2020年05月21日

『仁義なき戦い 検察vs官邸』今後の映画化を期待

 五輪知財ブログで、今回の記事を組み込んだ記事
 『「検察庁法改正」問題の文脈で考える
  オリンピック関連登録商標の違法ライセンス問題(その1)

 を投稿したのですが、「検察庁法改正」問題が急激に展開していることと、
 書いているうちに、この問題を含むこの7年の現政権の動きが、
 (今回の賭けマージャンエピソードを含めて)
 本家『仁義なき戦い』の現代版として通用するほど映画的なことがわかってきたので、
 こちらのブログに改めて投稿することにしました。

 本題に入る前に、少しだけ以下について言及しておきます。
 
■芸能関係者のツイートが何故多かったのか■

 「検察庁法改正」問題がTwitterで1000万ツイートにまで拡散したのは、
 芸能関係者を中心とする著名人が多くツイートした影響が大きいのですが、
 例えば、ある歌手のツイートに対して、
 「歌手やってて、知らないかも知れないけど」のような
 自らのお馬鹿ぶりを曝け出すような意見を宣う方もおられるようです。

 芸能人を始めとする創作活動をされる方々は、
 見掛けのキャラクターは別として、本当に頭が悪くては、
 生き馬の目を抜く芸能世界で生き抜けません。

 歌手活動をしていれば、普段は、目の前の仕事で手一杯であり、確かに
 「歌手やってて、知らないかも知れないけど」状況があったかもしれません。

 しかし、コロナ禍の下、芸能人は仕事のキャンセルが続き、
 芸能活動をしようにもできない状況に置かれる一方で、
 自身を取り囲む社会の状況に、落ち着いて接する時間ができた筈で、
 その芸能人の状況の理解力は、多くの場合、
 この自らのお馬鹿ぶりを曝け出している方よりも遥かに高かったと思います。

 芸能人は大衆を相手とする日常のコミュニケーションツールたるツィッターで、
 いくらでもツイートできますから、1000万ツイートは、
 コロナ禍における芸能人の日常の中で、
 自然に必然的に拡散したと考えた方が良いと思います。

 政権は、ネットコミュニケーション制御に自信をもっていた筈ですが、
 政権のネットスキルを遥かに超えた状況に直面したというところでしょう。

■仁義なき戦い 検察vs官邸■
 検察庁法改正の内容は、今月(2020年5月)に入って、
 新聞・メディアで山のように説明されていますので、
 ここでは、詳細な説明はせずに関連サイトにリンクしながら、
 検察の思惑と官邸の思惑がどのように交錯して現在に至っているかを
 図解して考えてみたいと思います。

 この問題で特に解り難いのは、政権が行った、黒川東京高検検事長に関する、
 2020年1月31日の定年延長の「閣議決定」、
 2020年2月13日に衆参本会議での安倍総理による国家公務員法の「解釈変更」、
 2020年5月13日から衆院で審議が開始された「検察庁法改正案」のそれぞれが、
 黒川さんの処遇にどのような影響を与えるのかが理解し難いところで、
 私も中途半端に理解したままでした。

 今回、この点がわかるように、私の理解の範囲で図解してみました。
 検察vs官邸の仁義なき戦いぶりが感じ取れるのではないかと思います。

《仁義なき戦い第1話:現行法下での検察庁の思惑》
 検察庁は、行政組織の中では極めて独立性が強く、
 人事も、検察庁の意向がほぼ絶対的に尊重されてきました。

 現在の検察庁トップの稲田検事総長は、
 東京高検の黒川検事長の定年退官(2020年2月7日)後に、
 名古屋高検の林検事長を当て、
 自身が早期退任して、名古屋高検の林検事長を次期検事総長にする予定でした
 (稲田検事総長が退官拒絶、後任含みで黒川氏に異例の定年延長)。

