2017年03月17日

TV時代劇ベスト10(第4〜3位)

 前回までで、第10位から第5位までをまとめました。

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 今回は、第4位及び第3位をまとめます。

第4位 『新撰組血風録』(1965〜1966)

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 船橋元(近藤勇)が池田屋に突入し、
 飛び散るモノクロの血しぶきが想像力を刺激して、
 どれだけ血なまぐさく恐ろしかったか、
 子供の私には怖くてみることができないTVドラマでした。

 その後、『俺は用心棒』や『風』(土田早苗さんに憧れました)の栗塚旭がかっこよく、
 よく共演していた左右田一平と島田順司の3人が
 『新撰組血風録』でも同じイメージの役をやっていたという話をよく聞き、
 いつか『新撰組血風録』をきちんとみてみたいと思っていたのです。

 そして『新撰組血風録』がビデオレンタルされ始めたのを機に、
 毎週末1巻ずつ借りて、TVとほぼ同じペースで見たところ、
 毎回の感動と滂沱の涙で困ってしまいました。

******

 各隊士に焦点を合わせたエピソードを丹念に積上げ、
 これらのエピソードにレギュラーの斉藤一(左右田一平)と沖田総司(島田順司)
 がさりげなく絡み、
 土方歳三(栗塚旭)が渋い語り口(クールの極み)のナレーションで話を進行させていく
 という構成で、ドラマ全体が、
 各隊士の死に向かう物語を客観的に突き放しながらも、暖かく包み込むという、
 計算し尽くされた素晴らしい脚本でありました。

 脚本の結束信二と、多くのエピソードを監督した河野寿一は、
 東映娯楽時代劇でならしており、
 このコンビがTV時代劇の基礎をつくったともいえます。

 現在の太秦映画村と違い、当時の東映のセットをそのまま使用していると思われ、
 広々とした屋内での殺陣は、ダイナミックで迫力があります。

 また、春日八郎のアナクロムードに溢れた「新撰組の旗が行く」(渡辺岳夫作曲)も、
 ドラマの前半では、若き新撰組の立ち上げへの応援歌、
 ドラマの後半では、落ち延び追い詰められる新撰組の葬送歌として、
 これ以上ぴったりの曲はないといえます。

 隊士の中では、
 徳大寺伸演じる原田佐之助の控え目ながら筋を通す生き方が印象に残っています。

 しかし、なんといっても、栗塚旭が演じる水も滴る「土方歳三」、
 島田順司が演じる透明で切ない「沖田総司」、そして、
 左右田一平が演じる新撰組の最後をみとり生涯その供養をする「斉藤一」
 の主役3人の死と背中合わせの若さが情熱的で、それぞれが、
 ついに最後の別れを迎える場面では涙を抑えることができませんでした。

 土方歳三、沖田総司、斎藤一の3人は、栗塚旭、島田順司、左右田一平の3人
 以外が思い浮かばなくなるほどのはまり役で、
 1998年のテレビ朝日版の村上弘明の土方歳三、
 2011年NHK版の永井大の土方歳三(おいおいおい『特命係長 只野仁』の・・・
 だいぶ違うだろ)などは、やはりは笑いがこみ上げてしまい、
 敬遠してしまいました。

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 映画が斜陽になりだした頃、
 映画の仕事がなくなりつつありTVに活動舞台を移さざるをえなかった
 若手俳優、悪役俳優、優れた脚本家・監督その他のスタッフが、
 撮りたいものを撮るという熱気があふれた多くのTV時代劇がつくられましたが、
 『新撰組血風録』は、その中でも際立って情熱的なTV時代劇です。

 『新撰組血風録』は、
 我が国の高度成長時代の始まりと共にTV産業が急速に立ち上がっていった
 あの頃でなければ制作しえなかった奇跡のTV時代劇であるといえましょう。

 もし、特に女性で、
 この栗塚旭版『新撰組血風録』を観ていない方がいらっしゃるようでしたら、
 この時代に生まれてこれを観なければ甲斐なし、と思いますので、
 ご鑑賞いただくことを強くお奨めします。

