2019年08月04日

『熱海殺人事件・初演版』1973年の亡霊がよみがえるシュールな舞台

 昨年(1918年)の民藝の舞台『ペーパームーン』(紀伊國屋ホール)の
 大道具担当で頑張っていた広岡さんから(学ランの似合いそうな美少年です
 (リンク先の1枚目の指名手配写真ではなく2枚目のスナップ写真です))、
 「今度、共同演出する『熱海殺人事件』を青山の劇場で上演するので、
  是非来てくれ〜」とのメール連絡が来て、
 「ひょえ〜、広岡さん、ついに演出の夢叶ったんだ」とのことで、
 2019年8月2日(金)青山学院アスタジオでの夜の部に駆け付けました
 (その回のカンパの万札は私が入れたものです。札に名前書いてませんが)。

 ******(広岡さんのメールでの案内より)

『熱海殺人事件』https://twitter.com/tokyo56109
作 つかこうへい
演出 野月敦・広岡凡一

キャスト(ダブルキャスト)
木村伝兵衛……玉木葉輔 根本啓司
ハナ子…………木下紅葉 佐藤愛里奈
熊田留吉………邉拓耶  松塚道顕
大山金太郎……小河智裕 村田正純

スタッフ
演出   野月敦 広岡凡一
音響   藤川将太
照明   朝日一真
演出助手 村上和彌 下村りさ子 田中佑果 
舞台協力 岡山甫 
主催   青山学院大学国際政治経済学部狩野ゼミ

 ツイッターからちらしを引用させていただきました。
ちらし.jpg

 ******
 
 『熱海殺人事件』は1973年に初上演されたつかこうへいの有名な舞台で、
 当時映画ばかりだった私は10年遅れで1986年公開の映画版は見たのですが、
 誰が主演でどのような物語であったか全くの忘却の彼方でした。

 こんな有名な舞台に、
 立ち上がったばかりの貧乏劇団が挑戦するのはいいとしても、
 著作権の処理は大丈夫かと心配したのですが、
 「貧乏劇団には無償で開放してくれてる」との広岡さんの説明を聞いて、
 安心すると共に、なるほど著作権の一つの活用の仕方として面白い、
 と妙に納得してしまいました。

《設定》
 本舞台の設定は以下の通りです。

 静岡県警の定年を間近に控えたベテラン刑事・木村伝兵衛が、
 富山県警から異動してきた若手の刑事・熊田留吉と、
 伝兵衛の同僚にして愛人の婦人警官・ハナ子と共に、
 海岸での愛人殺人の容疑者・大山金次郎を伝兵衛の執務室に呼び出して、
 伝兵衛・留吉・ハナ子のストーリー通りに自供させようと、
 あの手この手で大山をいたぶり尽くすという物語です。

 伝兵衛の執務室の一幕劇90分で、過酷かつ能天気ないたぶりを、
 執務室での尋問、海辺を舞台にした仮想ドラマ、映画撮影現場の見立てと、
 時折ミュージカル仕立で見せて、
 登場人物が体を張った動的な演技を展開する過程で、
 伝兵衛・留吉・ハナ子・大山の関係性が変わっていくことが
 観客に伝わってくるという仕掛けになっています。

 ******

 1973年の初演版の脚本のまま、
 伝兵衛を演じる、とても定年間近には見えない若々しい玉木葉輔君、
 本人は舞台上の留吉よりもずっとハンサムな邉拓耶(ほとりたくや)君、
 1970年代の集団就職あがりの工員を彷彿とさせる小河智裕君、
 たぶん1970年代にはいなかった茶髪婦人警官を怪演した木下紅葉さんが、
 夥しい量の観念的なせりふの大空中戦を行い、
 舞台上の4人の精神が次第に入り混じってカオス状態になり、
 観客はそこに強引に巻き込まれていくという暑苦しい展開となります。

 酷暑の夜に、冷房が効いて寒いくらいの客席でしたが、
 3人の男優は顔から汗をを吹き出しながら熱演し、
 女優は何故か段々露出度の高い衣装になっていくという、
 サービスも行き届いた演出でありました。

《体感》
 つかこうへいの1973年の初演版の脚本をそのまま使用すれば、
 当然に、それは1970年代のカルチャーが色濃く反映され、
 大阪万博から5年後、学生運動が終焉し、エントロピーがピークを越えて、
 日本全体が経済の価値観に支配されだす入り口(現代日本の始まり)の時代
 「工員」「女工」「喫茶店」「海を見たい」等の当時既に死語となりつつあった言葉、
 集団就職あがりの雰囲気、「オールド」を飲む背伸び感覚、小道具としての煙草など、
 1970年代の風俗が物語の骨格を作っており、 
 1970年代を同時代感覚で生きた私は染み付いている体感が呼び起こされました。

 その一方で、このような骨格をもつ初演版の脚本を、
 当時生まれてもいない若い演出家と俳優がそのまま再現すれば、
 彼らの現代の時代感覚が当然に融合されて、
 私の体感がとても変な感じに捻じ曲がるという、
 舞台ならではの不思議な体験をすることができました。

 それだけでも、本舞台を見た価値はあったと私は思っています。

 ******

 伝兵衛の執務室で4人が出合い、次第に狂気に向かって走り出す段で、
 ようやく1986年に見た映画版『熱海殺人事件』のことを少し思い出しました。

 映画版では伝兵衛を仲代達也が、留吉を風間杜夫が演じ、
 思い出せなかったのですが、後で調べると
 ハナ子は志穂美悦子(ちょっと胸キュンになります)が、
 大山は竹田高利(全く思い出せません)が演じていたようです。

 いつもの同じセリフ回しと表情でけっして上手とはいえない仲代達也と、
 地方出のもさっとした風体で切れまくる風間杜夫の刑事は思い出せたのですが、
 4人の掛け合いは全く思い出せませんでした。

《演出》

 著作権の関係で、せりふを始め内容を全くいじれないという制約の中で、
 共同演出の二人がこの脚本にどう向き合ったのかに興味があります。

 開き直って、余計な解釈を一切入れずに、
 若手俳優を使って忠実にこの脚本を舞台上に再現するというのも
 大いにありです。

 おそらく、失礼ながら今回の若手俳優では、
 脚本を舞台上に再現することだけでも相当に大変なことで、
 曲がりなりにも、最後まで再現しきっただけでも、
 「よく頑張った」という評価に値すると思います。

 結果として、若手俳優の演技と演出された物語は、
 観客を置いてきぼりにして完全に空回りするのですが、
 私はそのようなことを試みただけでも成果はあったと思います。

