2020年06月14日

『理科教育』を弁理士が考えてみた(その7)番外編:徒に暗記を強いる教科体系は見直されるべきだ

 国会では、「「募る」であって「募集」ではない」などという議論を
 平気でなさる立法府の長がいるのを観ますと、
 やはり、戦後教育は全面的に見直さなければ、我が国は滅びると思います。

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 村上先生の論文をきっかけに『理科教育』について考えきましたが、
 一応、教科として理科に直接関係しそうなことは語り終えました。
 『『理科教育』を弁理士が考えてみた(その1)
 『『理科教育』を弁理士が考えてみた(その2)』 
 『『理科教育』を弁理士が考えてみた(その3)算数で鶴亀算をきちんと教えるべきだ
 『『理科教育』を弁理士が考えてみた(その4)物理は数学で考えるべきだ
 『『理科教育』を弁理士が考えてみた(その5)化学は実学に徹すべきだ
 『『理科教育』を弁理士が考えてみた(その6)理科教育は『技術・家庭』を入口とすべきだ

 ずいぶんと長期にわたり語っていた間に、
 事務所のガリレオ温度計のガラス球は1個を残して全て沈み、
 暑い季節に突入したことを改めて実感します。
KIMG0109.JPG

 今回は、理科教育に限らず、初中等教育において避けて通れない
 暗記について考えて見ます。

●徒に暗記を強いる教科体系は見直されるべきだ●
 かくいう私は暗記が全くできず、理科・社会科を習うに際して苦労しました。

 社会科に至っては、
 義務教育として学ぶ権利を放棄させられたような思いがします。

 その代わり、
 暗記する必要がない現代国語、公式の導出法だけ覚えた数学、
 理科・社会の中でも、
 暗記が最小限で済む物理と政経はそれほど苦になりませんでした
 (政経は憲法を暗記すれば制度を論理的に理解すれば足ります)。

 しかし、大学入試では私が苦にならない学科で受験できるところは限られ、
 探しに探して広島大学を受験したというのが実情です。

 ちなみに、当時、広島大学理学部は、
 現国・数学・物理・化学・政経・英語で受験できたのです。

 私の場合、その後すぐに導入されたセンター試験制度では、
 合格は無理だったと思います。

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 それから数十年後に弁理士試験を受けたわけですが、
 司法試験受験者には笑われると思いますが、
 知的財産制度の中核の特許・実用新案・意匠・商標・著作権の
 わずか5法域について、まずは頭に詰め込むのに苦労しました。

 しかし、知的財産制度は非常に論理的で、
 規則的に暗記できる側面が強く、一度覚えてしまえば、
 あとは論理を駆使することが本質なので、私には合っていたと思います。

 特許法は、重要な特許要件が、発明該当性・新規性・進歩性の3つで、
 特に暗記する必要もなく、専ら手続要件を暗記すればよかったのです
 (特許要件と手続要件を組み合わせた論文筆記試験自体は難しいですが)。

 商標法は、暗記しなければならない登録要件が20前後あり、
 しかも、これらの要件の間に脈絡がなく個別に覚えなければならず、
 苦労しました(トイレに貼って覚えたものです)。

●無駄な暗記を強いる不合理な教育体系●
 前回までの考察を振り返ると、理科の教科体系は、
 数学・物理・化学・生物・地学・技術・家庭が、
 相互に参照しあう関係を遮断して個別独立しているので、
 論理の筋道が切れて論理的な「理解」が妨げられて、
 生徒に無駄に暗記することを強いています。

 これは、日本史・世界史・地理・政経・倫社の間でも同様で、
 特に、ほぼ全頁の暗記を強いられるとしか思えなかった、
 日本史・世界史・地理の教育体系は縦割・縄張・蛸壺ぶりは異常であり、
 このような異常な教科体系を放置する教育関係者の罪は大きい。

●世界史は中国史を座標軸にすべきだ●
 おそらくは教育の現代化のような趣旨と思いますが、
 公教育では、世界史は各国通史の体系になっておらず、
 同時代の全世界の状況を並行して学習する体系になっています。

 何故、このような残酷な体系を生徒に強いるのでしょうか。

 世界を横断的に俯瞰しなければ理解できないようになるのは、
 近代以降の現代史の話であって、それまでは、日本も含めて、
 各国・地域の歴史はそれぞれの中でほぼほぼ完結しているので、
 その個別の国・地域の歴史の流れに沿って通史を学習すれば、
 因果関係を理解しながら、最小限の暗記だけで、
 その国・地域の歴史は理解できる筈です。

 それを、数千年を100年毎くらいの期間に区分して、
 その期間の間の各国の状況をばらばらに教えるので、
 その期間の各国・地域の状況について、
 通史の流れの中での因果関係が理解できなくなり、
 その結果、その期間の各国・地域の状況をひたすら覚え、
 次の期間についても同様にひたすら覚えるしかないということになります。

 ちなみに、歴史教科書で定評のある山川出版の「詳説世界史-B」
 の目次を以下に引用しました。
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 例えば、「第1章 オリエントと地中海世界」は「ローマ世界」で終わですが、
 その続きは「第5章 ヨーロッパ世界の形成と発展」で、
 その間にインド・内陸アジア・イスラムの古代史が入るので、
 第1章のことなど完全に忘れてしまい、第5章は何の続きだったのか?
 ということになってしまいます。