第3位 『必殺仕掛人』(1972〜1973)

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 市川崑監督の演出がモダン、上条恒彦の歌がモダン、
 主演で新人の中村敦夫がこれまでの時代劇俳優とは異なりモダン、
 とモダンずくめの『木枯し紋次郎』(フジテレビ)でしたが、
 同じ時間帯にTBSが仕掛けた本格時代劇『必殺仕掛人』に力負けしました。

 大映時代劇の奇才で、当時、
 大映時代劇の最後の光芒を放っていた若山富三郎主演の『子連れ狼』(勝プロ)
 を演出した三隅研次監督と、
 東映のやくざ映画のエース監督で、
 残酷場面を品よく描くことができる深作欣二監督とが、
 多くのエピソードを演出しました。

 NHK歴史時代劇『太閤記』(1965)と『源義経』(1966)の主演級を経て、
 油が乗り切っていた稀代の個性派かつ演技派俳優である緒方拳が主演であり、
 『木枯し紋次郎』に比べれば遥かに正統派本格時代劇であったといえます。

 私は、『木枯し紋次郎』を初回から欠かさず観ていたのですが、
 新番組の『必殺仕掛人』の第1回だけは見ておこうと思ったのが運の尽きで、
 それきり、乗り換えてしまいました。

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 『必殺仕掛人』は、殺し屋が主人公で、依頼人に悪行の限りを尽くした悪の権化を、
 依頼人の人生と引き換えに仕掛人が暗殺する、
 というストーリーの斬新さが話題にもなり物議を醸したものですが、
 本作はTV時代劇あるいはTVドラマとして、
 映画では味わえないリズム感を創造した点に
 他のドラマにはない面白さがあったのだと思います。

 悪の権化に人生のどん底に突き落とされた依頼人が、
 身売り、破産等の己の人生と引き換えに百両は下らぬ仕掛依頼料を懐に、
 仕掛人元締めである音羽屋半衛門(山村聡が貫禄たっぷり)に
 悪の権化の殺しを依頼し、音羽屋が、針医者の藤枝梅安(緒方拳)と
 同僚のわけあり浪人である西村佐内(林与一)に仕掛けを命じるところまでは、
 言ってしまえば毎度お決まりのワンパターンストーリーでもあります。

 しかし、本作はここから先の展開、即ち、三隅研次と深作欣二の、
 アップ気味のシルエットに由来する光と影が交錯するシャープな映像、
 地獄の底で弾けるようなベース音と、依頼人の暗黒の背景物語とは真逆の
 軽快な主題歌「荒野の果てに」(唄:山下雄三/曲:平尾昌晃)をバックに、

 藤枝梅安の指の間に針を構えてから唇に挟み込むという、
 何ともかっこいい、従来にない様式的な殺陣と、
 西村佐内の歌舞伎調正当派の殺陣が美しく舞う仕掛けによって、
 悪の権化の息の根を止めるところまでのプロセスを、
 胸がわくわくするようなリズム感で一気に見せ切ってしまうところに、
 『木枯し紋次郎』を含めた従来の時代劇にはない、
 力強いカタルシスを伴う何とも言えない爽快感があります。

 この爽快感、「指令→ミーティング→仕掛け→任務達成」までのプロセスを、
 ラロ・シフリンの軽快な音楽と共に見せる、
 全体がリズミカルな音楽の体験とでもいえるような『スパイ大作戦』に
 共通するものがあります。

 『必殺仕掛人』は『スパイ大作戦』を多分に意識しているものと思われます。

 優れたTVドラマの多くは、
 このような観る者の音楽的生理に訴えることに成功しており、
 だから、毎回楽しみでもあり飽きがこないともいえます。
 (『ドクターX』もそうですね)。

 実際、田宮二郎主演の映画版『必殺仕掛人』も面白かったのですが、
 映画の横長の大スクリーンでは、
 TVサイズだからこその詰め込まれた密度の高いリズム感は生じ得ず、
 軍配はTV版に挙がると思います。