 こんな空回り舞台を見せられた観客は本当に戸惑ったと思います。

 しかしその戸惑いは舞台ならではのものであり、
 1970年代の生き証人たる私にとっては、
 21世紀もだいぶたった今頃になって悪夢のように1970年代に再会できたことが
 とても面白い舞台体験になりましたし、
 演出・俳優と同世代の若い観客にとっては、
 日本とは全く風俗の異なる(それにしてはやけに日本的な)
 翻案もののような舞台で強引に追体験させられたことが、
 ある種の快感であったかもしれません。

 ******

 もし演出者が1970年代の風俗・文化に興味を持ったとすれば、
 私のように当時を体感的に理解することなど不可能ですから、
 1970年代を分析し尽くして、
 時代評として演出することも一つの向き合い方と思います。

 しかし、それをするには、
 相当の分析力と脚本の現代的なアレンジ力が必要で、
 今の彼らには手に余り、
 あまり面白い舞台にはならなかったかもしれません。

 ですから、若い演出家にとっては、
 つかこうへいを写経して忠実に再現した方が
 思わぬ効果が生じもし、将来への勉強になったとも言えます。 

 ******

 ちょっと細かい上げ足だけとっておきます。

●大山が殺した愛人がブスであったことが判明した場面で、
 顔写真を出すことは不要ではなかったかと思います
 (それとも、これもつか脚本に指定されているのかな?)。

 舞台上でシチュエーションは十分に説明されているので、
 観客は愛人のブスさ加減を十分に想像でき、
 観客に心の中でブスさを極限まで想像させてあげた方が
 面白かったのではないかと思うからです
 (深キョン主演の『富豪刑事』で、
  深キョンの祖父(かっこいい夏八木勲)のライバルの因業じじい(筒井康隆)が、
  若い頃、憧れたお嬢様に振られたことを回想する場面があり、
  そのお嬢様が振り返ると・・・というお馬鹿ストーリーを思い出しました)。

●舞台上にホワイトボードがでてきて、
 ハナ子が、ときどきそこに何か書くのですが、
 このハナ子の作業はもう少し生かした方が良いと思いました。
 (照明がボードに反射して書いたことが見え難いというのも
  少し工夫が必要かと思います)。

******

 凡一さんは、
 12月に『朗読劇 三四郎』で俳優として出演するとのことであり、
 私もこの舞台は観に行きますので、打上げのときにでも、
 凡一さんが『熱海殺人事件』にどう向き合って演出したかを、
 聞けること楽しみにしています。
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2018年06月24日

『ペーパームーン』O.ヘンリーテイストのロマンチック・コメディ

 2年前に記事にさせていただいた『朗読劇 こころ』(劇団天辰)で、
 一癖ある演技で劇団民藝の女優の卵として、
 遺憾なく存在感を見せつけてくれた廣岡悠那さんが、
 劇団天辰のメール連絡網を使って「是非、見に来てくれ〜」
 との本作の営業活動をされました。

 これは一肌脱がねばと、廣岡さんの劇団員割引枠で予約させていただき、
 昨日(6/23)、
 新宿高島屋南館にある紀伊国屋サザンシアターに観に行ってきました。

 舞台はイメージし難いのですが、
 O.ヘンリーテイストのロマンチック・コメディの雰囲気は伝わるかと思い、
 当日販売していた本舞台のパンフレットの表紙を引用してみました。

20180624『ペーパームーン』.jpg

《ストーリー》

 メール連絡網で廣岡さんが書いてくれた粗筋を引用します(適宜改行しました)。

 「「漂流郵便局」は瀬戸内海の小島にあり、受取人のいない手紙を預かっています。
  郵便局長は全国から集まってくるすべての便りに目を通し、
  伝えたくても伝えられない気持ちを受けとめているのです。

  夫を突然亡くし整理のつかない気持ちを「漂流郵便局」宛の手紙にしたためる妻、
  義姉の助っ人にかけつけた夫の弟。
  自宅カフェ開業に奮闘する二人を軽妙に演じるのは樫山文枝と西川明。
  1930年代アメリカのラブ・ソング「It’s Only A Paper Moon」が彩りを添えます。

  歌あり朗読ありダンスありと、涙と笑いがはじける舞台をお楽しみいただきます。
  郵便局長の粋なはからいで意外な結末が……。」

 ******

  廣岡さんは若くとてもキュートなので、舞台でセーラー服を着れば、
  中学生・高校生役が十分にできるので、
  樫山文枝さんの若い頃の女学生の役でもやるのかと思ったのですが、
  本人は演出志向が強く、そのため修行として何でもやっているところで、
  今回は大道具担当作業に取り組んでいるとのことでした。

《劇団民藝》

 劇団民藝といえば、滝沢修・宇野重吉の両御大が創設し、
 両御大をはじめ、現在の代表である奈良岡朋子さんに至るまで、
 数えきれない名優を輩出しているのは言うまでもないことです。

 私も、多くの映画で、例えば、特に、、
 『霧の旗』『戦争と人間』『華麗なる一族』等の社会派映画で、
 体制を支える憎々しい権力者役を超弩級の貫禄で演ずる滝沢修さんを
 楽しませていただきました。

 あの頃、滝沢修さんは、50代から60代にかけて油が乗り切ったところで
 (おいおいおい、今の私より若いくらいだったのか)、
 映画はあくまで余技ですよ、という感じの余裕綽綽ぶりでした。

 私は正直なところ、
 民藝の舞台をみることなど一生ないだろうと思っていたのですが、
 弁理士になって行政書士繋がりで天辰座長と知り合い、
 その天辰座長繋がりで民藝団員の廣岡さんと知りあい、縁は縁を呼んで、
 民藝の舞台を見ることになったのは運命的であり貴重な体験でした。

《樫山文枝さん》

 私が、家から走って5分のところにあった中学校に通っていた頃、
 1年間にわたり、NHK連続TV小説の屈指の名作『おはなはん』が、
 毎朝8時15分から8時半まで放映されていました。

 おはなはんを演じた樫山文枝さんが、清楚で健気で美しかったことと、
 おはなはんと夫の速水中尉(高橋幸治がとてつもなくカッコよかった)
 とのロマンチックなるも悲劇的な夫婦の物語とは、
 半世紀を経ても私の脳裏に焼き付いています。