 また、中国史も、
 「第2章 アジア・アメリカの古代文明」の「中国の古代文明」の続きが、
 「第3章 内陸アジア世界・東アジア世界の形成」の「東アジア文化圏の形成」
 で、その間に、なんと南北アメリカ古代史や北方民族の話が入るので、
 中国通史としての因果関係が解らなくなってしまいます。

 ******

 中国は、世界最古の歴史発生地域であり、
 現代に至るまで、ほぼ同じ地域で一貫して文明が継続し、
 日本史と密接不可分に関係するのですから、
 世界史は、中国通史を入り口にすべきと思います。

 中国は、広大な中国大陸の北方、中原、南方の諸民族が、
 中原における覇権を巡り争い、漢民族をはじめとする幾多の民族が
 帝国の勃興・滅亡を繰り返しますが、他の地域の歴史に比べて、
 他の地域からの影響が相対的に少なく、
 勃興・滅亡の因果関係がどの帝国もそれほど大きく違わないので、
 帝国の名前を時代順に覚えれば、後は、
 帝国毎の政治・社会制度を理解しながら暗記をすることができます
 (従って、中国通史はそれほど時間を要しないのではないでしょうか)。

 こんな覚え方があるようです
 (中国王朝は歌(ゴロ)で暗記!10分で勉強は終わる! )
 
  殷、周、秦、漢、三国、晋 (もしもしかめよ、かめさんよ)
  南北朝、隋、唐、五大   (せかいのうちにおまえほど)
  宋、元、明、清、中華民国 (あゆみののろいものはない)
  中華人民共和国      (どうしてそんなにのろいのか)

 そして、何といっても、歴史に題材をとった、娯楽作品としての
 秦の始皇帝の物語『項羽と劉邦』、三国時代の英雄談『三国志』
 を代表とする、とてつもなく面白い小説・ドラマ・漫画が多くあり、
 生きた歴史を疑似体験できるというのが中国通史の強みです。

 小説では、
 司馬遼太郎『項羽と劉邦』、柴田錬三郎『三国志 英雄ここにあり
 ドラマでは、
 中国ドラマ『項羽と劉邦』、『三国志』、
 漫画では、
 横山光輝『項羽と劉邦』、『三国志』等があり、
 春休みにでも徹夜して読んだり見たりしたらよいと思うのです。

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 重要なことは、古代から近代の前の世界史の時間的・空間的座標軸として、
 中国史が頭に入っていれば、他の国の通史も、
 同時代の中国の動向を参照して理解しながら暗記ができるということです。

 我が国は、欧米・インドに比べれば、
 極めて長期にわたり中国の影響を受け続けているのですから、
 世界史の方で中国史がきっちり頭に入っていれば、
 日本史の中国と関係する部分の理解・暗記負担が相当に軽減できる筈です。

●「日本現代史」と「地理」は「世界現代史」に統合すべきだ●
 世界史も、さすがに近代以降は、各国通史に拘る意味がなく、
 グローバルな関係性を理解せざるをえません。

 そうであれば、日本史の近代以降も世界史の近代史に統合して、
 よく言われる、日本史の授業が現代史の前で終わってしまう、
 という状況を解消する必要があります。
 
 また、地理は、各国の歴史(地政学)と密接に関係しますから、
 世界史の各国通史では各国地理も必然的に学習することになり、
 さらに、世界現代史は、
 グローバルな資源の分布、産業・文化交流と密接不可分ですから、
 地理の大部分は世界現代史に統合できてしまう筈です。

 さらに、政経・倫社の基礎となる近代合理思想も、
 その萌芽は、世界現代史の中で語られるべきなので、
 その部分は世界現代史に統合しておけば、
 政経・倫社の歴史部分の理解・暗記負担は減る筈であり、
 政経・倫社では、負担が軽くなった分、
 憲法をしっかり理解するため、行政法や民法レベルの法教育も行うべきです。

 そして、「「募る」であって「募集」ではない」「私は立法府の長」
 などと、国会で総理大臣が義務教育レベル以下の議論をしてしまう、
 我が国の恐るべき状況の、教育の視点からの解消を目指すべきです。

●無駄な暗記を強いる不合理な教育体系の最大の弊害●
 上記した無駄な暗記を強いる不合理な教育体系で、
 最も有利な立場にたつのが、東大頭の方々です。

 東大頭とは、いくらでも暗記することができるが、
 その代わりにロジカルな思考がほとんどできない頭の構造をいい、
 官僚・法曹・士業にも多くいらっしゃいます。

 このような方々は、我が国にとって不要というわでではないのですが、
 このような方々ばかりですと、
 連日報道される行政機関の無責任な状況に行き着いてしまいます。

 教育関係者の皆様には、国会で未来の総理大臣が
 「「募る」であって「募集」ではない」「私は立法府の長」
 などと聞いてる方が恥ずかしくなるような議論をしないように、
 未来の官僚が責任をもって政策を運用するようにするために、
 徒に暗記を強いる不合理な教科体系は、
 我が国が滅びかねない深刻な問題であると強く認識して、
 合理的な教科体系に改善する努力をして欲しいと思います。
posted by Dausuke SHIBA at 15:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 教育
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