2019年11月17日

N国党系YouTuberの著作権問答を考えてみた(その3)

■問答T:
 文化庁の問合せ窓口の職員との著作権問答■
 
 Youtubeで、話題のYouTuberが、
 結構真面目に著作権の話をしている配信番組がとても面白かったので、
 著作権制度の観点から、2本のブログ記事を挙げさせていただきました。

 『N国党系YouTuberの著作権問答を考えてみた(その1)』
 http://patent-japan-article.sblo.jp/article/186733696.html
 『N国党系YouTuberの著作権問答を考えてみた(その2)』
 http://patent-japan-article.sblo.jp/article/186763143.html
 対象としたのは以下の配信番組です:
 ●ユーザー名:平塚正幸さゆふらっとまうんど;
 ●配信番組名:
  『文化庁に「時事の報道」に著作権を主張できるのか聞いてみた』;
 ●URLhttps://www.youtube.com/watch?v=j1EDABP8Ix0

《YouTuber氏が直面したトラブル》
 YouTuber氏は、
 ご自身の過去のtwitter記事(以下「テロップ画像利用記事」)で、
 某TV会社の報道番組の文字テロップが映し出されている一場面
 (以下「テロップ画像」)をスクリーンショット(画像のまま複製)
 して、テロップ画像利用記事で、テロップ画像を表示して説明したところ、
 TV会社がTwitter社に、
 テロップ画像利用記事中のテロップ画像を表示して説明した部分は、
 著作権侵害であると訴え、
 YouTuber氏はテロップ画像利用記事を削除せざるをえなくなった。

 なお、テロップ画像利用記事が、
 Twitter社によって強制的に削除されたのか、
 YouTuber氏によって自発的に削除されたのかはわからないのですが、
 YouTuber氏としては不本意な削除であったようです。
 ============
 YouTuber氏と文化庁職員とは真面目に著作権問答をしていますが、
 文化庁職員は正確に回答しているものの、
 YouTuber氏は、著作権制度の不勉強もあり、理解の混乱が生じていて、
 なかなか話が噛み合いません。

《結論》
 私の方からは、この著作権問答について、
 著作権制度に基づいて考えると、以下のようになると説明しました。

 YouTuber氏は、著作権法32条(引用)に基づいて、
 スクリーンショットしたテロップ画像を、
 テロップ画像利用記事で表示した際に、
 「TV会社の報道番組からスクリーンショットした
  テロップ画像を引用して説明します」
 の一言を添えておくべきでした。

 引用して創作したYouTuber氏のテロップ画像利用記事(論評)
 に対して、著作権侵害を訴えられても、
 「引用でないこと」の立証責任は訴えた側にあるので、
 YouTuber氏、まずは、
 引用であることを理由に問題ないと突っぱねて、
 著作権侵害を申立てた側にボールを投げ返して、
 相手側に「引用でないこと」を立証させることが
 基本でしょう。

《YouTuber氏の理解の混乱を示す主張》
 報道番組中の時事問題を内容とするテロップ画像
 を利用した他人に対して 
 著作権者たるTV会社が、著作権を行使することを認めて、
 TV会社の許諾がなければ、
 誰も時事問題を内容とするテロップ画像が利用できないとなると、
 社会活動家を自称するYouTuber氏が行うような論評活動が
 実質的にできなくなり、一般需要者の公益を棄損する
 (従って、TV会社に著作権の行使を認めるべきではない)。
 ============
 YouTuber氏の上記主張に対して、私は以下の説明をしました。

 時事問題を内容とするテロップ画像は、
 他人の論評活動で自由利用できるようにすべきだ、
 とういうYouTuber氏の主張の趣旨はその通りですが、
 著作権法は、この趣旨を、YouTuber氏のように、
 TV会社に著作権の行使を認めないという規制でなく、
 TV会社に著作権の行使を認めた上で、
 論評活動者がテロップ画像の引用利用する限り、
 TV会社の著作権は当該引用利用には及ばない、
 という仕組みで保証しているということです。