 『家族はつらいよV(妻よ薔薇のように)』で、
 次男の庄太(妻夫木聡)が、高校生の頃に、
 嫁にきた10歳ほど年の離れた兄嫁(夏川結衣)が匂い立つように美しかった、
 と回想する場面がありますが、
 私にとっては、樫山文枝さんは、知的で清楚で健気で強く美しく、
 こういう女性はいい男に嫁ぐものなのか、と身近に思って見た最初の女性といえます。

 しかし、あの当時、中学の始業時間は8時半でしたから、
 私は、1年間、8時25分まで『おはなはん』を見て、
 そこから走って校門に駆け込んでいたのでしょうね。

《ペーパームーン》
 
 本作のメインストーリーは、
 カフェ「ペーパームーン」を自宅の隣に建てるという、
 夫婦の長年の夢を実現しようと、具体的に動き出そうとした矢先に、
 夫(西川明)が急死してしまい、
 悲嘆に暮れた可憐で美しい未亡人である桃子(樫山文枝)が、
 夫の弟で、ブラジルから突然帰国した風来坊の五郎(西川明(二役))
 に支えられて開業にこぎつけるまでの、山あり谷ありの、
 O.ヘンリーテイストのロマンチックコメディです。

 商業演劇の雄である民藝だけあって、
 まだ新しい紀伊国屋サザンシアターの劇場環境の中で、
 舞台のセットは意匠が美しく洗練されています。

 樫山文枝さんも、背筋がシャキッとしてスレンダーで、声の衰えもなく、
 もう一花も二花も咲けるであろう美しい未亡人を軽やかに演じており、
 さすがに看板女優だと実感しました。

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 苦難に陥るヒロインを、得体の知れない風来坊が助けるという
 ロマンチックコメディは、
 日本であれば、『男はつらいよ』のマドンナと寅、
 欧米であれば、『マイ・インターン』の美貌の女性社長とロートルの中途採用社員
 などが典型的で、本作もメインストーリーはとてもよいと思うし楽しめました。

 そういえば、先日TV放映された『68歳の新入社員』は、
 『マイ・インターン』のリメークで、
 デ・ニーロの役を草刈正雄が、アン・ハサウェイの役を高畑充希が演じています。

 DVDになったら見ようと思っていますが、
 リメークして何等恥ずかしくない名作なのですから、
 フジテレビは堂々とリメークの旨説明すべきです。 

《脚本》

 本作は、本来よい題材をメインストーリーにしているのに、
 とても勿体ない舞台にしてしまっているように思います。

 最大の原因は脚本(佐藤五月)にあると思います。

●本作は、メインストーリーだけで十分に成立すると思うのですが、
 「漂流郵便局」という、
 舞台を観ているだけではよくわからない要素が入ってきます。

 劇中の説明では、
 「漂流郵便局」は四国の瀬戸内海に近いところにある「郵便局」?で、
 そこに、心に抱えるものを持つ人々が、
 自分の気持ちを宛先のない手紙にして投函できるところのようです。

 舞台では、
 舞台奥手の高いスペースに「漂流郵便局」のセットが組まれ、
 舞台手前の低いスペースに桃子の自宅応接室のセットが組まれています。

 「漂流郵便局」のエピソードでは、奥手にライトが当たり、手前は見えなくなり、
 桃子のエピソードでは、手前にライトが当たり、奥手が見えなくなる、
 という凝ったセット構成になっています。

 しかし、本作は、桃子を中心としたメインストーリーと、
 メインストーリーの間に挿入される、
 「漂流郵便局」に立ち寄る人々によるサブストーリーの関係がよくわからないため、
 「漂流郵便局」に立ち寄る人々の中に、
 メインストーリー側の登場人物を入り込ませて融合させようという意図が
 空回りしています。

●単純な疑問ですが、桃子の自宅がどこなのかがわかりません。

 桃子の自宅が、東京でないことはわかるのですが、
 瀬戸内海の「漂流郵便局」の近くなのか、
 遠く離れていてメインストーリー側の登場人物が意を決しなければ
 行けないくらいに離れた関東地方なのかが、全く説明されないので、
 ライトの切り替えで場面転換しただけでは、、
 彼らが「漂流郵便局」を訪れるリアリティが全く感じられないのです。

●本作で、「漂流郵便局」のサブストーリーは、なくてよかったと思います。

 映画もそうですが、舞台も、
 登場人物が衝突して感情的な化学反応を生じ、
 これらの化学反応によって最後に生じる、「ある抽象的な情念」が、
 具体的な人物やセットを通して観客の心に伝われば十分な筈です。

 メインストーリーは、ラストの完成したカフェ「ペーパームーン」の
 ちょっと驚くセット構成と、桃子と五郎の配置で、
 「ある抽象的な情念」を十分に伝えることができていたと思います。

 しかし、本作は、その「ある抽象的な情念」を
 抽象性が高いサブストーリーで改めて説明してしまっており、
 また、「漂流郵便局」の描写の抽象性が高いといっても、
 私が上記に説明したような、文章で説明できてしまう陳腐な内容ですから、
 舞台脚本としては、観客をなめてないか、という感じがします。 

 わずか1時間半前後の舞台ですから、
 話の構成を複雑にせず、メインストーリーに絞って、
 桃子や他の関係者の絡みに深みをもたせて、
 コメディとしての感情の起伏を大きくして、
 もう少しアップテンポに軽やかに話を展開させた方がよかったと思います。

《セット構成と演出》


 舞台では、メインストーリーは桃子の自宅の応接間で展開され、
 自宅の隣の工事中のカフェは、舞台の左隅にある出入口と見立てスペースだけです。

 ここは好みの問題かもしれませんが、私であれば、舞台は、
 桃子が五郎と娘に助けられて建設しているカフェの工事現場をメインにして、
 桃子の自宅の応接室は、本舞台とは逆に、
 舞台の右隅のほうに見立てスペース的に設置しておいたと思います。

 カフェの工事現場は、舞台のストーリーが進むにつれて、
 次第に完成され、最後に、桃子と夫が夢見た実際のカフェのセットになる。

 その着々と変化する工事現場のセットの中で、
 桃子と周囲の関係者の絡みが動的に進展するような仕掛けもありかなと思います。

 例えば、舞台では、
 娘とフィアンセはもうそのような関係であるところからスタートしますが、
 工事の進捗の中で、娘と彼の関係が進展して結婚を決意するような設定でも
 面白いのではないかと思うのです。

《キャスト》


 キャストについては、民藝の将来を考えたら、
 真剣に考えなければならない深刻な問題があるように思います。

 樫山文枝さんは、前述したように、素晴らしい女優ですが、民藝には、
 本舞台のヒロインを樫山文枝さんにやってもらわなければならないほど、
 適齢期の俳優がいないのでしょうか。