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 仕掛人たちは、仕掛けた後、決して後味が良いわけではなく、
 稼業がばれれば獄門磔の刑になるのは必定、
 日常には二度と戻れない精神的ストレスを金で解決するしかなく、
 依頼人の用意しなければならない金は、毎度、百両はくだらない額でありました。

 依頼人の多くは、
 悪の権化に全財産をむしり取られたり、体を奪われたりした挙句に依頼するのであり、
 百両の金は、さらに自分の人生と引き換えで工面するしかなく、
 仕掛人が悪の権化を倒しても、依頼人にとって何の救いもないままとなります。

 この少なくとも百両という額の設定が、このドラマに強い説得力を与えています。

 この設定は、脚本というよりは、
 原作のリアリティによるところが大きいのだと思います。

 池波正太郎の原作を離れた『必殺仕掛人』の後継ドラマである中村主水シリーズは、
 同じ脚本家が執筆していたにも関わらず、
 依頼金額がわずか数両、ひどいときには小判1枚にも満たない依頼金額を、
 仲間で分け合うという設定で、そんな少額で命を張って仕掛などするわけないだろう、
 と突っ込みたくもなり、目を覆わんばかりにドラマの質が大きく低下します
 (「ムコ殿!」は面白かったですが)。

 毎回の悪の権化も、
 遠藤辰雄、小池朝雄、金田龍之介、戸浦六弘、神田隆、内田朝雄、安倍徹といった、
 殺されて当然の悪役スター達の渋さも味わい深いですが、
 大友柳太郎、松橋登、小坂一也、近藤正臣といった、
 悪役とは縁がなさそうな俳優たちが嬉々として殺され役を引き受けているのも
 TVならではの面白さでした。

 また、毎回のオープニングの睦五郎の渋さ全開のナレーション:
 「はらせぬ恨みをはらし、許せぬ人でなしを消す、
 いずれも人知れず仕掛けて仕損じなし、人呼んで仕掛人。
 ただしこの稼業、江戸職業づくしには載っていない。」は、
 ハードボイルドの極みともいえ、
 このドラマのリズム感を決定づける絶品でありました。

 『必殺仕掛人』もまた、
 現代劇、時代劇を問わず、TVドラマの1つの到達点であろうと思います。
posted by Dausuke SHIBA at 20:36| Comment(0) | TrackBack(0) | TVドラマ

2017年03月12日

TV時代劇ベスト10(第7〜5位)

 前回は第10位から第8位までをまとめました。

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 今回は第7位から第5位までをまとめます。

第7位 『文五捕物絵図』(1967〜1968)

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 NHKは、1963年『花の生涯』に始まる大河ドラマと並行して、
 1965年『人形佐七捕物帳』に始まる捕物帳を軸とした人情時代劇
 (私が勝手に名付けました)のシリーズが続いています。

 『人形佐七捕物帳』で主演をした松方弘樹は、本当に水も滴る美青年でしたが、
 今年(2017年)、『仁義なき戦い』の記憶と共に亡くなりましたね。

 私の記憶では、『人形佐七捕物帳』をうろ覚えのまま見呆け、
 次の『大岡政談 池田大助捕物帳』で映画俳優でない若手俳優(実は歌舞伎役者)
 の新鮮な演技と切れのあるストーリー展開を漫然と楽しんでいたように思います。

 そして続く『文五捕物絵図』では、
 さらに新鮮で現代的カッコよさを体現した杉良太郎の演技、
 シャープな演出、技術が板についてきたビデオ撮影が強烈に印象に残りました。

 NHKの人情時代劇シリーズは、TV育ちのスタッフと、
 斜陽の映画に出番がなくなってしまった若手俳優と、
 若手の歌舞伎俳優とを積極的に取り込み、
 TV独特の時代劇表現を確立していくのですが、
 『文五捕物絵図』でその基礎が整ったといえます。

