2020年01月12日

『R.U.R.』古典ロボットSFに若手演出家が臨む(その1)

 若手演出家で劇団「東京娯楽特区」を主宰する広岡凡一氏は、
 私の行政書士繋がりの大先輩の天辰先生が主宰する
 新宿の朗読劇団で活躍し始めた頃から注目しています。

 これまで、朗読劇団での公演において、
 『朗読劇 こころ』(2017)では女優として、
http://patent-japan.sblo.jp/article/178853282.html
 『朗読劇 三四郎』(2019)では男優として、
http://patent-japan.sblo.jp/article/186994352.html
 変幻自在の演技者として楽しませていただきました。

 さらに、広岡凡一氏には、本職のプロの劇団スタッフとして、
 劇団民藝の『ペーパームーン』では大道具担当として、
http://patent-japan.sblo.jp/article/183628250.html
 東京娯楽特区の『熱海殺人事件』では共同演出家として、
http://patent-japan.sblo.jp/article/186367542.html
 取り組まれた舞台を楽しませていただきました。

 今回は「単独演出で新作を上演するので見に来てくれ〜」ということでしたので、
 正月明け早々に、こんなマイナーな古典SFで客が入るのだろうか、
 と心配しつつ、仙川劇場で行われた最終日(2020年1月6日)の最終公演に出向きました
 (心配ご無用の上々の入りで、安心しました)。

 概要は、東京娯楽特区の案内を引用しましたので、御覧ください。
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《仙川劇場》
 仙川劇場は、4年前(2016年4月10日)、
 上述の『朗読劇 こころ』で主演したプロパフォーマーの関井さんが
 振付担当をした『北の大地の詩』を観に行ったことがあり、
 当時暇であったせいもあり、仙川劇場の周辺の写真を掲載したブログ記事を
 のんびりと書いておりました。
http://patent-japan.sblo.jp/article/175020036.html
http://patent-japan.sblo.jp/article/175028755.html

 前回は春の昼下りに行ったせいもあり、新宿から京王線で30分足らにしては、
 何もないところだと思ったのですが、
 今回は冬の夜だったので、景色が一変しており、
 街灯やイルミネーションに照らし出されたショッピングエリアが、
 とてもおしゃれであることがわかりました。
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 仙川劇場も、昼みるとコンクリート打ちっ放しの殺風景な外観が
 見違えるような光と影のデザインになっておりました。
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《『R.U.R.』とロボットSF》

 今から半世紀以上前のTVアニメーションの黎明期(1960年代後半)には、
 手塚治虫原作の『鉄腕アトム』、横山光輝原作の『鉄人28号』がアニメ化され、
 我国の現代SFの楚を築いた筒井康隆世代のSF作家がシナリオに取り組み、
 ロボットSFを含む質の高いSFアニメ作品が数多く制作され、
 この頃に子供時代を過ごした私には、SFは身近な存在であり続けています。

 その後、1969年に、今は亡きテアトル東京のシネラマ大画面で、
 スタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』(1968)を見て、
 腰を抜かさんばかりの衝撃を受けたのが本格SFの洗礼だったといえます。

 その頃から、SF小説を読むようになり、
 『2001年宇宙の旅』の原作者であるアーサー・C・クラークの
 『幼年期の終り』(1953)『都市と星』(1956)では、米国SFのスケール感に圧倒され、
 アイザック・アシモフのロボット工学3原則で行動するロボットSF(1950〜1985)の
 ミステリーとしての面白さに嵌ると、そこから過去に遡り、
 子供の頃からの身近な存在だった『鉄腕アトム』『鉄人28号』が、
 実は非常に優れたロボットSFであることを再認識したものでした。

 そして、さらに過去にさかのぼると、ロボットSFの原点として、
 小説では『R.U.R.』(1920)に、映画では『メトロポリス』(1927)に行き着くことを、
 教養としては知っていたのですが、さすがに古色蒼然としすぎているだろうと、
 読んだり見たりしないまま、現在に至ってしまいました。

 そこに、広岡凡一氏が、この古色蒼然としたロボットSFを上演するということで、
 何かの巡り合わせとしかいいようがない絶好の機会が訪れたため、
 生きてるうちに見れるだけでも御の字ということで仙川劇場に足を運んだ次第です。

《あらすじ》

 ロボットSFの古典という以上の内容的な予備知識は何もなしに観たのですが、
 今回観たままのあらすじをまとめると以下のようになります。

■第1幕■
〔舞台〕
 地中海の孤島に拠点を置く、ロボットを量産して世界に販売する
 R.U.R.(Rossum's Universal Robots)社の応接ロビー。
〔設定〕
 R.U.R.社の製造するロボットは、感情と生殖能力はないが外観は人間そっくりで、
 世界中で、人間の労働を代替する作業用ロボットとして使われだしている。