 本作では、桃子に実年齢が近い役者をヒロインとし、
 夫と五郎は、ヒロインに十分に対抗できる男優を据えるべきと思います。

 本作では、
 ヒロインの樫山文枝さんが大女優すぎて、男優が全く対抗できていません。

 私は、舞台系の役者を存じ上げていないので、勝手なイメージキャラクターですが、
 桃子役は、例えば、真矢ミキさん、
 夫と五郎役は、もう少し若い方がよいのですが、風間杜夫がまだ若作りできるか
 (内野聖陽、高橋克典、・・・ちょっとカッコよすぎるか)というところで、
 樫山文枝さんは、メインストーリーで重要な役どころである、
 夫と五郎のチャーミングな母親役に据えて、全体を引き締めればよいと思います。

 本作は、歌って踊るミュージカルの要素もあるので、
 真矢ミキさんはピッタリで、風間杜夫も無理すれば何とかなります
 (という風間杜夫のような、おっさん風かつ二枚目ができる舞台俳優いないですか)。

 このような適齢期の俳優を常に育てるか、
 ゲストに招くか(ギャラの問題はありますが)する必要があると思います。

《民藝の若手と若手育成に期待する》


 廣岡さんのような若手の演出志向組には、
 とにかく寝る暇惜しんで脚本を書くよう指導して、
 脚本も演出もできる人材を育てるべきと思います。

 TVのシナリオは、
 1990年代までは、映画の感覚が支配的でしたが、
 2000年頃から、蒔田光治を中心にして、
 計算された緻密な構成にウェートが置かれてきていると思います。

 アメリカTVでは、同様な流れが先行していて、
 『スパイ大作戦』の頃に比べて、
 明らかにシナリオスタイルが変化していると思われます。

 最近DVDで見たアメリカTVドラマ『ドクター・ハウス』などは、
 8シーズン(8年間)にわたる連続ドラマですが、
 45分完結又は各45分前後編がベースで、
 舞台は一総合病院のドクター・ハウスの診療室の周辺のみ、
 毎回同一パターンで話が進むのですが、
 毎回凝りに凝ったシナリオで、全くマンネリに陥りませんでした。

 ですから、民藝の演出志向の若手は、最低限の素養として、
 黒澤明、小津安二郎、市川崑、山本薩夫等の
 シナリオがしっかりしている映画は全て見て、
 2000年代以降の日米のTVドラマを見て、
 舞台に取り込めるものは貪欲にドンドン取り込むべきと思います
 (全く、無責任に偉そうで申し訳ありません)。

 樫山文枝さんが第一線で今後も末永く活躍されることと、
 民藝の今後の取り組みと民藝若手の今後の活躍を心から念じております。
posted by Dausuke SHIBA at 15:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台・ライブ

2017年02月21日

『朗読劇 こころ』新宿より漱石に愛を込めて(その3)

〔朗読劇 こころ〕
●開幕前●
 イケメントリオの一人、プロパフォーマーの関井君が渋くサックスを演奏し、
 劇団3人娘の一人の高木さんがピアノ演奏をしてくれました。
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 高木さんは、天辰座長が好きな曲だというだけの理由で、天辰座長に指示されて、
 お気の毒にも『エリーゼのために』を何回も弾いてくれました。
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 天辰座長が、厳しい表情で、劇団3人娘の広岡さんと榎本さんに最後の指示を出しています。
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 舞台側の全景です。
 手前のウクレレは天辰座長がミュージカルシーンで音合わせに使います。

 右端の白髪の紳士は、出演を予定していたのですが、
 無念にも体調の関係で本番の出演を断念されました。
 せめて舞台側で時間を共にしたいとして、最後まで観劇されました。
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 会場側の全景です。
 当所の予想50人を大幅に上回る公称200人を超えようかという盛況です。
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 私のような天辰先生との義理・人情関係者だけでなく、
 新宿区内で『朗読劇 こころ』のチラシを見て興味をもった方、
 新宿区のHPをご覧になった新宿に以前住まわれていた方、
 文化・社会活動繋がりの皆様方、
 等々、新宿に根付く文化の総力が結集したようで壮観です。

●後編の開幕●
 昨年末に前編(私は時間が取れず観れませんでした)、今回が後編と完結編です。
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 各場の要所要所で、登場人物の心象風景を反映したミュージカル仕立ての歌唱・群舞が入ります。

 しかし、こんな古い歌ばかりで、若いメンバーがよく付いていったと思います
 (歌の年代とほぼ同じ年代層が圧倒的に多い観客側は大いに満足されていました)。
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 舞台に向かって右端で、天辰座長が演出・進行・ウクレレ演奏をしています。

 画像には写っていませんが、舞台に向かって左端で、
 猪爪さんと早乙女さんが全体の進行をリードするナレーションを行い、
 天辰座長の脱線気味の演出を鋭い眼光で監督しています。

 歌唱シーンです。
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●後編の見せ場●
 「若い頃の先生」(関井君)が東京の「お嬢様」(高木さん)にぞっこんなのを知らずに、
 故郷の「叔父さんB」(山崎さん)が自分の娘(広岡さん)を嫁にと申し出る場面。
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 「若い頃の先生」(関井君)が、叔父さんに、
 娘とは幼馴染で恋愛の対象にならない、と言い切り、
 それを聞いた叔父さんの娘(広岡さん)が泣き崩れる場面。

 朗読劇中、唯一の過剰演技場面で、
 広岡さんの性格俳優ぶりが遺憾なく発揮されています。

 天辰座長がその演技に感激して、もう1回再現するようにと暴走し出して、
 広岡さんも見事にその暴走演出に応え、観客が大喜びしていました。
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 「若い頃の先生」(関井君)が、
 「お嬢様」(高木さん)の「K」(松澤君)との二股愛を疑うドロドロ場面。

 「お嬢様」(高木さん)の母を、森田さんがミステリアスに演じてます。
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 森田さんのソロ歌唱の場面。
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 後編までで、「こころ」の原作は終了。
 完結編前の休憩時間に入念に原稿をチェックをする天辰座長。
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●完結編●

 後編で、原作の最後まで行きついてしまうのですが、
 天辰座長のオリジナルによる完結編が用意されていました。
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 「K」の自殺と「今の先生」の自殺には謎があり、実は・・・