 ちなみに、『文五捕物絵図』の3作後が『男は度胸』(TV時代劇ベスト10第9位)であり
 NHK人情時代劇の全開に繋がります。

 倉本聰が脚本の、和田勉が演出のそれぞれ中心にいて、音楽が富田勲、
 原作が松本清張ですから、
 丁寧に制作すれば、いいドラマとなって残ることは必然であったと思います。

 原作は松本清張の時代劇短編集のようですが、それ以外のエピソードの方が多く、
 松本清張の現代劇短編集、長編の名作『ゼロの焦点』『霧の旗』『波の塔』
 などが時代劇に翻案され(小学生の私には知る由もありませんでしたが)、
 当時のNHKとスタッフの意気込みが伝わります。

 それと。当時の人情時代劇は金曜日夜の1時間枠で、それも、
 NHKですから正味1時間で、
 作る方も、見る方も、腰を据えてじっくり取り組めたものです。

 私としては、杉良太郎の文五のカッコよさは当然として、むしろ、
 文吾を助ける丑さん(露口茂)の渋さ、親父(東野英治郎)の大惚けぶり、
 まだ高校に入りたての奈美悦子の可愛らしさが印象に残っており、
 軽快なテンポの富田勲の主題曲が耳にこびり付いています。

第6位 『御家人斬九郎』(1995〜2002)

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 1990年代の民放は、
 現代劇が幅をきかせる一方で(質的には不毛と私には思えましたが)、
 1980年代に全盛を迎えた民放時代劇が勢いを失い、
 見るべき民放時代劇が激減していました。

 その中で、生死の淵を彷徨った渡辺謙が復活し、
 再起作として放った『御家人斬九郎』が傑作となりました。

 原作が柴田錬三郎、演出が映画時代劇のベテランの田中徳三や工藤栄一、
 音楽が映画音楽の重鎮の佐藤勝と、
 どちらかといえば映画サイドの重量級のスタッフですが、

 レギュラー出演陣が、渡辺謙、若村麻由美(美しい)、岸田今日子、牧冬吉、益岡徹、
 塩見三省といったTV及び舞台サイドのスターと渋さ横溢の俳優で固められ、
 ゲスト出演陣が、隆大介、山本圭、夏八木勲、北大路欣也
 といった映画畑の中堅・ベテランで、
 映画的な重厚さと映像美にTV的な軽妙さがうまく融合した、
 満腹感を味わえる時代劇になっています。

 ちなみに、隆大介は、私の妹の都立高校の同級生ということで、親しみを感じます。
 黒澤明監督『影武者』の織田信長がかっこよく
 (現在のTV時代劇の織田信長像は隆大介のバリエーションと言っていいと思います)
 時代劇でもっと活躍して欲しいものです。

 渡辺謙が、母親役の岸田今日子、愛人役の若村麻由美と軽快に掛け合い、
 うだつの上がらない名ばかり御家人の悲哀を滲みだしており、その一方で、
 渡辺謙自身が実際に病み上がりという状況での鬼気迫る殺陣、
 というか、まさにTVのフレームをはみ出る気迫によって、
 毎回、余韻の残るエピソードとなっていました。

 『御家人斬九郎』は2002年に最終回を迎えるのですが、
 最終回は凄まじい迫力の殺陣が繰り広げられ、斬九郎は果たしてどうなったのか、
 と余韻が残りすぎた締めでありました。

 『御家人斬九郎』制作中に、
 牧冬吉さんが亡くなり、最終回の4年後には岸田今日子さんも亡くなり、
 彼らの最後の光芒が記録されているという意味でも貴重な時代劇です。

第5位 『慶次郎縁側日記』(2004)

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 1980年代は、民放時代劇が全盛を迎えていた一方で、
 NHK人情時代劇シリーズは、旧世代の原作が枯渇しつつあったせいもあり、
 やや調子が落ちていたように思います。

 しかし、1990年代に入って、NHK人情時代劇シリーズは、
 その継続が危ぶまれたときに、藤沢周平の原作のドラマ化
 (『腕におぼえあり』『清左衛門残日録』)に取り組み起死回生し、
 以後、新世代の原作を積極的にドラマ化して、
 2000年代に一つのピークに到達したと思います。

 監督の吉村芳之は、最大の功労者の一人ですが、
 今年(2017年)2月に70歳で亡くなりました。
 まだまだ、味が出るのはこれからというときに残念です。

 この経緯の中で、NHK人情時代劇は、
 女流脚本家を意識的に育成していると思われ、
 抜擢された脚本家は、いい仕事をしていると思います。

 この流れにおけるNHK人情時代劇の代表作が、
 北原亞以子原作の『慶次郎縁側日記』です
 (北原亞以子さんも4年前(2013年)に亡くなり寂しいです)。

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 鬼同心であった森口慶次郎(高橋英樹)の実の娘の三千代(岡本綾)が、
 結婚を前に中年男の常蔵(若松武史)にかどわかされ自害する
 という衝撃的な事件から始まり、
 しかし、慶次郎は常蔵を目の前にしながら殺すことができず、
 その心の傷を抱えたまま引退するという、
 第1回の重すぎるエピソードが、全編を貫くベースとして提供されます。

 慶次郎は、自害した三千代の婚約者であった晃之助(比留間由哲)を養子に入れ、
 家督を晃之助に譲り、商家の別荘の寮番となって悠悠自適の生活を始めました。

 しかし、慶次郎の思いとは裏腹に、次々と事件が起こり、
 慶次郎は、昔取った杵柄もあり、晃之助と共に事件解決に出向かざるを得ない、
 というのが毎度のパターンとなります。

 しかし、それらの事件に関わるたびに、慶次郎には、
 三千代への思いと常蔵への憎悪が蘇り、心安らかでない日々を送ることになります。

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 こうして説明すると、終始真っ暗な話のように思えるのですが、実際は、
   別荘の寮番で慶次郎の下働きとなる佐七(石橋蓮司)とのおバカな掛け合い、
   晃之助の皐月(安達祐実)との出会いと結婚、
   晃之助の手下の辰吉(遠藤憲一)の常蔵の娘おぶん(邑野みあ)への想い、
   慶次郎を包み込んでくれる料亭の美人女将お登世(かたせ梨乃)との交情、
   ライバルの同心の手下である吉次(奥田瑛二)との奇妙な友情、
 等がちりばめてあります。

 これらの共演者が素晴らしく、
 中でも石橋蓮司は絶品であり、遠藤憲一と奥田暎二はカッコよすぎ、
 安達祐実が水を得たかのように、かわいらしく伸びやかに演じています。。

 高橋英樹は、このドラマで演技に開眼したように思います。

 これらの一癖二癖ある共演者に食われないようにするためには、
 高橋英樹のスター性をもってしても、それだけでは対抗できなかったと思いますが、
 このドラマでの高橋英樹は、
 心のの葛藤をいやみなくドラマチックに観る者に伝えていると思います。

 そして、最大の問題男である常蔵を演じた若松武史が秀逸です。

 慶次郎と常蔵の関係は、第3シリーズの終盤で大団円を迎えるのですが、
 そこまで常蔵はほとんど登場しないにも関わらず、
 シリーズ全編を通じて常蔵の影が慶次郎の心に巣食っているという設定なので、
 常蔵役には極めて高度な演技力が要求されます。

 若松武史は、生かすに値しない最低男の常蔵になりきっていました。

 私は、若松武史を常蔵で初めて意識したのですが、
 Wikipediaによると、寺山修司が率いた劇団「天井桟敷」の中心的俳優だった
 とのことですから、やはり筋金入りということでありましょう。

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 毎回、登場人物のやるせないエピソードが展開され、
 笑いと涙の振幅の大きい物語が楽しめる一方、
 全体として、登場人物全員の人生の絡み合いと成長が俯瞰することができるため、
 見終わった後に深い余韻が残ります。

 私などは、『慶次郎縁側日記』を見ると、齢取るごとに号泣する場面が増えており、
 齢をとって、いろいろな機微がわかるほど感動できるドラマがあるというのは、
 齢をとる一つの楽しみでもあるかなと思う今日この頃です。

 『慶次郎縁側日記』は、現代劇・時代劇を問わず、TVドラマの最高傑作の1です。
posted by Dausuke SHIBA at 14:08| Comment(0) | TrackBack(0) | TVドラマ

2017年03月10日

TV時代劇ベスト10(第10〜8位)

 2011年7月24日にアナログ放送が途絶えたときに、デジタル放送に切り替えず、
 TVを自宅では全く見なくなりました。

 それ以降、電車に乗ったときに、
 ドア上の車内動画を食い入るように見入る自分が怖いです。

 しかし、それまでに出会った数々の素晴らしいTV番組は、
 私の人格形成に少なからぬ影響を与えており、ここに感謝の意味を込めて、
 2011年までの半世紀のTV鑑賞報告をさせていただきたいと思います。

 ということで、本体ブログの「Essay」に、
 「TVドラマベスト10」と「TV時代劇ベスト10」を連載したのですが、
 こちらのミニブログでの映画の短評記事が蓄積したので、
 誤記や、ベスト10表を見易くし、リンクも飛び易くして、
 こちらに再度載せてみることにしました。
 
 まずは、私の記憶に残るTV時代劇ベスト10を数回に分けて報告します。

 今回は、第10位から第8位までを報告します。


第10位 『木枯し紋次郎』(1972〜1973)


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 黒澤明監督が自殺未遂をした翌年、
 映画の時代劇といえば『子連れ狼』(三隅研次/若山富三郎)以外に
 見るべきものがない頃で、私が住んでいた近くの武蔵小山商店街の映画館も、
 松竹、大映と日活の配給会社が合併したダイニチを3本立てで上映したりして、
 それまでは別々の映画館で観なければならなかった各社の映画を
 一度に見れてしまうという面白さがあったものです。

 『子連れ狼』『兵隊ヤクザ』『おさな妻』『影の車』そして『男はつらいよ』
 懐かしい!

 関根恵子さんと同世代の私は、悪いことをしているような気がして、
 岩下志麻さんも30歳になったばかりで、こんなに美しい人が、と、
 もうドキドキ、クラクラの日々でありました。

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 世は田中角栄首相の全盛時代。

 コンピュータ付ブルドーザーによって、土地の価格が爆発的に上昇して、
 退職金で家を買えなくなったというTVニュースを聞き、
 物悲しい気持ちになったことを記憶しています。

 流行歌の世界では、典型的な歌謡曲がややピークを過ぎ、
 四畳半フォークソングも鼻につきだした頃、ユーミンが最初のヒットを飛ばし、
 世界に何か新しさの予兆が感じられてきた頃でもありました。

 洋楽は、ビートルズ解散後のCCRシカゴ等のハードロック、
 カーペンターズウィングスが、
 永久に続くかと思うほど楽しい曲を次々にヒットさせ、
 洋画は、アメリカン・ニューシネマの末期を、
 『ゴッドファーザー』が締めくくろうかという流れの中にありました。

 そんな頃です。

 貧乏人が不幸のどん底のままに終わる身も蓋もない物語が多いにも関わらず、
 市川崑監督の演出がモダン、
 上条恒彦の『だれかが風の中で』がモダン、
 主演で新人の中村敦夫がこれまでの時代劇俳優とは異なりモダン、
 とモダンずくめが圧倒的な救いとなる、ご存知『木枯し紋次郎』が始まりました。

 芥川隆行のナレーターもぴったり決まり、
 「映画女優」といえる花のある女優陣が健在で、
 映画の花とTVのモダンさが絶妙にブレンドされていたように思います。

 当時、菅原文太主演で映画版『木枯し紋次郎』も観ましたが、
 あまりに東映やくざ映画的で、やっぱり映画はあかんなと思ったものでした。

 『木枯し紋次郎』の映画化でなければ、それなりに楽しめたのかもしれないのですが。

第9位 『男は度胸』(1970〜1971)

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 「天一坊事件」に題材をとった柴田錬三郎の小説を原作にした時代劇で、
 徳川吉宗が主役であり、もろに権力者を主人公にした物語でしたが、
 モダンさにおいて『木枯し紋次郎』の先駆けになっていたという意味で
 強烈に印象に残りました。

 なんといっても、徳川吉宗を演じた浜畑賢吉が颯爽、新鮮かつ二枚目で、
 天一坊を演じた志垣太郎も水が滴っておりました。

 また、是非Wikipediaをご確認いただきたいのですが、
 脇役陣も今では考えられない豪華さです。

 このドラマはモノクロビデオ撮影であったような気がするのですが、
 今では第1話しか残っていないとのことです。

 民放時代劇はフィルム撮影が続き、
 今でも当時のドラマを完全な形で見ることができる場合が多いのですが、
 NHK時代劇は伝統的にビデオ撮影で、文化の保存の観点からは劣悪な管理といえます。

 しかし一方で、NHKは非常に高いビデオ撮影技術を構築して、
 近年のNHK時代劇のビデオ撮影技術の美しさと映像表現は素晴らしいと思います。

 民放時代劇はフィルムに依存していた期間が長かった分、
 例えば、『水戸黄門』がビデオ撮影になった初期の頃は、
 見るも無惨な「てかてか」ぶりでありました。

 「男は度胸」の後に、さらにモダンさに磨きをかけた『天下御免』が放映され、
 こちらも負けず劣らず「現代」を時代劇に取り込んだ新しい時代劇でありました。

第8位 「三匹の侍」(1963〜1969)

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 黒澤明監督が『七人の侍』『用心棒』『椿三十郎』で創造した、
 凄腕ではあるが人間味あふれる浪人集団が、
 リアルな殺陣を通して事件を解決(し切れないことも多かったですが)する形式を、
 TV時代劇にそのまま持ち込んで、
 とにかくTVのフレームによく収めたと思えるほど迫力のある殺陣が展開されました。

 と、今となっては解説できますが、
 当時は、私は黒澤明監督の上記時代劇を見ておらず、
 東映時代劇をTVで観ていた中で『三匹の侍』を最初に見たときの印象は強烈でした。

 子供たちに圧倒的人気の芋侍の長門勇(桜京十郎)と、
 当時本当に若く二枚目で女性ファンが多かった平幹次郎(桔梗鋭之介)とが、
 それなりに殺陣も決まって新鮮でした。

 映画経験のほとんどない2人を引っ張るリーダー格の丹波哲郎(柴左近)が、
 ドラマ全体を引き締めていて、バランスのとれた配役でありました。

 3人とも鬼籍に入られたのですが、
 今も、新鮮な3人の姿が焼き付いていて、何とも不可思議な感覚になります。

 丹波哲郎が1年でレギュラーを抜けたあとを、
 新人の加藤剛(橘一之進)が引き継いだのですが、
 殺陣が硬くなんとも大根でありました。

 各シリーズの最終回は、圧倒的に多勢の藩の追っ手に囲まれた中を、
 三匹が切り込んで、これではさすがの三匹も切り死にか、
 と子供心にも無常観が漂いましたが、
 新シリーズになると、何事もなかったように三匹がより集って活躍しだすので、
 TV時代劇というのは救いがあるな、としみじみ思ったものです。

 『三匹の侍』も確かビデオ撮影されており、ビデオのシャープな映像が、
 テンポの速いTV時代劇によく合っていたように思います。

 そのため、初期のシリーズの映像は残っていないようですが、
 民放時代劇がこの後もビデオ撮影にチャレンジしていれば、
 TV時代劇のスタイルもまた違った流れができたかもしれません。

 次回は、第7位から第5位までを紹介します。
posted by Dausuke SHIBA at 21:38| Comment(0) | TrackBack(0) | TVドラマ