 孤島には、1週間に1度停泊する船便があり、この船便で、
 R.U.R.社とロボットに興味をもつ欧州大陸からの訪問者が後を絶たない。
〔物語〕
 ある日、R.U.R.社のオーナーの一人娘のヘレナが船便でR.U.R.社を訪れる。

 ヘレナは、人間と区別のつかないロボットに人権を認めるべきという強い信念をもち、
 R.U.R.社におけるロボットの製造実態を調査しにきた。

 しかし、ヘレナを案内したR.U.R.社の社長ドミンは、
 今のロボットの仕様だからこそ人間を労働から解放できるという強い信念をもち、
 ヘレナの信念と全く相いれない。

 R.U.R.社には、社長のドミンの他に、経理担当のブスマン、研究担当のガル博士、
 工場メンテナンス担当のアルクイストを含む6人の男の幹部がいたが、
 ロボット製造工場と研究所しかない男ばかりの殺風景なR.U.R.社に、
 忽然と現れた若く美しいヘレナに、皆が魅入った。

 中でも、社長のドミンは、強引にヘレナの唇を奪いプロポーズし、
 ヘレナも抵抗できず、そのまま二人は結婚する。

■第2幕■
〔舞台〕
 10年後のR.U.R.社に隣接するドミンとヘレナが生活する豪邸の1室。
〔設定〕
 この10年間で、世界中で人間の労働作業はほぼロボットが代替する一方で、
 人間の生殖機能が低下したため、出生率が大きく低下する事態になっていた。
〔物語〕
 自ら労働することに喜びを見出す工場メンテナンス担当のアルクイストと、
 宗教的信念から、狂信的にロボットを否定するヘレナの乳母のナナは、
 この人間の情けない事態を嘆いた。 

 ヘレナは、ドミンを愛してはいたが、ロボットに対する自己の信念は変わらず、
 ドミンとの信念と相いれないことと、子供ができないことに苦しめられていた。

 信念を貫こうとするヘレンは、ヘレンを愛し続けるガル博士をそそのかして、
 ガル博士に、人間的感情を植え付けたロボットを量産させる。

 世界で販売されだした人間的感情を持ったロボットは人間を支配するようになる。

 この事態に気が付いたドミンとガル博士は、ロボットが自己増殖しないように、
 ロボットに生殖機能を付与する秘密技術を厳重に管理した
 (自己増殖できないロボットはいつか老朽化して寿命が尽きて絶滅するため、
  人間にとっての最後の安全装置となる)。

 一方で、ロボットの人間に対する支配志向は留まるところを知らず、ついには、
 労働生産能力のない人間は不要であるとして殺害をし始め、世界は騒然となる。

 その最中、子供ができないことがロボットの存在によると考え出したヘレナは、
 厳重に管理された秘密技術を盗み出し廃棄してしまう。

 人間を殺害し始めたロボットは、さらに自己増殖機能をも手中にするため、
 船便を占拠して、R.U.R.社がある孤島に上陸し、R.U.R.社の従業員達を殺害し、
 R.U.R.社の幹部が最後に逃げ込んだドミンとヘレナの豪邸を包囲する。

 ヘレナと幹部達が醜いのの知り合いをする中、
 ロボットは、最後には、彼らをも皆殺しにしようとするが、
 労働するすることを苦にしないアルクイストだけは生かしておく。 

■第3幕■

〔舞台〕
 ロボット市民が占拠したR.U.R.社の跡地。
〔物語〕
 ロボット市民は、生殖機能を付与する秘密技術が見つからないため、
 迫りくる自らの絶滅に怯え、ただ一人生存する人間であるアルクイストに、
 秘密技術を開発させようとするが、ロボット技術を知らない彼にはそれができない。

 絶望感に包まれたロボット市民の中で悄然とするアルクイストは、ある日、
 孤島の森の中で、
 ヘレナに瓜二つの女型ロボットと、女型ロボットに寄り添う男型ロボットに出会う。

 2体のロボットは、ガル博士が殺される前に製造した、
 愛するヘレナに似せて製造した女型と、生殖機能を補完する男型だった。

 アルクイストは、2体のロボットの存在に一縷の救いを見出す。

******

 次回は、この舞台について考えたことをまとめます。
posted by Dausuke SHIBA at 16:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台・ライブ
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