 ということなのですが、その謎の1つとして、
 かつての「K」と「若い頃の先生」は実はBL関係だったのではないかとか、
 「今の先生」と「私」も実はBL関係だったのではないかとか、
 これだけイケメン(但し、三雲先生は除く)が勢ぞろいすると、
 天辰座長の演出の意図を離れて、
 何か『リーガルハイ』の小御門先生と羽生君のような関係が示唆されてしまいます。

 最後の千葉の崖淵の場面は、主要な登場人物が出揃い、
 土曜ワイド劇場の探偵による最後の謎の解明の場面のようでスリリングです。

 夏目漱石は、『エマ』や『高慢と偏見』で有名なジェーン・オースティンの影響
 を受けているとも言われており、
 ジェーン・オースティンの小説には相当にミステリーの要素がありますので、
 天辰エンディングもありかと思われます。

●完結編のフィナーレ●

 惨劇を極めた「先生」「K」「私」の事件から20年後、
 登場人物の人生に、何故か平和な時が訪れ『うれしいひなまつり』が合唱されます。
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 天辰座長が、天国の漱石から頼まれたというハッピーエンドを形にした、
 平和を願う『ハッピーバースデー 夏目漱石さん』と『憧れのハワイ航路』の
 会場の全員による合唱によって、2時間半にわたる超大作は幕を閉じたのでした。
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●客席の講評と出演者の挨拶●

 客席には、著名な漱石研究の大家もいらっしゃり、
 天辰演出に相当に戸惑われたご様子ですが、
 いずれの方も、アマチュアリズムを尊重して楽しまれ、暖かい講評をされていました。

 出演者挨拶では、先にお話したように榎本さんの涙が感動を誘ったり、
 本田君が予想しなかった質問に完全に詰まって会場全体が沈黙に包まれるなど、
 楽しい幕引きとなりました。

 なにか既視感があるなと思ったのですが、
 これは、昨年試写で観た『オケ老人!』そのままではないですか。

 オーケストラでバイオリンを弾く夢を追った杏が、
 間違えてよぼよぼの老人オーケストラに入団し、
 入院した指揮者の老人(笹野高史)に騙されて、指揮者を引継がされ、
 3年間の悪戦苦闘の末に公民館での演奏会を成就するという感動的な映画でした。

 天辰座長と劇団天辰のこの3年間の努力は、
 杏とそのオーケストラの『オケ老人!』に匹敵するでしょう。

 天辰座長と杏では、やはり杏の方がずっと素敵ですが、
 映画化してくれる人がでてくるかもしれませんね。

〔エピローグ〕
 高田馬場駅にすぐ近い「磯丸水産」の打上にもお供しました。

 劇団3人娘と森田さんが、何故か私の前と両横に座ってくれて、
 もうこの先、このようなシチュエーションはないなという嬉しい状況で
 漱石研究の代表的な研究者のお一人である東京外語大の柴田先生の薀蓄を肴に、
 美味しい日本酒を呑みながら、
 天辰先生と、念願成就を祝い硬い握手を交わすことができました。

 また、隣の机に座られた、80歳を超えて矍鑠とした
 『漱石山房』の近藤理事長(東北大学OB)と加藤副理事長(早稲田大学OB)の、
 漱石と東北大学、早稲田大学との関わりについてのご経験に基づく貴重なお話を伺うことができました。

 近藤理事長・加藤副理事長より二回り若く、お酒が入って絶好調の柴田先生による、
 漱石の時代の世界の戦争状況の解説を受けて、
 二十歳の榎本さんが、昨年、何かの文化映画会で、、
 「その頃の戦争に巻き込まれて軍部に虐げられた女の人が最後飛行機で逃げる」
 という映画を観て感動したという話をし出したのです。

 どこかで聞いた話と思い、私が、
 「女は結構身勝手で、かっこいいおじさんが女を助けるのだけれども、
 夫と逃げるでしょ?」と聞いたら、
 「そうです」との回答だったので、「それは、きっと『カサブランカ』だよ」
 となり、榎本さんがさらに「あの男の人かっこいいですよね」となったので、
 柴田先生と私は大笑いしてしまいました。

 孫に近い劇団俳優の卵にとって『カサブランカ』などは、
 どういう時代にみえるのだろうと妙な感慨に耽ってしまいました。

(終わり)
タグ:夏目漱石
posted by Dausuke SHIBA at 14:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台・ライブ

『朗読劇 こころ』新宿より漱石に愛を込めて(その2)

〔劇団員〕
 天辰座長が、適材適所で採用した、朗読劇の出演者となる劇団員を紹介しましょう。

●イケメントリオと三雲先生●
 早稲田OBの天辰座長が、遥か後輩を含むいずれ劣らぬイケメン3人を配しました。

 今回の公演の実質的な主役である「若い頃の先生」を演じる関井君、
 「お嬢様」に失恋して自殺を図る影の主役「K」を演じる松澤君、
 手紙を読んで「今の先生」の秘密を知り衝撃を受ける「私」を演じる本田君。

 関井君は、『北の大地の詩』で振付け・出演をしたプロパフォーマーです。

 今回は、背筋すっきりと和服を美しく着こなし、さすがの安定した朗読と演技でした。
 左が「若い頃の先生」の関井君、右が「お嬢様」の高木さん。
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 松澤君は早大法学部で憲法学を志す一見真面目な長身の学生で、
 お嬢様への片想いに悶々と苦しむ苦学生を実感込めて演じています。

 本田君は、若きテレンス・スタンプを彷彿とさせるハーフの美青年で、
 「今の先生」と互いに惹かれ合うという妖しいBL設定にピッタリです。

 左が「K」の松澤君、中央が「私」の本田君、右が「今の先生」の三雲先生。
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 三雲先生は、区議・弁護士という多忙な公職の合間のどこに
 こんなことをする時間があるのだろうかと思ったのですが、
 アラフォーの「今の先生」を、
 忙しさにかまけた泥縄練習も顧みずにズーズーしく演じています。

 「若い頃の先生」(左、関井君)が年とってもこうはならないのではないか
 (「今の先生」(右、三雲先生))と訝しかったのですが、
 慣れると、影の薄い「今の先生」にピッタリと思えてくるところは、
 やはり天辰マジックなのでしょうか。
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 4人ともみな、声がセクシーでよく通り、劇団3人娘もウットリしておりました。

●劇団3人娘と本田さん●
 それぞれ劇団に所属する舞台俳優の卵である3人娘は、
 広岡さん(左から2人目)、榎本さん(左から3人目)、高木さん(右から2人目)です。
 左端の美熟女は豊永さん、右端の美熟女は野田さんです。
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 広岡さんは、民芸所属の役者の卵で、
 普段着になるとまだ制服が似合いそうな清純な外見と、
 「カリガリ博士」などの古典的な表現主義映画が大好きで、
 エロ・グロ・BL・GG何でもOKの内面とに、相当なギャップがあります。
 将来は、杉村春子ばりのひねくれ切った性格俳優の道が開かれています。

 榎本さんは、ピアノ演奏もする劇団員で、年に2回は感極まって泣けてくるときがあり、
 今回の公演の最後の挨拶がその時であったようで、
 タイミングよく涙が溢れてきて、観客の感動を誘っていました。
 相当の演技派です。

 高木さんは、背が高く「お嬢様」にピッタリの容姿なのですが、
 主人公の「若い頃の先生」(関井君)と「K」(松澤君)に対して二股愛を仕掛け、
 2人を自殺に追い込むという、
 罪深い不気味なおっとりぶりが板についていてよかったです。

 森田さんは、「今の先生」の妻と「お嬢様」の母の二役ですが、
 夏目漱石の小説で描かれるミステリアスな何か想像してしまう和風の人妻役を
 なかなかの雰囲気で演じています。
 本業が歌手であるだけに、せりふも声量と力強さがあり、
 天辰座長が、朗読演技とは別に、森田さんのソロ歌唱の場面を用意しています。
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●美熟女カルテット●
 天辰座長の脱線・暴走演出を、がっちり受け止めて全体を締めてくれたのは、
 猪爪さん、早乙女さん、豊永さん、野田さんの美熟女カルテットです。

 猪爪さん(左端)と早乙女さん(左から2人目)は、貫禄のナレーションを担当され、
 豊永さん(左から3人目)は着物の着付けを担当されたいかにも新宿粋人の風情。
 広岡さんと榎本さんが、美熟女に圧倒されて小さくなっていいます。
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 野田さん(左)は役者もされており、今回何役もこなし天辰座長をサポートされました。
 「私」の美青年の本田君(右)と並んでお似合いと思える着物の着こなしです。
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●叔父さんを演じた二人のおじ様●

 伊藤さん(前列右から2人目)は「若い頃の先生」(関井君)の叔父さんA役を、
 山崎さん(前列左から3人目)は「若い頃の先生」に娘(広岡さん)を見合いさせる叔父さんB役を、それぞれ演技じられました(前列左端は、叔父さんBの妻を演じる豊永さん)。

 伊藤さんは、師匠について踊りの修行をされており、
 今回の舞踏場面の振付けをされたロマンスグレーの紳士で、
 独り身の「若い頃の先生」が故郷に戻ると何かとこまめに世話を焼く叔父さんAにピッタリです。

 山崎さんは、本業が行政書士・税理士の先生で、
 「若い頃の先生」から預かった財産を使いこんでしまう人のよい叔父さんBの役を、
 そのような相談に日ごろ接していらっしゃるせいでしょうか、
 大変にリアルに演じていらっしゃいました。
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 天辰座長の手のひらで踊ってくれそうな劇団員のように思えましたが、実際は、
 天辰座長の演出が脱線・暴走するのもうなづける、
 一癖も二癖もあって一筋縄ではいかない方々のようでした。

(続く)
タグ:夏目漱石
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2017年02月20日

『朗読劇 こころ』新宿より漱石に愛を込めて(その1)

〔プロローグ〕 
 お天気に恵まれた日曜日の昼下がりに、
 行政書士の大先輩である天辰先生率いるアマチュア劇団による
 『朗読劇 こころ』を観てまいりました。

 先日、私の住む牛込柳町から夏目坂を経て高田馬場のTUTAYAに散歩した折に見かけた、町内会掲示板に張り出されていたチラシをご覧ください。
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 会場は、高田馬場駅のすぐ近くの新宿区立戸塚地域センターの7階ホール。
 2年程前にできたばかりで、新宿区の他の老朽化した施設に比べて綺麗です。
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 7階に到着したら、会場30分前にまさかの長蛇の座り込み。
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 会場内では、天辰座長(中央の緑の上着)と団員が最後の調整をしています。
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 いよいよ開場。お客様が続々と席を埋めだしました。
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 新宿区では、『夏目坂』の地名に残るように、
 夏目漱石が生まれ育ち、大作家として活動を続けた場所であることに因み、
 夏目漱石生誕150年である本年に様々な行事が行われています。

〔事の始まり〕

 天辰座長は、新宿で長年にわたり行政書士として活躍される傍ら、
 万年演劇青年として演劇研究・エキストラを続けてこられたことが、
 行政書士会新宿支部では一部に知れ渡っておりました。

 3年前に、私が弁理士事務所を開設した折に、
 名ばかり行政書士の資格を生かすべく、専ら呑み会が中心でしたが、
 行政書士の先生方とのおつきあいが深まりました。

 行政書士会の何を名目にした呑み会であったか忘れましたが、、
 その呑み会で初めて天辰先生にお目にかかりました。

 天辰先生のオールバックの豊かな白髪と、浅黒く日焼けされ皺深く刻まれたお顔の、
 菅原文太を彷彿とする風貌を目の当たりにして、
 私は、行政書士の先生には少し違う世界の方もいらっしゃるのかと、
 やや引き気味に、目を逸らしながら映画の話でもしたのだと思います。
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 そうしたら、天辰先生が私につつつと近づいてきて、
 「柴先生、映画がお好きなようだから、これボクが書いた劇のシナリオだけど読んでくれないかな」 と、ワープロで印刷したホチキス止めの冊子を押し付けてきたのです。

 そのシナリオは森鴎外原作でタイトルは『国際恋愛小説 舞姫慕情(前篇)』
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 翌日、二日酔いに苦しみながら、ヤクザ映画のパロディ版かと思いつつ読みだしたら、
 森鴎外が生きた明治の当時の政治状況を背景とした、
 顔を赤らめずには読めないロマンチックな本格恋愛ドラマであったのです。

 これをきっかけに、以後、私の中では、
 強面の菅原文太がニコッと笑うと、とてもチャーミングなちょい悪紳士に変貌する
 天辰先生のイメージが定着したのでした。

〔天辰座長の構想〕

 それからしばらくして、行政書士会の何かの呑み会でまたご一緒した天辰先生に、
 「『舞姫』の舞台化はどうなりました?」と尋ねたら、
 「石川先生から「天辰さん、新宿で活動しているのだから、漱石を舞台化すべきだよ」
 と言われてしまって、今『こころ』の舞台化を目指してます」 との遠大な構想で
 (石川先生は、行政書士会新宿支部の重鎮で天辰先生のさらに先輩です)、
 いったいこれはどうなることかと思ったものです。