 ここを理解していないと、
 YouTuber氏が引用の範囲を超えた利用をした場合、
 その途端、TV会社の著作権は当該利用に及び、
 YouTuber氏は、
 TV会社の著作権侵害が問われることになります。

■問答U:
 N国党第1公設秘書との著作権問答■

 前回のブログで、
 YouTuber氏と文化庁担当者との間の問答を一段落させて、
 今回のブログで、
 YouTuber氏とNHK職員との間の放送法問答について
 考えてみようと思っていました。

 しかし、YouTuber氏が、最近、新たな著作権トラブルに直面し、
 今度は、Youtube社からアカウントを抹消され、
 配信番組全体が削除されるかもしれないとの
 危機的状況にあるということで、そうなると、
 問答T・放送法問答の配信番組も消滅してしまいますので、
 その前に、
 この新たな著作権トラブルについて考えてみることにしました。

 対象としたのは以下の配信番組です:
 ●ユーザー名:平塚正幸さゆふらっとまうんど;
 ●配信番組名:
 『政策秘書・田中けんによって動画が削除されました。』;
 ●URL:https://www.youtube.com/watch?v=ZxOnhupBJbA
 
 《YouTuber氏が直面した新たなトラブル》
 YouTuber氏は以下のトラブルに直面しました。

 N国党国会議員政策担当秘書(以下「政策秘書」)氏が、Youtubeで、
 YouTuber氏にとって敵対的な内容の配信番組Xを公開したところ、
 (おそらくは)YouTuber氏との種々関係を考慮して、
 自ら配信番組Xを削除した。

 その後、YouTuber氏は、既にダウンロードしていた配信番組Xを、
 政策秘書氏に無許諾で、
 自身のYoutubeアカウントでアップロードして公開したため、
 政策秘書氏は、Youtube社に
 YouTuber氏がアップロードした配信番組Xの公開は、
 著作権侵害になるため、
 YouTuber氏がアップロードした配信番組Xを削除することを
 訴えた。

 Youtub社は、政策秘書氏の訴えを認め、
 YouTuber氏が公開した配信番組TはYoutub社によって削除された。

 *私は、配信番組Xを削除される前にたまたま見ていましたが、
  配信番組Xは、配信番組Yの中で、
  YouTuber氏の論評なしに丸ごと公開された印象を持ちました。

  以下では、
  @配信番組Xは政策秘書氏を著作者とする著作物であり、
  A配信番組Xは、配信番組Yの中で、
    YouTuber氏の論評なしに丸ごと公開されていた
  ことを前提に説明します。

《YouTuber氏の理解の混乱を示す主張》
 YouTuber氏は、
 N国党という公的政党の政策秘書氏の配信番組Xは、
 公益性を有するので、誰もが自由利用できるものであるから
 (米国著作権法に言うフェアユースを念頭に入れているのかもしれません)
 政策秘書氏の著作権行使を認めるべきでないと主張しています。

《著作権の保護対象の観点からの考察》
 著作権法は、著作物を創作した著作者に著作権を発生させて、
 他人の一定の利用を制限することで(著作権法18〜28条)、
 著作権者及び著作物を保護します。

 ここで、政策秘書氏の配信番組Xをアップロードして利用した
 YouTuber氏のアカウント上の配信番組Yは、
 そもそもYouTuber氏の著作物として保護される対象であるのか、
 という問題があります。

 配信番組Yは、他人(政策秘書氏)の配信番組Xを、
 丸ごとそのまま公開しているだけで、
 YouTuber氏の創作要素は実質的に0です。

 そうであれば、原則、著作権法によって
 配信番組Xは、政策秘書氏の著作物として保護され、
 配信番組Yは、YuoTuber氏の著作物ではなく、
 実質的には、政策秘書氏の著作物である配信番組Xとして、
 保護されることになります。