 図解するとこのような感じになります(クリックすると鮮明に見れます)。
@検察庁法改正.jpg

 稲田検事総長の当初の目論見では、
 話題の黒川さんが検事総長になれる可能性は全くなかったということです。

《仁義なき戦い第2話:閣議決定後の官邸の思惑》
 しかし、官邸はどうしても黒川検事長を検事総長にしたくて、
 まずは、閣議決定して黒川検事長の定年を延長し、
 次に、稲田検事総長に対して、早期退任を勧奨し、
 検事総長の後任を黒川検事長にすることを迫ったのです。

 官邸の思惑通りにいけば、以下のようになるはずでした。
A検察庁法改正.jpg

 黒川さんは、2020年2月7日に定年になるはずでしたが、
 官邸は黒川検事長の半年間の定年延長を閣議決定して、
 稲田検事総長が、黒川さんの延長定年前に退任してくれたら、
 検事総長になることができたはずでした。

《仁義なき戦い第3話:閣議決定後に実際はどうなりそうだったのか》
 ところが、官邸から早期の退任勧奨を迫られた稲田検事総長は、
 当然のことながら激怒し、退任勧奨を拒絶しました。その結果、
 稲田検事総長が定年(2021年8月13日)まで、検事総長の椅子に座ることになり、
 黒川さんは、閣議決定でせっかく定年が半年延長されたのですが、
 またまた、検事総長になれない事態になってしまいました。

 この状況を図示すると、以下のようになります。
B検察庁法改正.jpg

《仁義なき戦い第4話:解釈変更による官邸の思惑》
 ところが、官邸はさらに悪知恵を絞り、
 国家公務員法第81条の3に定める最長3年間の定年延長規定を、
 本来、国家公務員法の特別法たる検察庁法が適用される検事に適用する
 という奇策を「解釈変更」と銘打って、
 閣議決定で半年間の定年延長がなされた黒川検事長の定年を、
 さらに3年間の定年延長を目論んだのです。

 その結果、黒川検事長は、
 稲田検事総長の定年時期を超えて検事長を継続できるので、
 稲田検事総長が定年退官した際に、内閣の判断により、
 検事総長に昇格できることになったわけです。

 この状況を図示すると、以下のようになります。
C検察庁法改正.jpg

《仁義なき戦い第5話:検察庁法改正による官邸の思惑》
 しかし、黒川さんは、検事総長になれたとしても、
 すぐに検事総長の定年年齢である65歳になってしまうので、
 黒川さんに検事総長を末長く続けて欲しい官邸は、
 定年年齢を60歳から65歳に引き上げる国家公務員法の改正に合せて、
 検察庁法の方も、役職定年制を導入し、内閣が判断した場合、
 役職定年をさらに3年間延長できるとする法改正案を提出してきたのです。

 これが、コロナ禍の日本国中が大騒ぎになった「検察庁法改正」案です。
 
 「検察庁法改正」案を黒川「検事総長」に適用すると、
 黒川「検事総長」の役職定年65歳は、内閣の指定により68歳まで延長できます。

 この状況を図示すると、以下のようになります。
D検察庁法改正.jpg

 なお、さらに再延長の規定も適用すると、
 黒川「検事総長」の役職定年は70歳まで延長できるという話もあります。


■根本的な問題■

 検察vs官邸の検事長の定年延長を巡る仁義なき戦いは、
 官邸の思惑通りにいけば、黒川さんが検事総長に長い間座っていられるようになり、
 一見、官邸の勝利に終わるかのように見えますが、
 この戦い、まだまだ続きがあり、勝負の行末は予断を許しません
 (と、五輪知財ブログでは書いたのですが、実際に、
  黒川検事長の賭けマージャン報道がでてしまい、勝負ついた感があります)。

