》


 二人のドロドロの関係と裏稼業はやがて破滅に突き進むわけですが、
 伊原剛志がかっこいいです。

 伊原剛志は、夏八木勲を引き継ぐ、日本では数少ない硬派のアクションスターで、
 時代劇から現代劇のアクション映画を始め、
 シリアスからコミカルまで硬軟自在の役をこなせる演技派でもあります。

 そういう伊原剛志が、今回は、裏の世界で有能なるも影があり、
 その影に女が引きずり込まれるのも仕方ない、
 という宮里一樹にドンズバリ嵌っていて、かっこよすぎます。

 夏八木勲は、かつては映画の時代劇でニヒルな浪人役などピッタリで、
 アクションスターとして時代劇での雄姿をもっと観たかったのですが、
 時代劇が斜陽になると共に、誰も演じさせなかったのが、
 本当に勿体なくも残念でした。

 伊原剛志はまだまだ若いのですから、
 例えば、役所広司の体がまだ動くうちに、
 二人の対決をクライマックスにした時代劇を誰かつくらんか!
 (伊原剛志=拝一刀(子連れ狼)、役所広司=柳生烈堂)

 なお、水野美紀は、おかっぱ頭の眼鏡をかけた田舎娘東大生が
 夜になって、眼鏡をとってメークをきめて、ドレスアップすると
 とんでもない美女になるという美味しい役にも拘わらず、
 ちょっと地味な顔立ちで損をしています。

 伊原剛志が相手役だから、
 『黒革の手帳』でならした米倉涼子クラスでもよかったのではないかと思います。

《不競法改正との関係》


 このドラマの時代設定は、
 私が弁理士の受検勉強をしていた2003年(平成15年)頃であるはずです。

 当時、私が不競法を勉強するのに読んでいた
 「逐条解説 不正競争防止法(平成15年改正版)」がまだ手元にあり、
 この機会に、ほぼ10年ぶりに見返してみました。

 そうしたら、平成13年改正の説明として
 「外国公務員等に対する不正の利益供与等の禁止を処罰の対象とした
  平成10年改正後、OECD(経済協力開発機構)による
  日本の条約実施法の審査や加盟各国の同実施法の制定の進展等を踏まえ、
  犯罪構成要件の国際的調和を図り、条約のより効果的な実施を図る観点から、
  外国公務員等に対する不正の利益供与等の禁止規定に関する一部改正を
  行った。」
 と書かれています。

 ドラマでは、
 従来の不競法の規定がザルで、ODAでの賄賂まみれの日本の業者が、
 米国企業を押しのけて契約を取りに来るのに業を煮やした米国が、
 不競法の改正を我国に迫り圧力をかけてきた中で、
 七波と黒崎が以前のようにうまく立ち回れずに追い詰められていく、
 ということになっていました。

 私が、不競法を勉強していた当時は、
 「外国公務員等」のイメージが全く湧いておらず、
 『007』シリーズや『スパイ大作戦』にでてくる
 共産圏の某国の黒ずくめの高級官僚を思い描いていていたのですが、
 実際はODA絡みの東南アジアの開発途上国の公務員が対象だったことが
 このドラマを見てようやくわかった次第です。

 平成28年度の最新の不競法では第18条が関連します。

 弁理士試験には出題されそうにない条文内容ですが、
 知財法がドラマの内容に直結していて生きた法律が学べるという観点で、
 弁理士受験生は見ておいてもよく、
 弁理士をされている方々も、知財絡みの大人のドラマでもたまには見て、
 世界を広くしておくというのも良いと思います。

******

 しかし、弁理士がこのドラマにでてくる会社のコンサル顧問などをして、
 不競法18条関係を考慮して契約書を作成する業務などに深入りする場合は、
 いつか南シナ海に浮かぶことにもなりかねないことは
 覚悟する必要がありそうです。
posted by Dausuke SHIBA at 17:41| Comment(0) | TrackBack(0) | TVドラマ
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