 従って、配信番組Xの著作権者である政策秘書氏は、
 Yuotuber氏による配信番組Yに対して
 差止請求できることになります(著作権法112条1項)。

《引用の範囲を超えた利用の観点からの考察》
 著作権法32条1項(引用)によれば、
 「公表された著作物は、引用して利用することができる。
  この場合において、
  その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、
  報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で
  行なわれるものでなければならない。


 ここで、引用は、
 「報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で
  行なわれ
」なければなりませんが、
 上記したように、YouTuber氏の配信番組Yは、
 YouTuber氏自身による報道、批評、研究等の創作の要素が0であり、
 単に他人の著作物である配信番組Xを、YouTuber氏が、無許諾で、
 ダウンロード→アップロードして公開しただけなので、
 YouTuver氏の創作中にあるべき「引用の目的」がなく、
 「引用の目的上正当な範囲」がそもそも0であり、
 引用の目的上正当な範囲の外であるということになります。
 
 そうであれば、配信番組Xを、
 著作権者に無許諾でダウンロード→アップロードする行為は
 複製権(著作権法21条)及び公衆送信権(著作権法23条)の侵害
 ということになるでしょう。

《フェアユースの主張について》
 米国の著作権法のフェアユースの考え方は、
 我が国の著作権法には明示規定がなく、
 我が国の裁判所はYouTuber氏のフェアユースの主張を、
 そうそうたやすくは認めてくれません。

 また、米国の著作権法でも引用に近い概念が入っており、
 今回のような配信番組Xを丸ごと利用しただけの配信番組Y
 に対して、公益性だけを理由に、米国の著作権法であっても、
 フェアユースが認められるかは微妙です。
 
《知的財産権侵害の恐ろしさ》
 特許権・商標権・著作権等の知的財産権の侵害は、
 民事的には、差止請求や莫大な損害賠請求をされ
 (例えば、著作権法112条1項、民法709条)、
 刑事的には、懲役・罰金の対象となりますので
 (例えば、著作権法119条1項)、
 対応を1歩間違えれば、企業であっても倒産のリスクがあり、
 個人事業者であれば、
 破産や信用棄損による事業継続ができない状況に陥るリスクがあります。

 上記のYouTuber氏は今のところ、Youtube社とのやり取りの中で、
 配信番組Yが削除され、最悪でも、
 アカウントの抹消くらいで済むという言い方もできます。

 しかし、著作権者はYoutube社とは関係なく、
 著作権法等に基づき、
 YouTuber氏に直接に配信番組の差止請求(削除要求)ができ、
 YouTuber氏を司直に告発することも可能ですから、
 YouTuber氏は、
 上記の民事的・刑事的責任を追及されるリスクがあります。

 幸いなことに、政策秘書氏は、今のところ、
 Youtube社を通しての
 動画削除・アカウント抹消狙い以上の行動はしていませんし、
 仮に、YouTuber氏が刑事責任を追及されても、
 司直に悪質ではないと判断されれば、
 何事もないということもあり得るでしょう。

 しかし、YouTuber氏が、著作権法を無理解のまま、
 政策秘書氏に対して配信番組Xの丸ごと利用のような行動を繰り返せば、
 著作権法112条2項に基づき、YouTuber氏のYoutube活動は、
 政策秘書氏に対する著作権侵害のおそれがあるとして、
 YouTuber氏のYoutube活動全体の差止請求に至るリスクがあり得、
 行動が悪質と判断されて、
 刑事責任を司直に追及されるリスクもあり得るでしょう。

 そして、何と言っても、政策秘書氏は公的政党の公人ですから、
 政策秘書氏がYouTuber氏の刑事責任を追及しようとすれば、
 司直も全く無視することはできないでしょう。

 YouTuber氏の配信番組は、どうみても論評ですから、
 他人の動画等を「引用」して論評すれば、
 YouTuber氏の目的は十分に達成できると思われます。

 YouTuber氏は、著作権制度を勉強し、
 大きなリスクと背中合わせの無駄な活動は極力回避し、
 本来志している政治の道を歩まれることを願わずにいられません。
posted by Dausuke SHIBA at 20:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 著作権
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