 そのときいただいた、団員募集のちらしです。
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 天辰先生は、行政書士会新宿支部の有志を集めて練習を開始したのですが、
 忙しく猛者揃いの先生方を、さすがの天辰先生も御しきれず方向転換をされました。

 天辰先生の手のひらで踊ってくれるであろう若い学生、
 文化活動・エンタテイメント活動をされる紳士・淑女・アーティスト、加えて、
 文化・社会活動繋がりの区議・弁護士の三雲先生を引きずり込み、
 新宿の行政書士のドンとしての政治力とお人柄で、
 新宿区の漱石記念活動繋がりの文化人・漱石研究者・演劇関係者に手を伸ばし、
 今回の公演の主要メンバーを次々に手中に収め、
 新宿ならではの劇団陣容となったのでした。

 メーリングリスト(ML)網に私も入れていただいたおかげで、
 この過程での天辰先生のMLによる秘密指令の全記録が、私の手元にあります。

 記念すべきMLによる最初の秘密指令が、2015年3月8付けの以下の文面です。
 ****************************************************
  グループメールの皆様
   グループメールのかたがたが、9人となりました、
   無理しないでのんびり楽しくおいでになれるときおいでいただければ
   嬉しいです。
   新宿区が誇る日本文豪の夏目漱石さんの生誕150の年の2年後には
   なんかやりましょう。
  てっちゃん天辰
 ****************************************************

 MLのメンバー全てが公演メンバーではないので、きっと、
 練習参加は5人程度あったと思われます。

 ●来る者拒まず去る者追わず、●練習と目標はテキトーに、●漱石への愛はしっかりと
 という今に至る劇団天辰のゆるーいコンセプトが既に形成され、
 天辰先生の強面イメージと程遠い「てっちゃん天辰」なる剽軽な座長名を使うなど、
 周到に考えられながら活動を開始されたことがよくわかります。

(続く)
タグ:夏目漱石
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2016年07月03日

Be-Bミニライブとフレンチシェフ誕生パーティ(2016-6-26)

 1〜3月がやけに忙しく、
 4月に息を吹き返してまとめ書したのですが、
 5〜6月がまたもや忙しく、
 ブログの更新がパッタリと止まってしまいました。

 6月末に息を吹き返したところに、
 美人ロック歌手のBe−Bから、
 6月26日にフランス料理店に来ないかとのお誘い。

 生き返ったところにデートの誘いとは渡りに船と、
 おニューのブレザーを着込んでいそいそと出かけました。

 場所は、埼玉県東村山市栄町のフランス料理店
 『ラ・フルール・ド・セル』

 西武新宿線久米川駅が最寄りの駅とのことで、
 西武新宿線での初めての遠出となりました。

 大昔、花王栃木研究所で研究開発をしていたことがあり、
 浅草発の東武伊勢崎線はよく利用していましたが、
 新宿発の西武新宿線も少し走ると景色がローカルになって趣があります。

 久米川駅から歩いて5分。
 Be−Bの友人も結構来ていると聞いていましたが、
 うまくいけばBe−Bと差し向かいで、
 フランス料理フルコースを静かな雰囲気で楽しめるか、
 と下心満載で到着したところ、エ、エ、エ、エ、・・・
 雰囲気全然違う・・・
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 西武新宿線沿いの住宅街。
 低層階ビルの1階のこじんまりとしたレストランの
 窓とドアを開放しての完全立食パーティでありました。

 Be−Bがお友達と立ち話をしていたのを見つけたので、
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 「この感じだとライブもやるの?」と聞いたところ、
 「そう、もう一組がメインだけど、私もやりますよ。
  今日は、レストランスタッフも兼ねるから、忙しくてごめんね。
  ゆっくり楽しんでいってね」

 ガチョーン、という感じでしたが、飲んで食べて聴いて見て楽しもうと
 気持ちを切り替えました。

******

 オードブル中心でしたが、これがとても美味しく、
 飲み放題のこれもやや濁った美味しい白ワインを飲みながら、
 ブラブラしていたら、いい具合に出来上がってきました。

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 日曜日の昼下がり、出席者が気持ちよくなってきた頃に、
 Be−Bが話していたメインの男女デュオによる、
 1960〜1980年代懐かしのアメリカンポップスを中心にした
 楽しい演奏が始まりました。

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 このレストランは、
 B−Beが久米川に住んでいた頃の、
 不良飲み友達であったフランス人のエリックさんが、
 美しい日本人の奥様と共に始めたそうで、
 毎年6月26日は、シェフであるエリックさんの誕生パーティとして、
 店を開放しているとのことでした。

 シェフのエリックさんはこの方です。
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 エリックさんが調理しているのは、チーズフォンデュで、
 このような機械で作ります。
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 左下の三日月形はチーズで、
 弦の部分を覆うようにしているトウモロコシの棒のようなものが電熱器です。
 電熱器で、三日月の弦の部分を5分ほどかけて溶かす間、
 エリックさんが煙草を吸いながらじっくりと待っています。
 そして、やおら電熱器をどけて、溶けた三日月の弦の部分を削りとって、
 下に置いたチーズの入った皿に溶けたチーズを流し落として、
 一丁あがりです。

 エリックさんのマイペースの調理に、長い列をつくって皆気長に待ち、
 かくいう私も30分待って、チーズフォンデュにありつけました。

 そうして時間を潰していたら、いよいよ、Be−Bの出番。
 今日は、フレンチポップスから入って、ロックへの流れでした。
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 エリックさんの息子さんの、
 たぶんガールフレンドであろう可愛らしいフランス人の女の子が、
 Be−Bと一緒に盛り上がっていました(Be−Bの美脚が眩しい)。
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 この女の子、日本語がペラペラで、ハンサムなお父さんに、
 「おとうさん! 今日はどうするの!」
 とそのままの日本語でおしゃまを言っていたのが本当にかわいらしかったです。

 Be−Bのライブには、
 追っかけの親衛隊おじさま達がいつも応援に駆け付けており、
 私が4月の中野のジェットバーで見かけた方々も大勢いらっしゃいました。
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 この日は、奥様の家族が受付をされ、
 80歳には見えないお父上が玄関横に出ずっぱりで
 頑張っていらっしゃいました。
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 左奥に奥様のお父上が佇んでいます。