《違法人事が解消できないという問題》
 報道や識者のコメントを読んだり聞いたりすると、
 「検察庁法改正」が成立してしまうと、
 官邸がここまで行ってきた「閣議決定」「解釈変更」も含めて、
 黒川さんの役職延長が全て合法化されてしまうような気がしてしまうのですが、
 「検察庁法改正」施行は、まだかなり先の2022年4月ですので、
 さすがに改正法の効力は2020年の「閣議決定」「解釈変更」には及ばず、
 「閣議決定」「解釈変更」が改正検察庁法により合法化されることはありません。

 また、「検察庁法改正」施行の2022年4月の前の2022年2月に、
 黒川さんの68歳の定年がくるので、ここにも法が遡及しない空白期間が存在します。

 従って、もし、2020年現在の法制度下で、「閣議決定」「解釈変更」による、
 黒川さんの役職定年の延長に法的根拠がなく、違法人事であれば、
 黒川さんは法的裏付けが全くないまま、
 検事長を継続し、検事総長になるということになってしまい、
 その結果、黒川「検事長」、黒川「検事総長」として行った決済文書は
 全て無効になるという極めて深刻な状況に陥ります。

 この状況を図示すると、以下のようになります。
E検察庁法改正.jpg

 実際に、官邸による「閣議決定」「解釈変更」は、ほぼ確実に違法と言えます。

● 内閣は法の枠内で政令を制定できても法を制定したり改正することはできません。
 従って「閣議決定」しても法の実体規定に対して何の法的効力も生み出しません。

● 特許法は、一般法である民法の特別法であり、
 特許法に規定のない事項は民法に従いますが、
 特許法の規定は民法に優先して適用されます。

 検察庁法が、一般法である国家公務員法の特別法であり、特許法と同様に、
 検察庁法に規定のない事項は国家公務員法に従いますが、
 検察庁法の規定は国家公務員法に優先して適用されることは
 法制度のルールであって、ここが崩れれば、
 特許法の下で仕事をする弁理士はどうしてよいのかわからなくなります。

 従って、法務省が行った「解釈変更」は脱法的といって言い過ぎではありません。

● 法務省が行った「解釈変更」が如何に脱法的かということは、
 本多平直衆院議員山尾志桜里衆院議員小西ひろゆき参院議員が、
 議論し尽していると言ってよく、
 森法相の答弁がボロボロであったことからも明らかです。

 さらに、郷原信郎元検事が、本問題をダメ押し的に総括しているので、
 参考にして下さい。

● 法律の解釈は、誰でも自由に主張することは可能であり、
 内閣・法務省が勝手な解釈をすることは法上禁止されている訳ではないので、
 最終的には、司法の場で争って、裁判所の判断で確定することになります。

 しかし、仮に内閣・法務省の解釈が裁判所で否定されれば、
 黒川「検事長」・黒川「検事総長」の決済文書が全て無効になり、
 その間の検察行政が崩壊してしまうので、
 検察行政をそのような不安定な状態に陥れる非常識なことは、
 これまで行われておらず、過去の内閣・法務省は、国会で、
 現政権ほどの露骨な脱法的な振る舞いはしてこなかったのです。

《仁義なき戦いはまだまだ続く》
 『仁義なき戦い 検察vs官邸』は、さまざまなスピンオフエピソードが展開中です。
 『広島死闘篇
 『代理戦争篇
 『頂上作戦篇
 『アベノマスク攻防戦篇
 『オリンピック関連登録商標の違法ライセンス篇

 本家『仁義なき戦い』は、私が広島大学の学生だった頃に大ヒットした映画で、
 広島市内にはあんなヤクザがうろうろしているのかと思ったものです
 (あの頃、同じ大学生だった安倍君は観ていないのでしょうか)。

 映画は、ヤクザ同志の権力闘争を単純に図式化して、アクションで押しまくった
 深作欣二監督の名作ですが、
 こちらの『検察vs官邸』は単純な図式化が必要ないほどシンプルかつあからさまで、
 現実が映画のようになってしまった我が国は、世も末を地で行ったことになります。

 今後の映画化に期待したいものです。
posted by Dausuke SHIBA at 10:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/187512423
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック