2020年01月12日

『R.U.R.』古典ロボットSFに若手演出家が臨む(その2)

 若手演出家で劇団「東京娯楽特区」を主宰する広岡凡一氏は、
 私の行政書士繋がりの大先輩の天辰先生が主宰する
 新宿の朗読劇団で活躍し始めた頃から注目しています。

 今回は「単独演出で東京娯楽特区の新作を上演するので見に来てくれ〜」
 ということでしたので、正月明け早々に、
 仙川劇場で行われた最終日(2020年1月6日)の最終公演に出向きました。

 『R.U.R.』の時代的背景とあらすじはこちらを参照して下さい。
http://patent-japan.sblo.jp/article/187026603.html

 舞台全体は、こんな感じです↓
https://www.twugi.com/account/smimal1/tweet/1214467654846574592

《舞台》
 第1幕はR.U.R.社の応接ロビー、第2幕は豪邸の1室、第3幕はR.U.R.社の跡地
 という各幕1場のほぼ室内劇という単純な舞台設定なのですが、
 原作の物語構成の面白さ、ヘレナ役に嵌る主演女優のビジュアル、
 そして広岡凡一氏の巧みな舞台美術によって、
 休憩なしの2時間を飽きることなく見続けることができました。

〔キャスト〕
 ヘレナは、自分の頭で考えているとは到底思えないブルジョアの娘で、
 自分の信念を貫くことで人間を破滅に追いやってしまう、
 かわいいだけが取り柄のお馬鹿女といえますが、こんな役は、
 それなりのビジュアルと演技力がなければできないところ、
 主演女優の佐藤愛里奈さんは嵌り役だったと思います。

 ドミンがヘレナの唇を奪う場面は、えらく時間が長く、
 ドミンはけしからんと、持っていたペットボトルを舞台に投げつけてやろうかと
 思ったほどです。

 終演直後の仙川劇場のロビーで、佐藤愛里奈さん(左)と、
 東京娯楽特区『熱海殺人事件』でヒロインを演じた木下紅葉さん(右)
 のお二人を記念撮影させてもらいました。
GEDV0123.JPG

 ドミンも、ヘレナとは信念が異なりますが、
 融通の利かない信念を振りかざすお坊ちゃんで、女性に対して免疫のない、
 これもまた、顔だけが取り柄のお馬鹿男なのですが、
 主演男優の背の高いイケメンの山田定世さんが嵌り役でした。

 東京娯楽特区は、20代の若手ばかりの劇団で、
 登場人物の多い本舞台のキャストをどう組むのかと心配しておりましたが、
 ベテランの春延朋也さん(アルクイスト役)と神保麻奈さん(乳母のナナ役)が
 有志として駆けつけてくれ、バランスのとれたキャスト構成になりました。

 春延朋也さんが登場されたとき、武田鉄矢かと一瞬驚きましたが、
 映画・TV・舞台で幅広く演じられてきており、
 実は我々にとって必ず目にする空気のような存在の俳優だったのですね。
 → http://www.takaraipro.com/members/harunobe.html

 特に、黒澤明監督の遺作『まあだだよ』に出演されていたとは驚きで、
 私は春延朋也さんを大昔から目にしていたことになります。

〔舞台美術〕
 スクリーンの隅々まで綿密に構成しなければならずコストのかかる映画と異なり、
 舞台はシンプルな道具立てで具体的構成を見立てればよく、言い換えると、
 舞台上の具合的構成は、観劇者がイメージできるように記号化すればよいので、
 美術センスがあれば、貧乏劇団でも低コストで舞台美術は設計できるといえます。

 本舞台では、民藝の大道具担当でならした広岡凡一氏のセンスが面白く、
 室内劇では、3つの大きな金属アーチを配置して出演者が移動しながら、
 あるときは窓、あるときは出入りするためのドア、
 あるときは3つを集めて狭い室内の壁に見立てるという自在さでありました。

 このような感じです↓
https://www.twugi.com/account/colorshonen/tweet/1214772918049050624

 また、第1幕の応接ロビーの受付電話スペースと、ミーティングデスク
 (といっても、大きさと形が異なるただの箱なのですが)を、
 第2幕の豪邸の一室では、乳母のナナがこれらをやおら移動し始めて、
 ヘレナが秘密技術の書かれた書類を燃やす暖炉に組みなおし、
 炎の見立ての照明効果を加えて、舞台の景色が一変したのには驚かされ、
 あまり舞台を見ない私には新鮮で、本舞台の美術演出の最大の見せ場でした。

 その他、役者の演技とうまくタイミングを合わせて使用された
 電話のベル音、ドアのノック音、ロボットからの砲撃の光と音なども、
 物語のリアリティをうまくサポートしていたと思います。

〔シナリオと演出〕
 『R.U.R.』は、「人間とは何か」を、ロボットという虚構を通して、
 観る側に直接問いかけてきており、その問いかけは、後述するように、
 現在の我が国の状況を完全に予言しており、
 SF小説としての原作の構成が全く古さを感じさせません。

 本舞台は休憩なしの2時間を飽きさせなかったのですが、それは、
 原作の物語構成、舞台美術及びキャストに負うところが大きく、
 シナリオ(野月敦氏)と演出(広岡凡一氏)が、
 原作の意義を現代に繋げる独自の視点を提示するところまで練りあげている
 ようには見えませんでした。

 東京娯楽特区は、
 「古典や名作と呼ばれるような既存の戯曲を現代的に上演すること
  を目的としている。
  広岡は自身が演出する場合も含めて舞台美術全般も担当。
  翻訳劇に関しては野月が新訳を作成。
  「今使う言葉で観客に」を基本コンセプトに舞台づくりに取り組む。」
  https://www.tokyogorakutokku.com/
 としているのですから、このコンセプトをもっと掘り下げるべきでしょう。

 ******

 本舞台は、観ているうちに、物語の流れが何となくわかってはくるのですが、
 肝心な点が十分に説明されないので、以下に指摘するように、
 SFならではの仕掛けが印象に残りません。

■登場人物とロボットの描写■
 本舞台では、
 R.U.R.社の幹部の社長・経理・科学者・メンテナンス技術者等のロボット活用論者
 の社会的機能のステレオタイプな類型化(これは原作の狙いでもある)を、
 もっとメリハリをつけて行うことと同時に、
 本舞台でのロボットのイメージをもっと具体的に印象付けることが、
 必要と思うのですが、この点が決定的に欠けています。

 主要登場人物が象徴するステレオタイプな類型化された社会的機能は、
 人間的感情を含まない生産システムを象徴していますから、
 実は、本舞台で描こうとしているロボットとも重なってくるともいえるので、
 重要な要素なのです。

 ステレオタイプな社会的機能とロボットのイメージが明確なほど、
 彼らの間の恋愛感情という最も人間的でステレオタイプ化できない要素により、
 社会的機能とロボットが崩壊してしまう流れの中で、
 人間そのものの姿が浮かび上がるのではないかと思うのです。

 登場人物がメリハリつけて描かれていないため、
 ドミン・ガル博士・アルクイスト以外のR.U.R.社の幹部と
 乳母のナナの存在理由が伝わりません。

 R.U.R.社の幹部の人数をもっと絞り込み、
 狂信的宗教観に染まっているナナなどは、現代に対応するものがないので、
 無理に登場させる必要はなかったのではないか、とも思ってしまいます。

 ******

 第1幕では、幹部達が、R.U.R.社の商品としてのロボットのコンセプトを
 プロジェクターを使用して舞台に画像を映写しながら、
 ヘレナ(と観劇者)にプレゼンし、その中で、各人の信念を語らせ、
 ディスカッションさせるという演出もあったかと思います。
 
 本舞台のロボットは、
 頭にはコンピュータが埋め込まれ骨格は金属で構成されるターミネーター型ではなく、
 生物学的に培養して得られた頭脳・骨格・外観が人間そっくりの生体型
 (iPS細胞で培養された臓器のようで、結構グロテスク)であることを
 印象付けるべきです。


 現代に生きる観劇者にとっては、ロボットといえば、
 ターミネーター型の方に馴染みがあり、何も説明されないと、
 どうしてもターミネーター型を想起してしまい、本舞台の第3幕で、
 ロボットを解剖する場面でロボットが恐怖することがピンとこないからです。

 また、R.U.R.社の商品としてのロボットの、
 「感情と生殖能力はないが外観は人間そっくりで、
  人間の労働を代替できる作業機能のみ備える」という仕様は、
 R.U.R.社の幹部達それぞれの思想・信条が色濃く反映されており、
 ヘレナにとっては許しがたいものである筈なので、
 この辺りは、冒頭のディスカッションで、
 各人の思想・信条とロボット仕様の対応するイメージを鮮明にしておけば、
 これが伏線となって、
 第2幕と第3幕の展開が分かり易かったのではないかと思います。

■人間にとっての「労働」に代わる価値■

 本舞台では、「労働」は、R.U.R.社の社長ドミンによれば、
 人間にとって守るべき価値のあるものではなく、ロボットに代替させて、
 人間は何か別の価値あることをやるべきだということになっています。

 アルクイストも、「労働」することに喜びを見出しており、
 そのことによってロボットによる殺害から免れるわけですが、
 だからといって、彼自身がそう魅力ある人物というわけではありません。

 ヘレナに至っては、人間であること自体に価値を見出しており、
 ロボットが人間並みになると、どのようなよいことがあるのかが、
 定かではありません。

 原作も、どうやら、
 人間にとって「労働」に代わる価値を提示してはいないようです。

 そうなると、この物語は救いのない不条理な最後にならざるをえません。

 何故ならば、第3幕で、ガル博士はヘレナとガル博士(の若い頃)に似せた
 感情と生殖機能を備える疑似人間を創り出してしまうのですが、
 ヘレナやガル博士程度の疑似人間では、
 本舞台で描かれた歴史を繰り返すのは目に見えており、
 疑似人間には、殺し合いと生殖で絶滅と再生を繰り返すという、
 不毛な未来しかないことになるからです。

■ロボット工学の3原則との関係■
 アイザック・アシモフは、ロボットSFのこの不条理な最後を救済すべく、
 「ロボット工学の3原則」を発明しました:
 〔第1原則〕
  ロボットは人間に危害を加えてはならない。
  また何も手を下さずに人間が危害を受けるのを黙視してはならない。
 〔第2原則〕
  ロボットは人間から与えられた命令に従わなくてはならない。
  ただし第1原則に反する命令はその限りではない。
 〔第3原則〕
  ロボットは自らの存在を護らなくてはならない。
  ただしそれは第1、第2原則に反しない場合に限る。
 (『わたしはロボット』(1950)(伊藤哲訳、創元推理文庫、1976年)

 アシモフ以降のロボットSFでは、『鉄腕アトム』も含めて、
 ロボットにはこの原則が適用されていることが前提になっており、
 それにも拘わらず、ロボットが殺人を犯したり反乱を起こしたのは何故か、
 という点がミステリーの最大の読みどころとなっていたりします。

 考えてみると、『R.U.R.』でも、当初の仕様のロボットは、
 感情を持たせず作業機能だけがある、いわば家電製品であり
 人間の制御範囲内で作動することになっているので、
 ロボット工学の3原則が内在しているといえますが、
 ロボットに感情をもたせたため第1原則が機能しなくなったともいえます。

 従って、ガル博士が最後に創作した、
 感情と生殖機能をもつ2体の疑似人間ロボットは安全とは言えず、
 ガル博士は、これらの疑似人間ロボットに対して、
 さらにロボット工学3原則を付与しなければならなかったといえます。

 ******

 しかし、仮にロボット工学3原則を付与しロボットによる危害を回避しつつ、
 労働を作業用ロボットに代替させることができたとしても、
 「人間にとっての「労働」に代わる価値」が何なのかはわからないままです。

 この点をどう考えるかについて、原作誕生から100年後に、
 本舞台を創作する若い脚本家・演出家には検討して欲しいところです。

 アイザック・アシモフは、ここがこの人の偉大なところですが、
 「人間にとっての「労働」に代わる価値」が何なのかについて、
 一つの回答を出しています。

 それは、ロボット工学3原則に拘束されるロボットが、
 次第に人間になりたいという意思をもち、立派な政治家になり、
 人間と恋愛して結婚してセックスをし幸福を得、
 遂には死を望み安らかに死んでいく、突然変異ロボットの物語
 『アンドリューNDR114』(1992)(創元SF文庫、中村融訳)
 に書かれていますので、ご一読されることをお奨めします。

《野暮な話》
 最後に、少し野暮な話をしてみます。

 『R.U.R.』は、感情と生殖機能がない人間そっくりのロボットを、
 人間の労働を代替する作業用ロボットとして普及させたら、
 人間は生殖能力が低下するまでに退化してしまった社会ができあがり、
 ある時、ロボット製造工場の不手際から、
 感情を持ったロボットが製造され普及しだしたところ、
 感情を持ったロボットは人間を支配するようになり、
 労働機能を失った人間を殺戮するに至ったという戯曲です。

 この100年前に創作された戯曲の舞台を、このたび、
 広岡凡一氏の演出で楽しませていただいたのですが、
 今となっては原作の定型的ともいえる物語が、
 現代の我が国の状況を予言してしまっているような気がします。

 現代の我が国の状況を図式的に説明してみると、2000年以降から、
 投資家に利益が還流することだけを目的にした、
 人間的要素のない単純なシステムである新自由主義経済が世界に普及、
 生産性の低い人間は安く使うとして、非正規雇用が拡大し、
 生産労働人口層の賃金を徹底的に下げ続けた結果、

 生産労働人口層の結婚と育児を成立させるための経済基盤が失われ、
 生産労働人口層の出生率が、人口全体が減るほでまでに低下し、
 年金制度の崩壊が加速し、
 高齢人口層は生きていること自体が否定されつつある一方で、

 TPP・FTA(特に食・公共インフラの民営化)により、
 日本人は今後、生存に不可欠な食の質が低下し、
 長期的に健康が損なわれるという大きなリスクがあり、

 なにも変なロボットを普及させなくても、
 日本人全体が真綿で首を絞められるがごとく死に絶えていく過程にある
 と言っても過言ではないように思います。

 「桜を見る会」「モリカケ」「TPP・FTA(特に食・公共インフラ民営化の問題)」
 「年金」「防衛」「労働環境」「公教育」「研究費削減」「統計不正」
 「政権のメディア管理」など、ありとあらゆる分野で、
 政権中枢にある官僚の質が目も当てられないほどに低下し、
 多くの日本人が思考停止してしまっている状況は、

 『R.U.R.』の舞台上で繰り広げられる、信念に基づくとして
 何の疑問もなく危険なロボットを製造する思考停止した人間と、
 無用な人間を躊躇なく殺戮していまうロボットでできた世界の、
 直接的な延長線上にあるとしか思えません。

 野暮を承知で言っておこうと思いますが、
 現代を生きる若い舞台の創作者たちには、こういった身も蓋もない現実にも、
 アンテナを張って、原作の現代的な意義を考えて欲しいと思っています。
posted by Dausuke SHIBA at 17:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台・ライブ

『R.U.R.』古典ロボットSFに若手演出家が臨む(その1)

 若手演出家で劇団「東京娯楽特区」を主宰する広岡凡一氏は、
 私の行政書士繋がりの大先輩の天辰先生が主宰する
 新宿の朗読劇団で活躍し始めた頃から注目しています。

 これまで、朗読劇団での公演において、
 『朗読劇 こころ』(2017)では女優として、
http://patent-japan.sblo.jp/article/178853282.html
 『朗読劇 三四郎』(2019)では男優として、
http://patent-japan.sblo.jp/article/186994352.html
 変幻自在の演技者として楽しませていただきました。

 さらに、広岡凡一氏には、本職のプロの劇団スタッフとして、
 劇団民藝の『ペーパームーン』では大道具担当として、
http://patent-japan.sblo.jp/article/183628250.html
 東京娯楽特区の『熱海殺人事件』では共同演出家として、
http://patent-japan.sblo.jp/article/186367542.html
 取り組まれた舞台を楽しませていただきました。

 今回は「単独演出で新作を上演するので見に来てくれ〜」ということでしたので、
 正月明け早々に、こんなマイナーな古典SFで客が入るのだろうか、
 と心配しつつ、仙川劇場で行われた最終日(2020年1月6日)の最終公演に出向きました
 (心配ご無用の上々の入りで、安心しました)。

 概要は、東京娯楽特区の案内を引用しましたので、御覧ください。
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《仙川劇場》
 仙川劇場は、4年前(2016年4月10日)、
 上述の『朗読劇 こころ』で主演したプロパフォーマーの関井さんが
 振付担当をした『北の大地の詩』を観に行ったことがあり、
 当時暇であったせいもあり、仙川劇場の周辺の写真を掲載したブログ記事を
 のんびりと書いておりました。
http://patent-japan.sblo.jp/article/175020036.html
http://patent-japan.sblo.jp/article/175028755.html

 前回は春の昼下りに行ったせいもあり、新宿から京王線で30分足らにしては、
 何もないところだと思ったのですが、
 今回は冬の夜だったので、景色が一変しており、
 街灯やイルミネーションに照らし出されたショッピングエリアが、
 とてもおしゃれであることがわかりました。
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 仙川劇場も、昼みるとコンクリート打ちっ放しの殺風景な外観が
 見違えるような光と影のデザインになっておりました。
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《『R.U.R.』とロボットSF》

 今から半世紀以上前のTVアニメーションの黎明期(1960年代後半)には、
 手塚治虫原作の『鉄腕アトム』、横山光輝原作の『鉄人28号』がアニメ化され、
 我国の現代SFの楚を築いた筒井康隆世代のSF作家がシナリオに取り組み、
 ロボットSFを含む質の高いSFアニメ作品が数多く制作され、
 この頃に子供時代を過ごした私には、SFは身近な存在であり続けています。

 その後、1969年に、今は亡きテアトル東京のシネラマ大画面で、
 スタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』(1968)を見て、
 腰を抜かさんばかりの衝撃を受けたのが本格SFの洗礼だったといえます。

 その頃から、SF小説を読むようになり、
 『2001年宇宙の旅』の原作者であるアーサー・C・クラークの
 『幼年期の終り』(1953)『都市と星』(1956)では、米国SFのスケール感に圧倒され、
 アイザック・アシモフのロボット工学3原則で行動するロボットSF(1950〜1985)の
 ミステリーとしての面白さに嵌ると、そこから過去に遡り、
 子供の頃からの身近な存在だった『鉄腕アトム』『鉄人28号』が、
 実は非常に優れたロボットSFであることを再認識したものでした。

 そして、さらに過去にさかのぼると、ロボットSFの原点として、
 小説では『R.U.R.』(1920)に、映画では『メトロポリス』(1927)に行き着くことを、
 教養としては知っていたのですが、さすがに古色蒼然としすぎているだろうと、
 読んだり見たりしないまま、現在に至ってしまいました。

 そこに、広岡凡一氏が、この古色蒼然としたロボットSFを上演するということで、
 何かの巡り合わせとしかいいようがない絶好の機会が訪れたため、
 生きてるうちに見れるだけでも御の字ということで仙川劇場に足を運んだ次第です。

《あらすじ》

 ロボットSFの古典という以上の内容的な予備知識は何もなしに観たのですが、
 今回観たままのあらすじをまとめると以下のようになります。

■第1幕■
〔舞台〕
 地中海の孤島に拠点を置く、ロボットを量産して世界に販売する
 R.U.R.(Rossum's Universal Robots)社の応接ロビー。
〔設定〕
 R.U.R.社の製造するロボットは、感情と生殖能力はないが外観は人間そっくりで、
 世界中で、人間の労働を代替する作業用ロボットとして使われだしている。

 孤島には、1週間に1度停泊する船便があり、この船便で、
 R.U.R.社とロボットに興味をもつ欧州大陸からの訪問者が後を絶たない。
〔物語〕
 ある日、R.U.R.社のオーナーの一人娘のヘレナが船便でR.U.R.社を訪れる。

 ヘレナは、人間と区別のつかないロボットに人権を認めるべきという強い信念をもち、
 R.U.R.社におけるロボットの製造実態を調査しにきた。

 しかし、ヘレナを案内したR.U.R.社の社長ドミンは、
 今のロボットの仕様だからこそ人間を労働から解放できるという強い信念をもち、
 ヘレナの信念と全く相いれない。

 R.U.R.社には、社長のドミンの他に、経理担当のブスマン、研究担当のガル博士、
 工場メンテナンス担当のアルクイストを含む6人の男の幹部がいたが、
 ロボット製造工場と研究所しかない男ばかりの殺風景なR.U.R.社に、
 忽然と現れた若く美しいヘレナに、皆が魅入った。

 中でも、社長のドミンは、強引にヘレナの唇を奪いプロポーズし、
 ヘレナも抵抗できず、そのまま二人は結婚する。

■第2幕■
〔舞台〕
 10年後のR.U.R.社に隣接するドミンとヘレナが生活する豪邸の1室。
〔設定〕
 この10年間で、世界中で人間の労働作業はほぼロボットが代替する一方で、
 人間の生殖機能が低下したため、出生率が大きく低下する事態になっていた。
〔物語〕
 自ら労働することに喜びを見出す工場メンテナンス担当のアルクイストと、
 宗教的信念から、狂信的にロボットを否定するヘレナの乳母のナナは、
 この人間の情けない事態を嘆いた。 

 ヘレナは、ドミンを愛してはいたが、ロボットに対する自己の信念は変わらず、
 ドミンとの信念と相いれないことと、子供ができないことに苦しめられていた。

 信念を貫こうとするヘレンは、ヘレンを愛し続けるガル博士をそそのかして、
 ガル博士に、人間的感情を植え付けたロボットを量産させる。

 世界で販売されだした人間的感情を持ったロボットは人間を支配するようになる。

 この事態に気が付いたドミンとガル博士は、ロボットが自己増殖しないように、
 ロボットに生殖機能を付与する秘密技術を厳重に管理した
 (自己増殖できないロボットはいつか老朽化して寿命が尽きて絶滅するため、
  人間にとっての最後の安全装置となる)。

 一方で、ロボットの人間に対する支配志向は留まるところを知らず、ついには、
 労働生産能力のない人間は不要であるとして殺害をし始め、世界は騒然となる。

 その最中、子供ができないことがロボットの存在によると考え出したヘレナは、
 厳重に管理された秘密技術を盗み出し廃棄してしまう。

 人間を殺害し始めたロボットは、さらに自己増殖機能をも手中にするため、
 船便を占拠して、R.U.R.社がある孤島に上陸し、R.U.R.社の従業員達を殺害し、
 R.U.R.社の幹部が最後に逃げ込んだドミンとヘレナの豪邸を包囲する。

 ヘレナと幹部達が醜いのの知り合いをする中、
 ロボットは、最後には、彼らをも皆殺しにしようとするが、
 労働するすることを苦にしないアルクイストだけは生かしておく。 

■第3幕■

〔舞台〕
 ロボット市民が占拠したR.U.R.社の跡地。
〔物語〕
 ロボット市民は、生殖機能を付与する秘密技術が見つからないため、
 迫りくる自らの絶滅に怯え、ただ一人生存する人間であるアルクイストに、
 秘密技術を開発させようとするが、ロボット技術を知らない彼にはそれができない。

 絶望感に包まれたロボット市民の中で悄然とするアルクイストは、ある日、
 孤島の森の中で、
 ヘレナに瓜二つの女型ロボットと、女型ロボットに寄り添う男型ロボットに出会う。

 2体のロボットは、ガル博士が殺される前に製造した、
 愛するヘレナに似せて製造した女型と、生殖機能を補完する男型だった。

 アルクイストは、2体のロボットの存在に一縷の救いを見出す。

******

 次回は、この舞台について考えたことをまとめます。
posted by Dausuke SHIBA at 16:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台・ライブ

2020年01月04日

『朗読劇ミュージカル 三四郎』新宿より漱石に愛を込めて2(その4:第2幕〜第4幕)

 夏目漱石生誕150年を前にした2017年2月19日に、
 新宿区戸塚地域センターで公演された『朗読劇 こころ』に続き、
 劇団天辰の朗読劇公演第2弾『朗読劇 三四郎』が下記日程で行われました。

 ■日時:2019年12月8日(日)午後2時〜4時
 ■会場:漱石山房記念会館 地下1階講座室
 
 前回までに、
 ⓪当日の10日前の漱石山房記念会館でのリハーサル風景、
 @当日の、柴特許事務所から漱石山房会館までの街の風景、
 A当日の、開場前の緊張した直前練習の風景、そして、
 B開幕から第1幕までをお届けしました。

 ⓪『朗読劇ミュージカル 三四郎』新宿より漱石に愛を込めて2(予告編)
http://patent-japan.sblo.jp/article/186866016.html
 @『朗読劇ミュージカル 三四郎』新宿より漱石に愛を込めて2(その1:漱石山房記念館まで)
http://patent-japan.sblo.jp/article/186920696.html
 A『朗読劇ミュージカル 三四郎』新宿より漱石に愛を込めて2(その2:緊張の開場直前)
http://patent-japan.sblo.jp/article/186989837.html
 B『朗読劇ミュージカル 三四郎』新宿より漱石に愛を込めて2(その3:開幕から第1幕)
http://patent-japan.sblo.jp/article/186990151.html

■本朗読劇の幕場は以下の通りです。
 《第1幕 上京》
  第1場 上野のお花見
  第2場 貴社の中の三四郎
  第3場 名古屋の宿
  第4場 東京に向かう東海道線の車中
 《第2幕 東京帝国大学(赤門)》
  第1場 池の二人の若い女
  第2場 リボン
 《第3幕 新学期》
  第1場 佐々木与次郎
  第2場 広田先生の家
  第3場 仲良くお掃除
 《第4幕 団子坂・菊人形》

 今回は、第2幕から最終の第4幕までをご紹介します。

******

《第2幕第1場・第2場》
 
■三四郎は、東京帝大理科大学の研究室に、
 地元の知り合いの従弟である野々宮を訪ねて、
 東京生活についていろいろとアドバイスを受け、望遠鏡談義に興じる。
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 三四郎を演じる松澤君は、法学部大学院の24歳の学生さんで、
 『朗読劇 こころ』でも重要な脇役を演じましたが、
 今回は主役に抜擢されました。

 顔は明治の二枚目で、声もよく通り、はまり役なのですが、
 背が高すぎて、当初の下駄履きの予定が、草履でも違和感なしとなりました。

 野々宮を演じる野口君は、劇団「東京娯楽特区」で演出の広岡さんにしごかれている
 20歳の学生さんですが、舞台に立って、髭を生やした野々宮になった途端、
 目力のある迫力のある演技をしていました。

■三四郎は、野々宮の研究室を出た後、東京帝大工科大学の近くの池端で、
 看護婦と散歩する美禰子を見ることになる。
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 美禰子を演じる土田さんは、元々モデルさんで現在はミュージカル女優
 ・少し前の彼女→https://ameblo.jp/wkn829nkw/
 (天辰座長・松澤君とはこの頃からのおつきあいなのですね)
 ・今はTwitterが拠点です→https://twitter.com/2wkn_nkw9?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor

 美禰子役はこのくらい花のある女優でないと成立しないのですが、
 天辰座長はとっておきの隠し玉の美女を用意していたのですね。

 看護婦を演じた飯長さんは、人形衣装作家(https://wearme.exblog.jp/30117848/
 で、お芝居の活動もされているとのことです。

■三四郎は、再び野々宮と合流して、池の景色と雲談義に興じる。
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■しかし、三四郎の頭の中は美禰子のことばかり。
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《休憩》
 
■来場された方々の平均年齢が高めなので、天辰座長が、
 ここで、ストレッチ体操をしましょうと呼びかけ、全員で体を動かすことに。
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《第3幕第1場・第2場・第3場》
 
■三四郎は、新学期が始まった東京帝大法科大学に出席して、
 原作では最後まで友としてつきあうことになる与次郎と出会う。
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 与次郎を演じた広岡悠那さんは、
 『朗読劇 こころ』でのオーバーアクションが注目された演技派で、
 今回は念願の男役ができると、気合が入っておりました。

 広岡さんは、またの名を広岡凡一、劇団「東京娯楽特区」の主催でもあり、
 2020年1月5・6日には、初めての単独演出となる、
 カレル・チャペックのロボットSFの古典『R.U.R』が公演されます
 → https://www.tokyogorakutokku.com/blank-4

■三四郎は、与次郎の紹介で、英語講師の広田先生と会うことに。
 三四郎が、広田先生の自宅に訪ねると、
 広田先生が東海道線で乗り合わせた怪しい男であることがわかり、
 再び哲学問答に付き合わされることに。
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 広田先生を演じる伊藤博之さんは、芝居・踊り・女装バレエ・・・と多彩な趣味で、
 明治の怪しいインテリにぴったり嵌ります。

■三四郎と与次郎は、広田先生の自宅を掃除する羽目になるが、
 そこに、やはり掃除の手伝いに駆り出された美禰子と会うことに。
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《第4幕》

■広田先生・野々宮・三四郎・美禰子は、
 文京千駄木の団子坂の菊人形を見に行くが、見物の群衆の中で、
 三四郎と美禰子は、広田先生らとはぐれてしまい、
 静かな広場の石橋の近くで、二人だけのデートをすることに。
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 雲談義に花を咲かせながら、ぬかるみの飛石伝いに歩く二人だが、
 美禰子は、飛石に足を取られそうになり、
 先を行く三四郎が手を差し伸べているその懐に飛び込んでしまう。
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■三四郎の腕の中に抱かれた美禰子が「ストレイシープ・・・」と呟いたところで、
 前編の了となります。

■原作では、まだ前半の段階で、
 三四郎は、これから美禰子に本格的に翻弄されるのですが、
 三四郎が新しい世界でさらなる人生の波に揺さぶられであろう予感の中で
 終わらせるのも余韻が残りとても良いと思います。

■最後の出演者全員による御挨拶と、振付の尾上先生のご挨拶。
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■出演者と観劇された方のTwitterも紹介します。
 榎本舞咲さん→https://twitter.com/mayanikoniko/status/1207226451495280640
 土田若菜さん→https://twitter.com/2wkn_nkw9/status/1203835304852873216
 観劇者の方
  →https://twitter.com/kurochanf/status/1203685955225280513/photo/1

《半世紀ぶりの『三四郎』》

 天辰座長との腐れ縁で、前回の『朗読劇 こころ』に続いて、
 今回の『朗読劇 三四郎』
 (ブログ上は『朗読劇ミュージカル 三四郎』にさせていただきました)
 を、勝手気ままにブログ記事とさせていただきました。

 天辰座長と出演者の皆様には深く感謝申し上げます。

 夏目漱石の小説は、もう半世紀近く前になりますが、
 私が高校・浪人の頃に、いまだに未読の『明暗』以外を読んでおり、
 何と言っても現代国語の試験勉強が楽だったことを思い出しました。

 また、半世紀ぶりに、朗読劇として声を通して接すると、
 夏目漱石の小説を最初に読んだときの印象がまざまざと蘇るだけでなく、
 その蘇った部分をみると、改めて、
 夏目漱石の小説に見た私の心情がわかるような気がします。

******

 私は、夏目漱石の小説は好きですが、中でも、
 前期三部作『三四郎』『それから』『門』が好きで、
 後期三部作『彼岸過迄』『行人』『こころ』よりも強く印象に残っています。

 前期三部作までの夏目漱石の小説は、、
 小説と時事評論がないまぜになったエッセイに近かったり、
 社会風刺の色彩が強い群像劇であったり、
 『虞美人草』では現代にも通じる強烈な個性の女性を登場させたりと、
 小説の可能性を色々と試行錯誤して習作として腕を磨いていた、
 というようにも思えます。

 その準備の上で前期三部作が開始され、その第1作の『三四郎』が、
 田舎から上京した若い大学生の瑞々しい青春小説だったことが、
 ちょうど同年代で読んだ私の心を直接響かせることになりました。

 三四郎の心理が、色彩感覚(それもフランス映画のような原色感覚)
 溢れる言葉の連なりと、魅力的な女性像の上で描写されており、
 小説として非常に洗練されていると思います。

 前記三部作の『それから』『門』にも、
 この色彩感覚溢れる瑞々しい描写が十分に残されていると思うのです。

 『それから』のラストの万華鏡のような色彩描写は本当に美しく、
 いまだに強烈に印象に残っています。

 前記三部作は、
 精神的に若く、ストレイシープ状態が続く若きインテリを主人公にしており、
 三四郎は独身なので当然ですが、
 代助と宗助は不倫相手と同棲しているわけですから、
 女性がミステリアスな恋愛の対象として憧憬する要素が大きく、
 三四郎・代助・宗助から見た女性たちが魅力的なのは必然ともいえます。

 後期三部作になると、手紙を多用する物語の構成がパターン化して、
 重要な心理描写が手紙を通して描写され、夫婦間には互いを憧憬する要素がなく、
 前記三部作にあるような色彩感覚と瑞々しさは失われているように思います。

******

 私が夏目漱石を集中的に読んでいた同じ時期に夢中になった
 黒澤明監督の映画や、村上春樹の小説にも同じような感じをもちますが、
 この話をしだすと長くなりますので、また別の機会に。
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2020年01月03日

『朗読劇ミュージカル 三四郎』新宿より漱石に愛を込めて2(その3:開幕から第1幕)

 夏目漱石生誕150年を前にした2017年2月19日に、
 新宿区戸塚地域センターで公演された『朗読劇 こころ』に続き、
 劇団天辰の朗読劇公演第2弾『朗読劇 三四郎』が下記日程で行われました。

 ■日時:2019年12月8日(日)午後2時〜4時
 ■会場:漱石山房記念会館 地下1階講座室
 
 前回までに、
 ⓪当日の10日前の漱石山房記念会館でのリハーサル風景、
 @当日の、柴特許事務所から漱石山房会館までの街の風景、そして、
 A当日の、開場前の緊張した直前練習の風景をお届けしました。

 ⓪『朗読劇ミュージカル 三四郎』新宿より漱石に愛を込めて2(予告編)
http://patent-japan.sblo.jp/article/186866016.html
 @『朗読劇ミュージカル 三四郎』新宿より漱石に愛を込めて2(その1:漱石山房記念館まで)http://patent-japan.sblo.jp/article/186920696.html
 A『朗読劇ミュージカル 三四郎』新宿より漱石に愛を込めて2(その2:緊張の開場直前)
http://patent-japan.sblo.jp/article/186989837.html

 今回は、開幕から第1幕までをご紹介します。
 写真はクリックすると鮮明に見ることができます。

******

■会場は、用意した約50席がほぼ満席となり、天辰座長の挨拶から始まりました。
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■本朗読劇の幕場は以下の通りです。
 《第1幕 上京》
  第1場 上野のお花見
  第2場 貴社の中の三四郎
  第3場 名古屋の宿
  第4場 東京に向かう東海道線の車中
 《第2幕 東京帝国大学(赤門)》
  第1場 池の二人の若い女
  第2場 リボン
 《第3幕 新学期》
  第1場 佐々木与次郎
  第2場 広田先生の家
  第3場 仲良くお掃除
 《第4幕 団子坂・菊人形》

 天辰座長によると、当時の新学期は9月だったところを、
 本朗読劇では、時代考証に優先して、
 開幕の「さくら」にちなんだ歌と踊りを生かすために、
 新学期を4月にしたとのことでした
 (天辰座長が使用したの直筆メモが書かれたシナリオです)
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■劇団天辰の朗読劇は、ミュージカルの場面が随所に散りばめられるのですが
 残念ながら動画と音を再現できないので、配布された劇中歌集で、
 雰囲気を感じ取ってみて下さい。
劇中歌.jpg

《開幕》

■開幕の歌と踊り「さくらさくら」です。
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■会場も一緒に歌います。伴奏は天辰座長の軽やかなウクレレ演奏です。
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■主役二人の和風デュオを遠目に。
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■助演は会場サイドで桜の見立てで。
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《第1幕第1場》


■天辰座長の一家が上野で花見をするところから始まります。
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■数年前に『朗読劇 こころ』を上演した天辰一家が花見するという設定で、
 天辰座長が父、豊永さんが妻、榎本さんが娘のはずなのですが、
 豊永さんが思い切り若作りするし、榎本さんは元々若いし、
 天辰座長がお祖父さんでちょうどよいくらいになってしまいましたが、
 気にせずに堂々と演じています。
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《第1幕第2場》

■花見をしながら、父が手に持った文庫本『三四郎』の話を娘にしだすと、
 早乙女さんのナレーションにより、
 場面は、明治時代の東海道線の車中の三四郎に繋がります。
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■ここで、また合唱です。
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■車中での、謎の女と男の会話。
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《第1幕第3場》

■名古屋で宿泊するために下車した三四郎は、宿を探す謎の女と同行することに。
 宿では、下女(飯長さんの二役)が男女の連れと思い込み、二人を案内する。
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■三四郎と謎の女は、女中が蚊帳の中に敷いた床を共にすることになるが・・・
1-3GEDV0106.JPG

 謎の女を演じた古梅志穂さんは、本朗読劇の助演女優賞です。

 原作では謎の女の外観・声・話し方の描写はほとんど全くなく、
 読者が想像するしかないのですが、古梅さんは、
 何とも言えないムンムンとした色気がにじみ出てくる
 年増の玄人風の女を声の演技だけで表現しており、悩殺されました
 (24歳でこれでは、この先、おじさんキラー確実です)。

 ******

 観劇している間は全く気がつきませんでしたが、念のため講釈を。

 この蚊帳の場面は当然に季節は夏の終わりであり、三四郎は東京に着いた後、
 9月に新学期に東京帝大に入学することになります。

 原作はその通りなのですが、本朗読劇では、新学期を4月に設定変更したので、
 春先に蚊帳を張ることになってしまうので、少し倒錯します。

 まだ寒さが残る春先の宿の1室に、二人連れの男女のために、
 厚手の布団が1つ敷いてあるという設定にしたら、
 この場の生々しい色っぽさがますます過激になってしまったかもしれませんが。

《第1幕第4場》

 何とか何事もなく一泊した名古屋から、三四郎は再び東海道線に乗りますが、
 そこで、怪しい男と乗り合わせ、延々と哲学問答に突き合わされ、
 東京に来たことを実感します。
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******

 三四郎が、福岡から電車を乗り継いて東京に到着するまでは、
 原作ではわずか20頁足らずなのですが、
 田舎者の三四郎が新しい世界に接触した際の新鮮な驚きが、
 ロードムービー的なエピソードの連なりで簡潔に的確に描写されます。

 夏目漱石はやはり小説が上手い!

 天辰座長も、このロードムービー的エピソードをとても丁寧に演出しており、
 原作の意図をきちんと読み取っています
 (天辰座長が演出に気をとられ、担当した駅員の声とかの背景音が、
  なかなか出て来なくて、出演者が焦る中、
  会場全体がなんとも言えない静寂に包まれたのはご愛敬でしたが)。

 次回は、三四郎が、東京帝大に行って、おかしな人たちと知り合い、
 そして、運命の美禰子と出会う第2〜4幕をご紹介します。

 



 
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『朗読劇ミュージカル 三四郎』新宿より漱石に愛を込めて2(その2:緊張の開場直前)

 夏目漱石生誕150年を前にした2017年2月19日に、
 新宿区戸塚地域センターで公演された『朗読劇 こころ』に続き、
 劇団天辰の朗読劇公演第2弾『朗読劇 三四郎』が下記日程で行われました。

 ■日時:2019年12月8日(日)午後2時〜4時
 ■会場:漱石山房記念会館 地下1階講座室
 
 前回までに、
 当日の10日前の漱石山房記念会館でのリハーサル風景と、
 当日の、柴特許事務所から漱石山房会館までの街の風景を
 描写してみました↓
 『朗読劇ミュージカル 三四郎』新宿より漱石に愛を込めて2(予告編)
http://patent-japan.sblo.jp/article/186866016.html
 『朗読劇ミュージカル 三四郎』新宿より漱石に愛を込めて2(その1:漱石山房記念館まで)http://patent-japan.sblo.jp/article/186920696.html

 今回は、当日の開場前の緊張した開場直前の練習風景をお届けします
 (画像は、クリックすると鮮明にみることができます)。

******

■開場前のロビーでは、来場者が集まりだしています。
@開場前のロビー.JPG

■場内では、直前練習が始まっています。
A直前練習の場内.JPG

■緊張した面持ちの出演メンバー
B緊張した面持ち.JPG

C緊張した面持ち.JPG

D緊張した面持ち.JPG

●広田先生役の伊藤博之さんは、既に舞台衣装で気合十分ですが、
 セリフの覚えが・・・(若い広岡さんにコーチを受けています)。
●左から3人目は野々宮役の野口玲二君、右端は看護婦役の飯長有沙子さん
E緊張した面持ち.JPG

■天辰座長の最終確認です。
F緊張した面持ち.JPG

G天辰座長の最終確認.JPG
●左から(括弧内は尾上先生以外は役名)、
 天辰座長(座長)・広岡悠那(与次郎)・山口玲二(野々宮)・飯長有沙子(看護婦)
 古梅志穂(宿屋の女)・松澤拓也(三四郎)・土田若菜(美禰子)・榎本舞咲(座長の娘)
 山崎裕一郎(色々な男)・伊藤博之(広田先生)/尾上傑(振付)
●なお、榎本さんは、天辰座長の実の娘ではなく、
 劇中の天辰座長家族の長女役ということです。 

H天辰座長の最終確認.JPG

■いよいよ、舞台衣装に着替えて、皆(より)美しくなりました。

●美禰子役の土田若菜さん(中央)と宿屋の女役の古梅志穂さん(右)
I舞台衣装をまとって美しく.JPG

●座長の妻役の豊永實千代さん
J舞台衣装をまとって美しく.JPG

●ナレーションの早乙女とみえさん
K舞台衣装をまとって美しく.JPG

●与次郎役の広岡悠那さん(中央前)と振付の尾上傑先生(中央右奥)。
 広岡さんとすれ違ったロビーの来場者が「あれ!? 女の子だったの?」
L舞台衣装をまとって美しく.JPG

■そして、会場が次第にお客様で埋まりだしました。
Mお客様が入場しだしました.JPG

 次回は、開幕から第1幕までをお届けします。
posted by Dausuke SHIBA at 09:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台・ライブ

2019年12月15日

『朗読劇ミュージカル 三四郎』新宿より漱石に愛を込めて2(その1:漱石山房記念館まで)

 新宿を拠点に活動する劇団天辰(夏目漱石"こころ"の会他)は、
 夏目漱石生誕150年を前にした2017年2月19日に、
 新宿区戸塚地域センターで『朗読劇 こころ』を公演したのに続き、
 朗読劇公演第2弾『朗読劇 三四郎』を下記日程で行いました。

 ■日時:2019年12月8日(日)午後2時〜4時
 ■会場:漱石山房記念館 地下1階講座室

《漱石山房記念館》
 夏目漱石は、生まれてしばらくと晩年を新宿で過ごしたことがあまり知られておらず、
 かくいう私も、このあたりに済むまで、
 名前だけは知っていた夏目坂や漱石山房が新宿にあることを知りませんでした。

 会場となった漱石山房記念館は、
 漱石山房跡地にあった旧記念施設の老朽化もあり、
 漱石生誕150周年を前に、天辰座長を含む文化人有志の寄付と新宿区の尽力で、
 2017年9月に開館しました。

 最寄りの駅は大江戸線「牛込柳町駅」と東京メトロ東西線「早稲田駅」で、
 どちらもゆっくり歩いて10分余りで辿り着きます。
 詳細はこちらで → https://soseki-museum.jp/about-us/

《柴特許事務所から歩いて漱石山房記念館へ》
 柴特許事務所は、新宿線曙橋駅から外苑東通りに出て、
 早稲田方向に歩いて歩いて7分ほどですが、
http://patent-japan.sblo.jp/article/181030625.html
 さらに、外苑東通り沿いに歩いて10分で漱石山房記念会館に辿り着きます。

 そこで、柴特許事務所から漱石山房記念館までを歩いてみることにしました。

 なお、写真はクリックすると鮮明に見ることができます。

============
 柴特許事務所の入っている市ヶ谷薬王寺ビル(左側のベージュ色のビル)と
 当ビルの外苑東通りに出るエントランスです。
 右手奥に向けて外苑東通りが走っていますが、道路の拡幅工事が10年ほど続き、
 オリンピック開幕までには、歩道も車道もピカピカになるといいのですが。
01市谷薬王寺ビル.JPG

02市谷薬王寺ビルエントランス.JPG

 近くには、防衛省の巨大なレーダー鉄塔を背景にした緑生い茂る公演と
 やや遠景ですが、DNP(大日本印刷)の巨大な本社ビルが聳えています。
03防衛省を背景にした公園.JPG
04遠景のDNP.JPG

 歩道に沿って歩いて1分のところに、
 今年できた農協が経営するケーキの店「TAMAGO COCCO」があります。
https://www.facebook.com/tamago.cocco/
05TAMAGO COCCO.JPG
 柴特許事務所にお立ち寄りの際は、ここでケーキをお求めいただき、
 事務所で御一緒に食するというのも有意義かと思います。

 さらに、外苑東通り沿いを歩くと、
 左右に走る大久保通りと交差する市谷柳町交差点に出ます。
06牛込柳町交差点.JPG

 市谷柳町交差点を渡ってさらに直進すると、歩道の工事区域がさらに伸びて、
 もういつ(私が生きている間に)工事が終わるのかもわからない状態になります。
 なお、右端が道幅が狭くなった外苑東通りです。
07歩道工事区域1.JPG

 工事中の歩道のさらにまっすぐ先に白い楕円筒形のビルが見えてきます。
08歩道工事区域2.JPG
09歩道完成予想図.JPG
 この辺りは、将来はこうなる予定のようですが、いつのことなのでしょうか。
 
 楕円筒形のビルに近づくと、外装がなかなか凝った意匠であることがわかります。
10草間彌生美術館.JPG

 このビルは、世界的に有名な現代美術家の草間弥生さんの作品を所蔵した
 「草間弥生美術館」であったりします。
https://geibutsu.tokyo/art/yayoi-kusama-museum/
11草間弥生美術館入り口.JPG

 この日は、朝から、外国人観光客が並んでいました。

============
 さらにもう少し外苑東通り沿いに歩くと、ようやく、
 漱石山房記念館の案内板が目に入るので、案内矢印に沿って左に曲がります。
12漱石山房記念館案内.JPG
 左に曲がってまっすぐ2分ほど歩くと、漱石山房記念館が見えてきます。
13漱石山房記念館に向かい道.JPG

 夏目漱石の胸像が出迎えてくれた隣に、瀟洒な漱石山房記念館が佇んでいます。
14漱石山房記念館.JPG

 夏目漱石の胸像ですが、つい拝んでしまいそうになります。
15夏目井漱石胸像.JPG

 胸像の左から、漱石山房記念館の裏庭に入ることができます。
16漱石山房記念館裏庭.JPG

 かつての漱石山房の説明板です。
17漱石山房記念館裏庭案内.JPG

 裏庭の奥には、漱石や漱石山房に関するパネルが展示される「道草庵」があります。
18道草庵.JPG

 ここには猫の墓とか、いろいろあったりします。
19漱石山房記念館裏庭案内.JPG

 猫の墓です。
20猫の墓.JPG

 裏庭から見た漱石山房記念館です。
21漱石山房記念館裏庭.JPG

 そして、表に回って玄関まで歩いていたら、
 朗読劇の出演者の榎本舞咲さんとばったり。ポーズをとってくれました。
22榎本さん.JPG

 柴特許事務所から歩くこと10分で、漱石山房記念会館の玄関に辿り着きました。
23漱石山房記念館入口前通り.JPG

24漱石山房記念館表札.JPG

25漱石山房記念館入口.JPG

 会館内は、著作物が映り込むと撮影した写真をブログに掲載できないとのことなので、
 漱石山房記念館のホームページでお楽しみ下さい。
https://soseki-museum.jp/exhibition-room/

 それでは、いよいよ、朗読劇の開場前の劇団天辰の緊張した現場に向かいます。
posted by Dausuke SHIBA at 09:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台・ライブ

2019年11月30日

『朗読劇ミュージカル 三四郎』新宿より漱石に愛を込めて2(予告編)

 夏目漱石生誕150年を前にした2017年2月19日に、
 新宿区戸塚地域センターで公演された『朗読劇 こころ』に続く、
 劇団天辰の朗読劇公演第2弾『朗読劇 三四郎』が下記日程で行われます。

 ■日時:2019年12月8日(日)午後2時〜4時
 ■会場:漱石山房記念会館 地下1階講座室
 ■アクセス:https://soseki-museum.jp/user-guide/access/
 ■出演:松澤拓也(三四郎) 土田若菜(美禰子) 与次郎(広岡悠那)他
 ■語り:早乙女とみえ
 ■振付:尾上傑
 ■演出・演奏:天辰哲也
 ■後援:新宿区
 ■入場無料
  当日は、50席しかないので、
  早いもの勝ちで座席を確保されることをお奨めします。

 詳細はこちらをご覧ください↓
https://soseki-museum.jp/soseki-events/se_recitation/4508/

============
 天辰座長とは、行政書士会繋がりのご縁で、
 『朗読劇 こころ』で公演ドキュメントをまとめたのですが、
 今回も公演ドキュメントを勝手に作成することになりました。
  『朗読劇 こころ』新宿より漱石に愛を込めて(その1)
  『朗読劇 こころ』新宿より漱石に愛を込めて(その2)
  『朗読劇 こころ』新宿より漱石に愛を込めて(その3)

 天辰座長の回覧メールによる練習案内を欠かさず見るだけで、
 練習を訪れていなかったのですが、先日(2019年11月24日)、
 漱石山房記念会館で本番前の練習をすると聞いて、
 手ぶらで陣中見舞いに行きました。

 以下の稽古の様子の画像は、クリックすると鮮明に見ることができます。

 漱石山房記念会館は、
 私の事務所から歩いて15分、自宅から歩いて5分ですが、
 2018年9月に開館してから1度しか行っておらず、
 不義理を重ねてきており、今回は、練習を見る合間に、
 鈴木館長と亀山課員にご挨拶させていただきました。

============
 元気に演出・演奏をする天辰座長と出演者の皆さんによる
 緊張感あふれる練習に接することができました、

 手ぶらの手前、ぼんやりとしてもいられないので、
 天辰座長の、本番と同じ会場設営をしてみたいとの注文に応え、
 講座室の机を片付け、50席分の椅子を並べるお手伝いをして、
 体を動かして、何かをやってる気分に浸りました。
GEDV0030.JPG
 
 練習は、尾上先生による厳しくも優しい振付指導の下で
 ミュージカルの場面を中心にして、読み合わせが行われました。
GEDV0033-2.jpg

 最初はこれで本番に間に合うのだろうかと思うような状態でしたが、
 尾上先生の適格な指導で、何回か繰り返すうちに、
 本番を彷彿とするまでに形になっていくのを見たときは驚きました。
GEDV0040-2.jpg

 プロ女優の土田若菜さんは、
 さすがに要領よく様になっていくのがわかります。

 主役の松澤卓也君は、長身で面構えは明治のイケメンで、
 三四郎を地で行くような早稲田大学の法学部の大学院生ですが、
 何もしないで立っているだけなら様になるものの
 土田さんのようなわけにいかないので、
 土田さんが最も見栄えよくなるように、
 尾上先生による考えられる限り最もシンプルな振付けを
 練習していました。

============
 九州から上京した三四郎を骨抜きにして振り回すことになる、
 近代小説に初めて登場する自己主張する美女にして悪女である
 美穪子を演じる土田さんは、ぴったりのはまり役です。
 https://twitter.com/2wkn_nkw9/status/1198606644122288130

 広岡悠那さんは、今や、
 若手シュール劇団『東京娯楽特区』の演出担当をする謎の美少年です
 https://www.tokyogorakutokku.com/blank-2
 (リンク先の1枚目の指名手配写真ではなく2枚目のスナップ写真です)。
GEDV0045-2.jpg

 前回の『朗読劇 こころ』では、
 主役の「私」に絡む三人娘の一人を演じていましたが、
 今回は、三四郎の大学の友人となる与次郎を演じており、
 男女どちらも演じることができる怪優です。

 前回の『朗読劇 こころ』でも静かな語りをしてくれた
 早乙女とみえさんが、今回も、
 市原悦子さんばりの堂々たるナレーションです。

============
 今回は予告編ということで、画像はソフトフォーカス気味ですが、
 続きは、12月8日の本番後に報告を兼ねてお話ししようと思います。 

 
 
posted by Dausuke SHIBA at 11:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台・ライブ

2019年08月04日

『熱海殺人事件・初演版』1973年の亡霊がよみがえるシュールな舞台

 昨年(1918年)の民藝の舞台『ペーパームーン』(紀伊國屋ホール)の
 大道具担当で頑張っていた広岡さんから(学ランの似合いそうな美少年です
 (リンク先の1枚目の指名手配写真ではなく2枚目のスナップ写真です))、
 「今度、共同演出する『熱海殺人事件』を青山の劇場で上演するので、
  是非来てくれ〜」とのメール連絡が来て、
 「ひょえ〜、広岡さん、ついに演出の夢叶ったんだ」とのことで、
 2019年8月2日(金)青山学院アスタジオでの夜の部に駆け付けました
 (その回のカンパの万札は私が入れたものです。札に名前書いてませんが)。

 ******(広岡さんのメールでの案内より)

『熱海殺人事件』https://twitter.com/tokyo56109
作 つかこうへい
演出 野月敦・広岡凡一

キャスト(ダブルキャスト)
木村伝兵衛……玉木葉輔 根本啓司
ハナ子…………木下紅葉 佐藤愛里奈
熊田留吉………邉拓耶  松塚道顕
大山金太郎……小河智裕 村田正純

スタッフ
演出   野月敦 広岡凡一
音響   藤川将太
照明   朝日一真
演出助手 村上和彌 下村りさ子 田中佑果 
舞台協力 岡山甫 
主催   青山学院大学国際政治経済学部狩野ゼミ

 ツイッターからちらしを引用させていただきました。
ちらし.jpg

 ******
 
 『熱海殺人事件』は1973年に初上演されたつかこうへいの有名な舞台で、
 当時映画ばかりだった私は10年遅れで1986年公開の映画版は見たのですが、
 誰が主演でどのような物語であったか全くの忘却の彼方でした。

 こんな有名な舞台に、
 立ち上がったばかりの貧乏劇団が挑戦するのはいいとしても、
 著作権の処理は大丈夫かと心配したのですが、
 「貧乏劇団には無償で開放してくれてる」との広岡さんの説明を聞いて、
 安心すると共に、なるほど著作権の一つの活用の仕方として面白い、
 と妙に納得してしまいました。

《設定》
 本舞台の設定は以下の通りです。

 静岡県警の定年を間近に控えたベテラン刑事・木村伝兵衛が、
 富山県警から異動してきた若手の刑事・熊田留吉と、
 伝兵衛の同僚にして愛人の婦人警官・ハナ子と共に、
 海岸での愛人殺人の容疑者・大山金次郎を伝兵衛の執務室に呼び出して、
 伝兵衛・留吉・ハナ子のストーリー通りに自供させようと、
 あの手この手で大山をいたぶり尽くすという物語です。

 伝兵衛の執務室の一幕劇90分で、過酷かつ能天気ないたぶりを、
 執務室での尋問、海辺を舞台にした仮想ドラマ、映画撮影現場の見立てと、
 時折ミュージカル仕立で見せて、
 登場人物が体を張った動的な演技を展開する過程で、
 伝兵衛・留吉・ハナ子・大山の関係性が変わっていくことが
 観客に伝わってくるという仕掛けになっています。

 ******

 1973年の初演版の脚本のまま、
 伝兵衛を演じる、とても定年間近には見えない若々しい玉木葉輔君、
 本人は舞台上の留吉よりもずっとハンサムな邉拓耶(ほとりたくや)君、
 1970年代の集団就職あがりの工員を彷彿とさせる小河智裕君、
 たぶん1970年代にはいなかった茶髪婦人警官を怪演した木下紅葉さんが、
 夥しい量の観念的なせりふの大空中戦を行い、
 舞台上の4人の精神が次第に入り混じってカオス状態になり、
 観客はそこに強引に巻き込まれていくという暑苦しい展開となります。

 酷暑の夜に、冷房が効いて寒いくらいの客席でしたが、
 3人の男優は顔から汗をを吹き出しながら熱演し、
 女優は何故か段々露出度の高い衣装になっていくという、
 サービスも行き届いた演出でありました。

《体感》
 つかこうへいの1973年の初演版の脚本をそのまま使用すれば、
 当然に、それは1970年代のカルチャーが色濃く反映され、
 大阪万博から5年後、学生運動が終焉し、エントロピーがピークを越えて、
 日本全体が経済の価値観に支配されだす入り口(現代日本の始まり)の時代
 「工員」「女工」「喫茶店」「海を見たい」等の
 当時既に死語となりつつあった言葉、
 集団就職あがりの雰囲気、「オールド」を飲む背伸び感覚、
 小道具としての煙草など、1970年代の風俗が物語の骨格を作っており、 
 1970年代を同時代感覚で生きた私は、
 染み付いている体感が呼び起こされました。

 その一方で、このような骨格をもつ初演版の脚本を、
 当時生まれてもいない若い演出家と俳優がそのまま再現すれば、
 彼らの現代の時代感覚が当然に融合されて、
 私の体感がとても変な感じに捻じ曲がるという、
 舞台ならではの不思議な体験をすることができました。

 それだけでも、本舞台を見た価値はあったと私は思っています。

 ******

 伝兵衛の執務室で4人が出合い、次第に狂気に向かって走り出す段で、
 ようやく1986年に見た映画版『熱海殺人事件
 のことを少し思い出しました。

 映画版では伝兵衛を仲代達也が、留吉を風間杜夫が演じ、
 思い出せなかったのですが、後で調べると
 ハナ子は志穂美悦子(ちょっと胸キュンになります)が、
 大山は竹田高利(全く思い出せません)が演じていたようです。

 いつもの同じセリフ回しと表情でけっして上手とはいえない仲代達也と、
 地方出のもさっとした風体で切れまくる
 風間杜夫の刑事は思い出せたのですが、
 4人の掛け合いは全く思い出せませんでした。

《演出》

 著作権の関係で、せりふを始め内容を全くいじれないという制約の中で、
 共同演出の二人がこの脚本にどう向き合ったのかに興味があります。

 開き直って、余計な解釈を一切入れずに、
 若手俳優を使って忠実にこの脚本を舞台上に再現するというのも
 大いにありです。

 おそらく、失礼ながら今回の若手俳優では、
 脚本を舞台上に再現することだけでも相当に大変なことで、
 曲がりなりにも、最後まで再現しきっただけでも、
 「よく頑張った」という評価に値すると思います。

 結果として、若手俳優の演技と演出された物語は、
 観客を置いてきぼりにして完全に空回りするのですが、
 私はそのようなことを試みただけでも成果はあったと思います。

 こんな空回り舞台を見せられた観客は本当に戸惑ったと思います。

 しかしその戸惑いは舞台ならではのものであり、
 1970年代の生き証人たる私にとっては、
 21世紀もだいぶたった今頃になって悪夢のように
 1970年代に再会できたことがとても面白い舞台体験になりましたし、
 演出・俳優と同世代の若い観客にとっては、
 日本とは全く風俗の異なる(それにしてはやけに日本的な)
 翻案もののような舞台で強引に追体験させられたことが、
 ある種の快感であったかもしれません。

 ******

 もし演出者が1970年代の風俗・文化に興味を持ったとすれば、
 私のように当時を体感的に理解することなど不可能ですから、
 1970年代を分析し尽くして、
 時代評として演出することも一つの向き合い方と思います。

 しかし、それをするには、
 相当の分析力と脚本の現代的なアレンジ力が必要で、
 今の彼らには手に余り、
 あまり面白い舞台にはならなかったかもしれません。

 ですから、若い演出家にとっては、
 つかこうへいを写経して忠実に再現した方が
 思わぬ効果が生じもし、将来への勉強になったとも言えます。 

 ******

 ちょっと細かい上げ足だけとっておきます。

●大山が殺した愛人がブスであったことが判明した場面で、
 顔写真を出すことは不要ではなかったかと思います
 (それとも、これもつか脚本に指定されているのかな?)。

 舞台上でシチュエーションは十分に説明されているので、
 観客は愛人のブスさ加減を十分に想像でき、
 観客に心の中でブスさを極限まで想像させてあげた方が
 面白かったのではないかと思うからです
 (深キョン主演の『富豪刑事』で、
  深キョンの祖父(かっこいい夏八木勲)のライバルの因業じじい
 (筒井康隆)が若い頃憧れたお嬢様に振られたことを回想する場面があり、
  そのお嬢様が振り返ると・・・というお馬鹿ストーリーを思い出しました)。

●舞台上にホワイトボードがでてきて、
 ハナ子が、ときどきそこに何か書くのですが、
 このハナ子の作業はもう少し生かした方が良いと思いました。
 (照明がボードに反射して書いたことが見え難いというのも
  少し工夫が必要かと思います)。

******

 凡一さんは、
 12月に『朗読劇 三四郎』で俳優として出演するとのことであり、
 私もこの舞台は観に行きますので、打上げのときにでも、
 凡一さんが『熱海殺人事件』にどう向き合って演出したかを、
 聞けること楽しみにしています。
posted by Dausuke SHIBA at 10:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台・ライブ

2018年06月24日

『ペーパームーン』O.ヘンリーテイストのロマンチック・コメディ

 2年前に記事にさせていただいた『朗読劇 こころ』(劇団天辰)で、
 一癖ある演技で劇団民藝の女優の卵として、
 遺憾なく存在感を見せつけてくれた廣岡悠那さんが、
 劇団天辰のメール連絡網を使って「是非、見に来てくれ〜」
 との本作の営業活動をされました。

 これは一肌脱がねばと、廣岡さんの劇団員割引枠で予約させていただき、
 昨日(6/23)、
 新宿高島屋南館にある紀伊国屋サザンシアターに観に行ってきました。

 舞台はイメージし難いのですが、
 O.ヘンリーテイストのロマンチック・コメディの雰囲気は伝わるかと思い、
 当日販売していた本舞台のパンフレットの表紙を引用してみました。

20180624『ペーパームーン』.jpg

《ストーリー》

 メール連絡網で廣岡さんが書いてくれた粗筋を引用します
 (適宜改行してます)。

 「「漂流郵便局」は瀬戸内海の小島にあり、
  受取人のいない手紙を預かっています。
  郵便局長は全国から集まってくるすべての便りに目を通し、
  伝えたくても伝えられない気持ちを受けとめているのです。

  夫を突然亡くし整理のつかない気持ちを
 「漂流郵便局」宛の手紙にしたためる妻、
  義姉の助っ人にかけつけた夫の弟。
  自宅カフェ開業に奮闘する二人を軽妙に演じるのは樫山文枝と西川明。
  1930年代アメリカのラブ・ソング「It’s Only A Paper Moon」が
  彩りを添えます。

  歌あり朗読ありダンスありと、
  涙と笑いがはじける舞台をお楽しみいただきます。
  郵便局長の粋なはからいで意外な結末が……。」

 ******

  廣岡さんは若くとてもキュートなので、舞台でセーラー服を着れば、
  中学生・高校生役が十分にできるので、
  樫山文枝さんの若い頃の女学生の役でもやるのかと思ったのですが、
  本人は演出志向が強く、そのため修行として何でもやっているところで、
  今回は大道具担当作業に取り組んでいるとのことでした。

《劇団民藝》

 劇団民藝といえば、滝沢修・宇野重吉の両御大が創設し、
 両御大をはじめ、現在の代表である奈良岡朋子さんに至るまで、
 数えきれない名優を輩出しているのは言うまでもないことです。

 私も、多くの映画で、例えば、特に、
 『霧の旗』『戦争と人間』『華麗なる一族』等の社会派映画で、
 体制を支える憎々しい権力者役を超弩級の貫禄で演ずる滝沢修さんを
 楽しませていただきました。

 あの頃、滝沢修さんは、50代から60代にかけて油が乗り切ったところで
 (おいおいおい、今の私より若いくらいだったのか)、
 映画はあくまで余技ですよ、という感じの余裕綽綽ぶりでした。

 私は正直なところ、
 民藝の舞台をみることなど一生ないだろうと思っていたのですが、
 弁理士になって行政書士繋がりで天辰座長と知り合い、
 その天辰座長繋がりで民藝団員の廣岡さんと知りあい、縁は縁を呼んで、
 民藝の舞台を見ることになったのは運命的であり貴重な体験でした。

《樫山文枝さん》

 私が、家から走って5分のところにあった中学校に通っていた頃、
 1年間にわたり、NHK連続TV小説の屈指の名作『おはなはん』が、
 毎朝8時15分から8時半まで放映されていました。

 おはなはんを演じた樫山文枝さんが、清楚で健気で美しかったことと、
 おはなはんと夫の速水中尉(高橋幸治がとてつもなくカッコよかった)
 とのロマンチックなるも悲劇的な夫婦の物語とは、
 半世紀を経ても私の脳裏に焼き付いています。

 『家族はつらいよV(妻よ薔薇のように)』で、
 次男の庄太(妻夫木聡)が、高校生の頃に、
 嫁にきた10歳ほど年の離れた兄嫁(夏川結衣)が匂い立つように美しかった、
 と回想する場面がありますが、
 私にとっては、樫山文枝さんは、知的で清楚で健気で強く美しく、
 こういう女性はいい男に嫁ぐものなのか、
 と身近に思って見た最初の女性といえます。

 しかし、あの当時、中学の始業時間は8時半でしたから、
 私は、1年間、8時25分まで『おはなはん』を見て、
 そこから走って校門に駆け込んでいたのでしょうね。

《ペーパームーン》
 
 本作のメインストーリーは、
 カフェ「ペーパームーン」を自宅の隣に建てるという、
 夫婦の長年の夢を実現しようと、具体的に動き出そうとした矢先に、
 夫(西川明)が急死してしまい、
 悲嘆に暮れた可憐で美しい未亡人である桃子(樫山文枝)が、
 夫の弟で、ブラジルから突然帰国した風来坊の五郎(西川明(二役))
 に支えられて開業にこぎつけるまでの、山あり谷ありの、
 O.ヘンリーテイストのロマンチックコメディです。

 商業演劇の雄である民藝だけあって、
 まだ新しい紀伊国屋サザンシアターの劇場環境の中で、
 舞台のセットは意匠が美しく洗練されています。

 樫山文枝さんも、背筋がシャキッとしてスレンダーで、声の衰えもなく、
 もう一花も二花も咲けるであろう美しい未亡人を軽やかに演じており、
 さすがに看板女優だと実感しました。

 ******

 苦難に陥るヒロインを、得体の知れない風来坊が助けるという
 ロマンチックコメディは、
 日本であれば、『男はつらいよ』のマドンナと寅、
 欧米であれば、『マイ・インターン』の美貌の女性社長とロートルの中途採用社員
 などが典型的で、本作もメインストーリーはとてもよいと思うし楽しめました。

 そういえば、先日TV放映された『68歳の新入社員』は、
 『マイ・インターン』のリメークで、
 デ・ニーロの役を草刈正雄が、アン・ハサウェイの役を高畑充希が演じています。

 DVDになったら見ようと思っていますが、
 リメークして何等恥ずかしくない名作なのですから、
 フジテレビは堂々とリメークの旨説明すべきです。 

《脚本》

 本作は、本来よい題材をメインストーリーにしているのに、
 とても勿体ない舞台にしてしまっているように思います。

 最大の原因は脚本(佐藤五月)にあると思います。

●本作は、メインストーリーだけで十分に成立すると思うのですが、
 「漂流郵便局」という、
 舞台を観ているだけではよくわからない要素が入ってきます。

 劇中の説明では、
 「漂流郵便局」は四国の瀬戸内海に近いところにある「郵便局」?で、
 そこに、心に抱えるものを持つ人々が、
 自分の気持ちを宛先のない手紙にして投函できるところのようです。

 舞台では、
 舞台奥手の高いスペースに「漂流郵便局」のセットが組まれ、
 舞台手前の低いスペースに桃子の自宅応接室のセットが組まれています。

 「漂流郵便局」のエピソードでは奥手にライトが当たり、手前は見えなくなり、
 桃子のエピソードでは、手前にライトが当たり、奥手が見えなくなる、
 という凝ったセット構成になっています。

 しかし、本作は、桃子を中心としたメインストーリーと、
 メインストーリーの間に挿入される、
 「漂流郵便局」に立ち寄る人々によるサブストーリーの関係がよくわからないため、
 「漂流郵便局」に立ち寄る人々の中に、
 メインストーリー側の登場人物を入り込ませて融合させようという意図が
 空回りしています。

●単純な疑問ですが、桃子の自宅がどこなのかがわかりません。

 桃子の自宅が、東京でないことはわかるのですが、
 瀬戸内海の「漂流郵便局」の近くなのか、
 遠く離れていてメインストーリー側の登場人物が意を決しなければ
 行けないくらいに離れた関東地方なのかが、全く説明されないので、
 ライトの切り替えで場面転換しただけでは、、
 彼らが「漂流郵便局」を訪れるリアリティが全く感じられないのです。

●本作で、「漂流郵便局」のサブストーリーは、なくてよかったと思います。

 映画もそうですが、舞台も、
 登場人物が衝突して感情的な化学反応を生じ、
 これらの化学反応によって最後に生じる、「ある抽象的な情念」が、
 具体的な人物やセットを通して観客の心に伝われば十分な筈です。

 メインストーリーは、ラストの完成したカフェ「ペーパームーン」の
 ちょっと驚くセット構成と、桃子と五郎の配置で、
 「ある抽象的な情念」を十分に伝えることができていたと思います。

 しかし、本作は、その「ある抽象的な情念」を
 抽象性が高いサブストーリーで改めて説明してしまっており、
 また、「漂流郵便局」の描写の抽象性が高いといっても、
 私が上記に説明したような、文章で説明できてしまう陳腐な内容ですから、
 舞台脚本としては、観客をなめてないか、という感じがします。 

 わずか1時間半前後の舞台ですから、
 話の構成を複雑にせず、メインストーリーに絞って、
 桃子や他の関係者の絡みに深みをもたせて、
 コメディとしての感情の起伏を大きくして、
 もう少しアップテンポに軽やかに話を展開させた方がよかったと思います。

《セット構成と演出》


 舞台では、メインストーリーは桃子の自宅の応接間で展開され、
 自宅の隣の工事中のカフェは、
 舞台の左隅にある出入口と見立てスペースだけです。

 ここは好みの問題かもしれませんが、私であれば、舞台は、
 桃子が五郎と娘に助けられて建設しているカフェの工事現場をメインにして、
 桃子の自宅の応接室は、本舞台とは逆に、
 舞台の右隅のほうに見立てスペース的に設置しておいたと思います。

 カフェの工事現場は、舞台のストーリーが進むにつれて、
 次第に完成され、最後に、桃子と夫が夢見た実際のカフェのセットになる。

 その着々と変化する工事現場のセットの中で、
 桃子と周囲の関係者の絡みが動的に進展する仕掛けもありかなと思います。

 例えば、舞台では、
 娘とフィアンセはもうそのような関係であるところからスタートしますが、
 工事の進捗の中で、娘と彼の関係が進展して結婚を決意するような設定でも
 面白いのではないかと思うのです。

《キャスト》


 キャストについては、民藝の将来を考えたら、
 真剣に考えなければならない深刻な問題があるように思います。

 樫山文枝さんは、前述したように、素晴らしい女優ですが、民藝には、
 本舞台のヒロインを樫山文枝さんにやってもらわなければならないほど、
 適齢期の俳優がいないのでしょうか。

 本作では、桃子に実年齢が近い役者をヒロインとし、
 夫と五郎は、ヒロインに十分に対抗できる男優を据えるべきと思います。

 本作では、
 ヒロインの樫山文枝さんが大女優すぎて、男優が全く対抗できていません。

 私は、舞台系の役者を存じ上げていないので、勝手なイメージキャラクターですが、
 桃子役は、例えば、真矢ミキさん、
 夫と五郎役は、もう少し若い方がよいのですが、
 風間杜夫
がまだ若作りできるか(内野聖陽、高橋克典、・・・ちょっとカッコよすぎるか)というところで、
 樫山文枝さんは、メインストーリーで重要な役どころである、
 夫と五郎のチャーミングな母親役に据えて、全体を引き締めればよいと思います。

 本作は、歌って踊るミュージカルの要素もあるので、
 真矢ミキさんはピッタリで、風間杜夫も無理すれば何とかなります
 (風間杜夫のようなおっさん風かつ二枚目ができる舞台俳優はいないか)。

 このような適齢期の俳優を常に育てるか、
 ゲストに招くか(ギャラの問題はありますが)する必要があると思います。

《民藝の若手と若手育成に期待する》


 廣岡さんのような若手の演出志向組には、
 とにかく寝る暇惜しんで脚本を書くよう指導して、
 脚本も演出もできる人材を育てるべきと思います。

 TVのシナリオは、
 1990年代までは、映画の感覚が支配的でしたが、
 2000年頃から、蒔田光治を中心にして、
 計算された緻密な構成にウェートが置かれてきていると思います。

 アメリカTVでは、同様な流れが先行していて、
 『スパイ大作戦』の頃に比べて、
 明らかにシナリオスタイルが変化していると思われます。

 最近DVDで見たアメリカTVドラマ『ドクター・ハウス』などは、
 8シーズン(8年間)にわたる連続ドラマですが、
 45分完結又は各45分前後編がベースで、
 舞台は一総合病院のドクター・ハウスの診療室の周辺のみ、
 毎回同一パターンで話が進むのですが、
 毎回凝りに凝ったシナリオで、全くマンネリに陥りませんでした。

 ですから、民藝の演出志向の若手は、最低限の素養として、
 黒澤明、小津安二郎、市川崑、山本薩夫等の
 シナリオがしっかりしている映画は全て見て、
 2000年代以降の日米のTVドラマを見て、
 舞台に取り込めるものは貪欲にドンドン取り込むべきと思います
 (全く、無責任に偉そうで申し訳ありません)。

 樫山文枝さんが第一線で今後も末永く活躍されることと、
 民藝の今後の取り組みと民藝若手の今後の活躍を心から念じております。
posted by Dausuke SHIBA at 15:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台・ライブ

2017年02月21日

『朗読劇 こころ』新宿より漱石に愛を込めて(その3)

〔朗読劇 こころ〕
●開幕前●
 イケメントリオの一人、プロパフォーマーの関井君が渋くサックスを演奏し、
 劇団3人娘の一人の高木さんがピアノ演奏をしてくれました。
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 高木さんは、天辰座長が好きな曲だというだけの理由で、天辰座長に指示されて、
 お気の毒にも『エリーゼのために』を何回も弾いてくれました。
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 天辰座長が、厳しい表情で、劇団3人娘の広岡さんと榎本さんに最後の指示を出しています。
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 舞台側の全景です。
 手前のウクレレは天辰座長がミュージカルシーンで音合わせに使います。

 右端の白髪の紳士は、出演を予定していたのですが、
 無念にも体調の関係で本番の出演を断念されました。
 せめて舞台側で時間を共にしたいとして、最後まで観劇されました。
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 会場側の全景です。
 当所の予想50人を大幅に上回る公称200人を超えようかという盛況です。
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 私のような天辰先生との義理・人情関係者だけでなく、
 新宿区内で『朗読劇 こころ』のチラシを見て興味をもった方、
 新宿区のHPをご覧になった新宿に以前住まわれていた方、
 文化・社会活動繋がりの皆様方、
 等々、新宿に根付く文化の総力が結集したようで壮観です。

●後編の開幕●
 昨年末に前編(私は時間が取れず観れませんでした)、今回が後編と完結編です。
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 各場の要所要所で、登場人物の心象風景を反映したミュージカル仕立ての歌唱・群舞が入ります。

 しかし、こんな古い歌ばかりで、若いメンバーがよく付いていったと思います
 (歌の年代とほぼ同じ年代層が圧倒的に多い観客側は大いに満足されていました)。
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 舞台に向かって右端で、天辰座長が演出・進行・ウクレレ演奏をしています。

 画像には写っていませんが、舞台に向かって左端で、
 猪爪さんと早乙女さんが全体の進行をリードするナレーションを行い、
 天辰座長の脱線気味の演出を鋭い眼光で監督しています。

 歌唱シーンです。
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●後編の見せ場●
 「若い頃の先生」(関井君)が東京の「お嬢様」(高木さん)にぞっこんなのを知らずに、
 故郷の「叔父さんB」(山崎さん)が自分の娘(広岡さん)を嫁にと申し出る場面。
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 「若い頃の先生」(関井君)が、叔父さんに、
 娘とは幼馴染で恋愛の対象にならない、と言い切り、
 それを聞いた叔父さんの娘(広岡さん)が泣き崩れる場面。

 朗読劇中、唯一の過剰演技場面で、
 広岡さんの性格俳優ぶりが遺憾なく発揮されています。

 天辰座長がその演技に感激して、もう1回再現するようにと暴走し出して、
 広岡さんも見事にその暴走演出に応え、観客が大喜びしていました。
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 「若い頃の先生」(関井君)が、
 「お嬢様」(高木さん)の「K」(松澤君)との二股愛を疑うドロドロ場面。

 「お嬢様」(高木さん)の母を、森田さんがミステリアスに演じてます。
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 森田さんのソロ歌唱の場面。
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 後編までで、「こころ」の原作は終了。
 完結編前の休憩時間に入念に原稿をチェックをする天辰座長。
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●完結編●

 後編で、原作の最後まで行きついてしまうのですが、
 天辰座長のオリジナルによる完結編が用意されていました。
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 「K」の自殺と「今の先生」の自殺には謎があり、実は・・・

 ということなのですが、その謎の1つとして、
 かつての「K」と「若い頃の先生」は実はBL関係だったのではないかとか、
 「今の先生」と「私」も実はBL関係だったのではないかとか、
 これだけイケメン(但し、三雲先生は除く)が勢ぞろいすると、
 天辰座長の演出の意図を離れて、
 何か『リーガルハイ』の小御門先生と羽生君のような関係が示唆されてしまいます。

 最後の千葉の崖淵の場面は、主要な登場人物が出揃い、
 土曜ワイド劇場の探偵による最後の謎の解明の場面のようでスリリングです。

 夏目漱石は、『エマ』や『高慢と偏見』で有名なジェーン・オースティンの影響
 を受けているとも言われており、
 ジェーン・オースティンの小説には相当にミステリーの要素がありますので、
 天辰エンディングもありかと思われます。

●完結編のフィナーレ●

 惨劇を極めた「先生」「K」「私」の事件から20年後、
 登場人物の人生に、何故か平和な時が訪れ『うれしいひなまつり』が合唱されます。
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 天辰座長が、天国の漱石から頼まれたというハッピーエンドを形にした、
 平和を願う『ハッピーバースデー 夏目漱石さん』と『憧れのハワイ航路』の
 会場の全員による合唱によって、2時間半にわたる超大作は幕を閉じたのでした。
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●客席の講評と出演者の挨拶●

 客席には、著名な漱石研究の大家もいらっしゃり、
 天辰演出に相当に戸惑われたご様子ですが、
 いずれの方も、アマチュアリズムを尊重して楽しまれ、暖かい講評をされていました。

 出演者挨拶では、先にお話したように榎本さんの涙が感動を誘ったり、
 本田君が予想しなかった質問に完全に詰まって会場全体が沈黙に包まれるなど、
 楽しい幕引きとなりました。

 なにか既視感があるなと思ったのですが、
 これは、昨年試写で観た『オケ老人!』そのままではないですか。

 オーケストラでバイオリンを弾く夢を追った杏が、
 間違えてよぼよぼの老人オーケストラに入団し、
 入院した指揮者の老人(笹野高史)に騙されて、指揮者を引継がされ、
 3年間の悪戦苦闘の末に公民館での演奏会を成就するという感動的な映画でした。

 天辰座長と劇団天辰のこの3年間の努力は、
 杏とそのオーケストラの『オケ老人!』に匹敵するでしょう。

 天辰座長と杏では、やはり杏の方がずっと素敵ですが、
 映画化してくれる人がでてくるかもしれませんね。

〔エピローグ〕
 高田馬場駅にすぐ近い「磯丸水産」の打上にもお供しました。

 劇団3人娘と森田さんが、何故か私の前と両横に座ってくれて、
 もうこの先、このようなシチュエーションはないなという嬉しい状況で
 漱石研究の代表的な研究者のお一人である東京外語大の柴田先生の薀蓄を肴に、
 美味しい日本酒を呑みながら、
 天辰先生と、念願成就を祝い硬い握手を交わすことができました。

 また、隣の机に座られた、80歳を超えて矍鑠とした
 『漱石山房』の近藤理事長(東北大学OB)と加藤副理事長(早稲田大学OB)の、
 漱石と東北大学、早稲田大学との関わりについてのご経験に基づく貴重なお話を伺うことができました。

 近藤理事長・加藤副理事長より二回り若く、お酒が入って絶好調の柴田先生による、
 漱石の時代の世界の戦争状況の解説を受けて、
 二十歳の榎本さんが、昨年、何かの文化映画会で、、
 「その頃の戦争に巻き込まれて軍部に虐げられた女の人が最後飛行機で逃げる」
 という映画を観て感動したという話をし出したのです。

 どこかで聞いた話と思い、私が、
 「女は結構身勝手で、かっこいいおじさんが女を助けるのだけれども、
 夫と逃げるでしょ?」と聞いたら、
 「そうです」との回答だったので、「それは、きっと『カサブランカ』だよ」
 となり、榎本さんがさらに「あの男の人かっこいいですよね」となったので、
 柴田先生と私は大笑いしてしまいました。

 孫に近い劇団俳優の卵にとって『カサブランカ』などは、
 どういう時代にみえるのだろうと妙な感慨に耽ってしまいました。

(終わり)
posted by Dausuke SHIBA at 14:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台・ライブ

『朗読劇 こころ』新宿より漱石に愛を込めて(その2)

〔劇団員〕
 天辰座長が、適材適所で採用した、朗読劇の出演者となる劇団員を紹介しましょう。

●イケメントリオと三雲先生●
 早稲田OBの天辰座長が、遥か後輩を含むいずれ劣らぬイケメン3人を配しました。

 今回の公演の実質的な主役である「若い頃の先生」を演じる関井君、
 「お嬢様」に失恋して自殺を図る影の主役「K」を演じる松澤君、
 手紙を読んで「今の先生」の秘密を知り衝撃を受ける「私」を演じる本田君。

 関井君は、『北の大地の詩』で振付け・出演をしたプロパフォーマーです。

 今回は、背筋すっきりと和服を美しく着こなし、さすがの安定した朗読と演技でした。
 左が「若い頃の先生」の関井君、右が「お嬢様」の高木さん。
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 松澤君は早大法学部で憲法学を志す一見真面目な長身の学生で、
 お嬢様への片想いに悶々と苦しむ苦学生を実感込めて演じています。

 本田君は、若きテレンス・スタンプを彷彿とさせるハーフの美青年で、
 「今の先生」と互いに惹かれ合うという妖しいBL設定にピッタリです。

 左が「K」の松澤君、中央が「私」の本田君、右が「今の先生」の三雲先生。
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 三雲先生は、区議・弁護士という多忙な公職の合間のどこに
 こんなことをする時間があるのだろうかと思ったのですが、
 アラフォーの「今の先生」を、
 忙しさにかまけた泥縄練習も顧みずにズーズーしく演じています。

 「若い頃の先生」(左、関井君)が年とってもこうはならないのではないか
 (「今の先生」(右、三雲先生))と訝しかったのですが、
 慣れると、影の薄い「今の先生」にピッタリと思えてくるところは、
 やはり天辰マジックなのでしょうか。
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 4人ともみな、声がセクシーでよく通り、劇団3人娘もウットリしておりました。

●劇団3人娘と本田さん●
 それぞれ劇団に所属する舞台俳優の卵である3人娘は、
 広岡さん(左から2人目)、榎本さん(左から3人目)、高木さん(右から2人目)です。
 左端の美熟女は豊永さん、右端の美熟女は野田さんです。
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 広岡さんは、民芸所属の役者の卵で、
 普段着になるとまだ制服が似合いそうな清純な外見と、
 「カリガリ博士」などの古典的な表現主義映画が大好きで、
 エロ・グロ・BL・GG何でもOKの内面とに、相当なギャップがあります。
 将来は、杉村春子ばりのひねくれ切った性格俳優の道が開かれています。

 榎本さんは、ピアノ演奏もする劇団員で、年に2回は感極まって泣けてくるときがあり、
 今回の公演の最後の挨拶がその時であったようで、
 タイミングよく涙が溢れてきて、観客の感動を誘っていました。
 相当の演技派です。

 高木さんは、背が高く「お嬢様」にピッタリの容姿なのですが、
 主人公の「若い頃の先生」(関井君)と「K」(松澤君)に対して二股愛を仕掛け、
 2人を自殺に追い込むという、
 罪深い不気味なおっとりぶりが板についていてよかったです。

 森田さんは、「今の先生」の妻と「お嬢様」の母の二役ですが、
 夏目漱石の小説で描かれるミステリアスな何か想像してしまう和風の人妻役を
 なかなかの雰囲気で演じています。
 本業が歌手であるだけに、せりふも声量と力強さがあり、
 天辰座長が、朗読演技とは別に、森田さんのソロ歌唱の場面を用意しています。
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●美熟女カルテット●
 天辰座長の脱線・暴走演出を、がっちり受け止めて全体を締めてくれたのは、
 猪爪さん、早乙女さん、豊永さん、野田さんの美熟女カルテットです。

 猪爪さん(左端)と早乙女さん(左から2人目)は、貫禄のナレーションを担当され、
 豊永さん(左から3人目)は着物の着付けを担当されたいかにも新宿粋人の風情。
 広岡さんと榎本さんが、美熟女に圧倒されて小さくなっていいます。
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 野田さん(左)は役者もされており、今回何役もこなし天辰座長をサポートされました。
 「私」の美青年の本田君(右)と並んでお似合いと思える着物の着こなしです。
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●叔父さんを演じた二人のおじ様●

 伊藤さん(前列右から2人目)は「若い頃の先生」(関井君)の叔父さんA役を、
 山崎さん(前列左から3人目)は「若い頃の先生」に娘(広岡さん)を見合いさせる叔父さんB役を、それぞれ演技じられました(前列左端は、叔父さんBの妻を演じる豊永さん)。

 伊藤さんは、師匠について踊りの修行をされており、
 今回の舞踏場面の振付けをされたロマンスグレーの紳士で、
 独り身の「若い頃の先生」が故郷に戻ると何かとこまめに世話を焼く叔父さんAにピッタリです。

 山崎さんは、本業が行政書士・税理士の先生で、
 「若い頃の先生」から預かった財産を使いこんでしまう人のよい叔父さんBの役を、
 そのような相談に日ごろ接していらっしゃるせいでしょうか、
 大変にリアルに演じていらっしゃいました。
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 天辰座長の手のひらで踊ってくれそうな劇団員のように思えましたが、実際は、
 天辰座長の演出が脱線・暴走するのもうなづける、
 一癖も二癖もあって一筋縄ではいかない方々のようでした。

(続く)
posted by Dausuke SHIBA at 09:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台・ライブ

2017年02月20日

『朗読劇 こころ』新宿より漱石に愛を込めて(その1)

〔プロローグ〕 
 お天気に恵まれた日曜日の昼下がりに、
 行政書士の大先輩である天辰先生率いるアマチュア劇団による
 『朗読劇 こころ』を観てまいりました。

 先日、私の住む牛込柳町から夏目坂を経て高田馬場のTUTAYAに散歩した折に見かけた、町内会掲示板に張り出されていたチラシをご覧ください。
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 会場は、高田馬場駅のすぐ近くの新宿区立戸塚地域センターの7階ホール。
 2年程前にできたばかりで、新宿区の他の老朽化した施設に比べて綺麗です。
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 7階に到着したら、会場30分前にまさかの長蛇の座り込み。
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 会場内では、天辰座長(中央の緑の上着)と団員が最後の調整をしています。
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 いよいよ開場。お客様が続々と席を埋めだしました。
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 新宿区では、『夏目坂』の地名に残るように、
 夏目漱石が生まれ育ち、大作家として活動を続けた場所であることに因み、
 夏目漱石生誕150年である本年に様々な行事が行われています。

〔事の始まり〕

 天辰座長は、新宿で長年にわたり行政書士として活躍される傍ら、
 万年演劇青年として演劇研究・エキストラを続けてこられたことが、
 行政書士会新宿支部では一部に知れ渡っておりました。

 3年前に、私が弁理士事務所を開設した折に、
 名ばかり行政書士の資格を生かすべく、専ら呑み会が中心でしたが、
 行政書士の先生方とのおつきあいが深まりました。

 行政書士会の何を名目にした呑み会であったか忘れましたが、、
 その呑み会で初めて天辰先生にお目にかかりました。

 天辰先生のオールバックの豊かな白髪と、浅黒く日焼けされ皺深く刻まれたお顔の、
 菅原文太を彷彿とする風貌を目の当たりにして、
 私は、行政書士の先生には少し違う世界の方もいらっしゃるのかと、
 やや引き気味に、目を逸らしながら映画の話でもしたのだと思います。
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 そうしたら、天辰先生が私につつつと近づいてきて、
 「柴先生、映画がお好きなようだから、これボクが書いた劇のシナリオだけど読んでくれないかな」 と、ワープロで印刷したホチキス止めの冊子を押し付けてきたのです。

 そのシナリオは森鴎外原作でタイトルは『国際恋愛小説 舞姫慕情(前篇)』
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 翌日、二日酔いに苦しみながら、ヤクザ映画のパロディ版かと思いつつ読みだしたら、
 森鴎外が生きた明治の当時の政治状況を背景とした、
 顔を赤らめずには読めないロマンチックな本格恋愛ドラマであったのです。

 これをきっかけに、以後、私の中では、
 強面の菅原文太がニコッと笑うと、とてもチャーミングなちょい悪紳士に変貌する
 天辰先生のイメージが定着したのでした。

〔天辰座長の構想〕

 それからしばらくして、行政書士会の何かの呑み会でまたご一緒した天辰先生に、
 「『舞姫』の舞台化はどうなりました?」と尋ねたら、
 「石川先生から「天辰さん、新宿で活動しているのだから、漱石を舞台化すべきだよ」
 と言われてしまって、今『こころ』の舞台化を目指してます」 との遠大な構想で
 (石川先生は、行政書士会新宿支部の重鎮で天辰先生のさらに先輩です)、
 いったいこれはどうなることかと思ったものです。

 そのときいただいた、団員募集のちらしです。
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 天辰先生は、行政書士会新宿支部の有志を集めて練習を開始したのですが、
 忙しく猛者揃いの先生方を、さすがの天辰先生も御しきれず方向転換をされました。

 天辰先生の手のひらで踊ってくれるであろう若い学生、
 文化活動・エンタテイメント活動をされる紳士・淑女・アーティスト、加えて、
 文化・社会活動繋がりの区議・弁護士の三雲先生を引きずり込み、
 新宿の行政書士のドンとしての政治力とお人柄で、
 新宿区の漱石記念活動繋がりの文化人・漱石研究者・演劇関係者に手を伸ばし、
 今回の公演の主要メンバーを次々に手中に収め、
 新宿ならではの劇団陣容となったのでした。

 メーリングリスト(ML)網に私も入れていただいたおかげで、
 この過程での天辰先生のMLによる秘密指令の全記録が、私の手元にあります。

 記念すべきMLによる最初の秘密指令が、2015年3月8付けの以下の文面です。
 ****************************************************
  グループメールの皆様
   グループメールのかたがたが、9人となりました、
   無理しないでのんびり楽しくおいでになれるときおいでいただければ
   嬉しいです。
   新宿区が誇る日本文豪の夏目漱石さんの生誕150の年の2年後には
   なんかやりましょう。
  てっちゃん天辰
 ****************************************************

 MLのメンバー全てが公演メンバーではないので、きっと、
 練習参加は5人程度あったと思われます。

 ●来る者拒まず去る者追わず、●練習と目標はテキトーに、●漱石への愛はしっかりと
 という今に至る劇団天辰のゆるーいコンセプトが既に形成され、
 天辰先生の強面イメージと程遠い「てっちゃん天辰」なる剽軽な座長名を使うなど、
 周到に考えられながら活動を開始されたことがよくわかります。

(続く)
posted by Dausuke SHIBA at 21:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台・ライブ

2016年07月03日

Be-Bミニライブとフレンチシェフ誕生パーティ(2016-6-26)

 1〜3月がやけに忙しく、
 4月に息を吹き返してまとめ書したのですが、
 5〜6月がまたもや忙しく、
 ブログの更新がパッタリと止まってしまいました。

 6月末に息を吹き返したところに、
 美人ロック歌手のBe−Bから、
 6月26日にフランス料理店に来ないかとのお誘い。

 生き返ったところにデートの誘いとは渡りに船と、
 おニューのブレザーを着込んでいそいそと出かけました。

 場所は、埼玉県東村山市栄町のフランス料理店
 『ラ・フルール・ド・セル』

 西武新宿線久米川駅が最寄りの駅とのことで、
 西武新宿線での初めての遠出となりました。

 大昔、花王栃木研究所で研究開発をしていたことがあり、
 浅草発の東武伊勢崎線はよく利用していましたが、
 新宿発の西武新宿線も少し走ると景色がローカルになって趣があります。

 久米川駅から歩いて5分。
 Be−Bの友人も結構来ていると聞いていましたが、
 うまくいけばBe−Bと差し向かいで、
 フランス料理フルコースを静かな雰囲気で楽しめるか、
 と下心満載で到着したところ、エ、エ、エ、エ、・・・
 雰囲気全然違う・・・
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 西武新宿線沿いの住宅街。
 低層階ビルの1階のこじんまりとしたレストランの
 窓とドアを開放しての完全立食パーティでありました。

 Be−Bがお友達と立ち話をしていたのを見つけたので、
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 「この感じだとライブもやるの?」と聞いたところ、
 「そう、もう一組がメインだけど、私もやりますよ。
  今日は、レストランスタッフも兼ねるから、忙しくてごめんね。
  ゆっくり楽しんでいってね」

 ガチョーン、という感じでしたが、飲んで食べて聴いて見て楽しもうと
 気持ちを切り替えました。

******

 オードブル中心でしたが、これがとても美味しく、
 飲み放題のこれもやや濁った美味しい白ワインを飲みながら、
 ブラブラしていたら、いい具合に出来上がってきました。

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 日曜日の昼下がり、出席者が気持ちよくなってきた頃に、
 Be−Bが話していたメインの男女デュオによる、
 1960〜1980年代懐かしのアメリカンポップスを中心にした
 楽しい演奏が始まりました。

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 このレストランは、
 B−Beが久米川に住んでいた頃の、
 不良飲み友達であったフランス人のエリックさんが、
 美しい日本人の奥様と共に始めたそうで、
 毎年6月26日は、シェフであるエリックさんの誕生パーティとして、
 店を開放しているとのことでした。

 シェフのエリックさんはこの方です。
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 エリックさんが調理しているのは、チーズフォンデュで、
 このような機械で作ります。
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 左下の三日月形はチーズで、
 弦の部分を覆うようにしているトウモロコシの棒のようなものが電熱器です。
 電熱器で、三日月の弦の部分を5分ほどかけて溶かす間、
 エリックさんが煙草を吸いながらじっくりと待っています。
 そして、やおら電熱器をどけて、溶けた三日月の弦の部分を削りとって、
 下に置いたチーズの入った皿に溶けたチーズを流し落として、
 一丁あがりです。

 エリックさんのマイペースの調理に、長い列をつくって皆気長に待ち、
 かくいう私も30分待って、チーズフォンデュにありつけました。

 そうして時間を潰していたら、いよいよ、Be−Bの出番。
 今日は、フレンチポップスから入って、ロックへの流れでした。
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 エリックさんの息子さんの、
 たぶんガールフレンドであろう可愛らしいフランス人の女の子が、
 Be−Bと一緒に盛り上がっていました(Be−Bの美脚が眩しい)。
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 この女の子、日本語がペラペラで、ハンサムなお父さんに、
 「おとうさん! 今日はどうするの!」
 とそのままの日本語でおしゃまを言っていたのが本当にかわいらしかったです。

 Be−Bのライブには、
 追っかけの親衛隊おじさま達がいつも応援に駆け付けており、
 私が4月の中野のジェットバーで見かけた方々も大勢いらっしゃいました。
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 この日は、奥様の家族が受付をされ、
 80歳には見えないお父上が玄関横に出ずっぱりで
 頑張っていらっしゃいました。
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 左奥に奥様のお父上が佇んでいます。

 日曜日の明るいうちから飲んだくれるというのは気持ちがいいものです。
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 フィッシュペーストで作られた豚さんは、
 可哀想に、鼻がほとんど削られ食べられてしまいました。
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 またまた、男女デュオの出番です。
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 1980年代のディスコの名曲が始まると、老若男女、多国籍の人種が踊りだしました。
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 夜も更けてきました。
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 エリックさん特製の肉料理が出されました
 (私はもう満腹で入りませんでした。残念)。
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 そしてクライマックスは、やはりエリックさん特製のケーキ
 (これは別腹でなんとか。舌がとろけるかと)。
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 エリックさんとそのご家族、誕生日おめでとう!
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posted by Dausuke SHIBA at 16:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台・ライブ

2016年04月24日

『北の大地の詩』と『幼年期の終り』

 表題の『北の大地の詩』の観劇報告をしたときに、
 この劇が土台としたアイヌ神話を即席調査して、
 下記のような粗筋であることを説明しました。

1.チキサ二姫らの神々が、未だ混沌とした大地に降臨し、
  大地から生まれ大地を支配していた魔神や悪魔を地底へと追いやり、
  世界を作り始め、やがて動植物や人間を作った。
2.天上でその様子をみていた雷神カンナカムイが、
  地上のチキサニ姫を見初め結ばれて神の子が生まれた。
3.降臨した中の神コタンコルカムイは、
  地上に築いた砦で神の子を育てる傍ら、洞窟に生活する人間に言葉を教え、
  知恵を授け、神の子が生まれたときにチキサニ姫に燃え上がった炎を授け、
  村を守護した。
4.神の子は、人間の子たちと育ち
  「輝く皮衣を着る者」」の意味「オキクルミ」と呼ばれるようになった。
  やがて人間は、洞窟を出て家を建て、オキクルミと共に道具を作り、
  火を使い、農耕する生活をしだした。
5.コタンコルカムイの予言に従い、
  オキクルミは人間を指導するリーダーとなり、
  天上から遣わされ隣村の水辺から迷い込んだ美少女神サロルン
  と恋に落ちた。
6.その頃、地底に追いやられた魔神(森うたう)が再び地上を襲い、
  隣村の水辺を暗黒に鎖してしまい、サロルンをさらい、
  そしてその暗黒が、オキクルミの村の水辺に到達しようとしてきた。
7.オキクルミは、村の危機とサロルンを救うべく、
  共に育った村の若者達と立ち上がり、父の雷撃に助けられ、
  魔神に操られる湖の巨大魔魚を格闘の末に退治し、魔神を一騎打ちして滅ぼす。
8.平和が戻った地上で、オキクルミはサロルンと結ばれ、
  人間と共に村の幸せに力を尽くすのだった。
9.しかし、長年月後、人間の堕落にあきれ果てたオキクルミは、
  いつか雷鳴と共に人間を見舞うとの言葉を残して姿を消してしまい、
  人間は深く後悔するも、雷鳴が鳴り響くと、
  オキクルミが来ていると信じて拝むようになった。

******

 この粗筋から、以下のような疑問がいろいろと湧きます。

(1)大地は、
   天上の神々がいたときからあったのか? あるいは、
   天上の神々によって創造されたのか?

   世界の神話をみても、
   大地は神によって創造される場合が多いので、
   ここでもそのようにしておきましょう。

   もし、神と共に既にあったのであれば、それは、
   アイヌ神話に独創性があることを示すのかもしれず、
   1つの研究対象になるように思います。   

(2)天上の神々が大地を創造したのであれば、
   何のために創造したのか?
   何故、わざわざ神でなければ抑え込めないほど
   絶大な力をもつ魔神や悪魔が生まれるように設計したのか?

(3)天上の神々は、何故人間を作ったのか?   
   上記(2)の回答にも関係しそうであるが、
   大地と魔神や悪魔は、人間にとって必要だから存在するのか?
   魔神や悪魔は、人間にとって必要なのであれば、
   何故、退治される必要があるのか?

(4)天上の神々のうち、何故2神だけが生殖能力をもつのか?
   生殖能力をもつ神は、後から発生した神なのか?

(5)何故、オミクルミを生んで育てることにしたのか?

(6)サロルンは、最初からいた神々の一人なのか?
   オミクルミのように、生殖能力のある神々が生んだのか?

(7)人間は何故堕落するのか?

(8)オキクルミはあるところまでは成長するが、それ以降は不死なのか?

 こういったことを考えていたら、
 アーサー・C・クラークの「幼年期の終り」が
 (私は創元推理文庫「地球幼年期の終わり」を読みましたが)、
 アイヌ神話とよく似たシチュエーションなのかもしれず、
 あれが1つの答えかもしれないと思いました。

 
タグ:アイヌ神話
posted by Dausuke SHIBA at 15:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台・ライブ

Be-B=和泉容ライブ(2016-4-10)

 この日は、昼間にプロパフォーマ―の関井君の出演舞台を鑑賞し、
 その後、Be-Bこと和泉容さんのライブを聴きにいきました。

 あの、結果的に舞台→ライブのはしごをしてしまいましたが、
 あくまで、仕事の合間に行ってますので、仕事はサボってません。

 Be-Bさんは、昨年閉店した事務所近間の居酒屋「よりみち」記事で、
 「よりみち」にフラッと入ってきた美人ロックシンガーです。

 美人を観ながらお酒を呑むのが何よりの楽しみなのですが、
 実際の彼女の歌も聴かねばと思いつつ、
 今年の1月の絶好の機会を風邪で寝込んで逃してしまいました。

 関井君の舞台から夕方には戻れたので、
 Be-Bさんのライブ予定でも確認してみるかと思って、
 BeBさんのブログを見たら、今晩は中野で行うとのことなので、
 急遽出かけました。

******

 場所は、中野駅前のふれあいロード沿いの高級Rock-Bar「JET BAR」。
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 通り沿いから狭い入口に続く階段を上った2Fで、
 いかにも怪しい、いや、妖しい雰囲気です。
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 店内は、以外にも綺麗で高級Rock-Barにふさわしい佇まい。
 後姿の髪の長い女性がBe-Bこと和泉容さんです。
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 Be-Bさん以外は、どなたが店員で、どなたがスタッフで、
 どなたがお客さんか判然とせず
 (かくいう私も一体何者?という感じでしたが)
 開演時間の7:30が過ぎても、当のBeBさんがおしゃべりの渦中にいて、
 何ともアバウトな雰囲気がよかったです。
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 まさか、今日はBe-Bさんを囲む会で、ライブ抜きか、
 と一瞬思ったのですが、店内を見回すと、天井近くに、
 ちゃんと案内が。
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 ステージも用意されているので、安心しました。
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 「Be-Bさん、振り向いて」とお願いしたら、
 何とも自然に、憂い顔のポージング。
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 ようやく、準備にはいりました。
 今回は、パーカッションの相棒が助っ人で参加とのことでした。
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 第1部開演です。
 さすがに、ワンショット、ワンショット決まっています。
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 チャージ300円、ウィスキーのロックのダブルが1000円と
 高級Rock-Barとは思えない手頃なお値段。
 BeBさんのリクエスト可能な曲リストを手元に聴き入ってました。
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 第一部が終わり、休憩に。
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 お客様方もくつろいでいます。
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 店内のポスターは1960〜1980年代。
 やはり、この頃のロックはシンプルでよかったかな。
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 Be-Bさんは、英語、仏語、一部アジア言語と日本語で対応できます
 とのことでしたので、
 カーペンターズまでのRockしか対応できない私の嗜好と重なる
 貴重な隙間ということで「あなたのとりこ」(勿論シルビーバルタン)
 をリクエストしました。

 「あなたのとりこ」のどこがRockか、
 と思われる向きもあるかもしれませんが、
 ご一緒した、Be-Bさんのファンクラブの筋金入りメンバーが、
 「あれ? 今日は俺リクエストしてないのに?」
 と叫ばれており、同じ嗜好の同胞がいるのだと安心しました。

 Be-Bさんも、アルコール燃料が充填され、気合いが入ってきました。
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 第2部の始まりです。
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 私も、かぶりつきの席に移動して、気合いを入れて撮影しています。
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 英語訛りの仏語Rock調の「あなたのとりこ」
 かわいらしくてよかったです。
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******

 第1、2部合せて2時間近い熱唱、ありがとうございました。
 楽しいひと時を過ごせました。

 帰り際、階段を下りていると、2階から顔を覗かせたBe-Bさんが、
 「緑のカーデガン素敵です♡♡♡」と言って下さいました。

 すいません、高級Rock-Barに場違いな、
 お昼の恰好のまま行ってしまい。

 1日の間に、舞台のヒロインと美人ロックシンガーに褒められて、
 私のおめでたい日曜日は終わったのでした。




 
posted by Dausuke SHIBA at 08:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台・ライブ