 日曜日の明るいうちから飲んだくれるというのは気持ちがいいものです。
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 フィッシュペーストで作られた豚さんは、
 可哀想に、鼻がほとんど削られ食べられてしまいました。
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 またまた、男女デュオの出番です。
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 1980年代のディスコの名曲が始まると、老若男女、多国籍の人種が踊りだしました。
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 夜も更けてきました。
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 エリックさん特製の肉料理が出されました
 (私はもう満腹で入りませんでした。残念)。
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 そしてクライマックスは、やはりエリックさん特製のケーキ
 (これは別腹でなんとか。舌がとろけるかと)。
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 エリックさんとそのご家族、誕生日おめでとう!
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2016年04月24日

『北の大地の詩』と『幼年期の終り』

 表題の『北の大地の詩』の観劇報告をしたときに、
 この劇が土台としたアイヌ神話を即席調査して、
 下記のような粗筋であることを説明しました。

1.チキサ二姫らの神々が、未だ混沌とした大地に降臨し、
  大地から生まれ大地を支配していた魔神や悪魔を地底へと追いやり、
  世界を作り始め、やがて動植物や人間を作った。
2.天上でその様子をみていた雷神カンナカムイが、
  地上のチキサニ姫を見初め結ばれて神の子が生まれた。
3.降臨した中の神コタンコルカムイは、
  地上に築いた砦で神の子を育てる傍ら、洞窟に生活する人間に言葉を教え、
  知恵を授け、神の子が生まれたときにチキサニ姫に燃え上がった炎を授け、
  村を守護した。
4.神の子は、人間の子たちと育ち
  「輝く皮衣を着る者」」の意味「オキクルミ」と呼ばれるようになった。
  やがて人間は、洞窟を出て家を建て、オキクルミと共に道具を作り、
  火を使い、農耕する生活をしだした。
5.コタンコルカムイの予言に従い、
  オキクルミは人間を指導するリーダーとなり、
  天上から遣わされ隣村の水辺から迷い込んだ美少女神サロルン
  と恋に落ちた。
6.その頃、地底に追いやられた魔神(森うたう)が再び地上を襲い、
  隣村の水辺を暗黒に鎖してしまい、サロルンをさらい、
  そしてその暗黒が、オキクルミの村の水辺に到達しようとしてきた。
7.オキクルミは、村の危機とサロルンを救うべく、
  共に育った村の若者達と立ち上がり、父の雷撃に助けられ、
  魔神に操られる湖の巨大魔魚を格闘の末に退治し、魔神を一騎打ちして滅ぼす。
8.平和が戻った地上で、オキクルミはサロルンと結ばれ、
  人間と共に村の幸せに力を尽くすのだった。
9.しかし、長年月後、人間の堕落にあきれ果てたオキクルミは、
  いつか雷鳴と共に人間を見舞うとの言葉を残して姿を消してしまい、
  人間は深く後悔するも、雷鳴が鳴り響くと、
  オキクルミが来ていると信じて拝むようになった。

******

 この粗筋から、以下のような疑問がいろいろと湧きます。

(1)大地は、
   天上の神々がいたときからあったのか? あるいは、
   天上の神々によって創造されたのか?

   世界の神話をみても、
   大地は神によって創造される場合が多いので、
   ここでもそのようにしておきましょう。

   もし、神と共に既にあったのであれば、それは、
   アイヌ神話に独創性があることを示すのかもしれず、
   1つの研究対象になるように思います。   

(2)天上の神々が大地を創造したのであれば、
   何のために創造したのか?
   何故、わざわざ神でなければ抑え込めないほど
   絶大な力をもつ魔神や悪魔が生まれるように設計したのか?

(3)天上の神々は、何故人間を作ったのか?   
   上記(2)の回答にも関係しそうであるが、
   大地と魔神や悪魔は、人間にとって必要だから存在するのか?
   魔神や悪魔は、人間にとって必要なのであれば、
   何故、退治される必要があるのか?

(4)天上の神々のうち、何故2神だけが生殖能力をもつのか?
   生殖能力をもつ神は、後から発生した神なのか?

(5)何故、オミクルミを生んで育てることにしたのか?

(6)サロルンは、最初からいた神々の一人なのか?
   オミクルミのように、生殖能力のある神々が生んだのか?

(7)人間は何故堕落するのか?

(8)オキクルミはあるところまでは成長するが、それ以降は不死なのか?

 こういったことを考えていたら、
 アーサー・C・クラークの「幼年期の終り」が
 (私は創元推理文庫「地球幼年期の終わり」を読みましたが)、
 アイヌ神話とよく似たシチュエーションなのかもしれず、
 あれが1つの答えかもしれないと思いました。

 
タグ:アイヌ神話
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Be-B=和泉容ライブ(2016-4-10)

 この日は、昼間にプロパフォーマ―の関井君の出演舞台を鑑賞し、
 その後、Be-Bこと和泉容さんのライブを聴きにいきました。

 あの、結果的に舞台→ライブのはしごをしてしまいましたが、
 あくまで、仕事の合間に行ってますので、仕事はサボってません。

 Be-Bさんは、昨年閉店した事務所近間の居酒屋「よりみち」記事で、
 「よりみち」にフラッと入ってきた美人ロックシンガーです。

 美人を観ながらお酒を呑むのが何よりの楽しみなのですが、
 実際の彼女の歌も聴かねばと思いつつ、
 今年の1月の絶好の機会を風邪で寝込んで逃してしまいました。

 関井君の舞台から夕方には戻れたので、
 Be-Bさんのライブ予定でも確認してみるかと思って、
 BeBさんのブログを見たら、今晩は中野で行うとのことなので、
 急遽出かけました。

******

 場所は、中野駅前のふれあいロード沿いの高級Rock-Bar「JET BAR」。
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 通り沿いから狭い入口に続く階段を上った2Fで、
 いかにも怪しい、いや、妖しい雰囲気です。
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 店内は、以外にも綺麗で高級Rock-Barにふさわしい佇まい。
 後姿の髪の長い女性がBe-Bこと和泉容さんです。
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 Be-Bさん以外は、どなたが店員で、どなたがスタッフで、
 どなたがお客さんか判然とせず
 (かくいう私も一体何者?という感じでしたが)
 開演時間の7:30が過ぎても、当のBeBさんがおしゃべりの渦中にいて、
 何ともアバウトな雰囲気がよかったです。
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 まさか、今日はBe-Bさんを囲む会で、ライブ抜きか、
 と一瞬思ったのですが、店内を見回すと、天井近くに、
 ちゃんと案内が。
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 ステージも用意されているので、安心しました。
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 「Be-Bさん、振り向いて」とお願いしたら、
 何とも自然に、憂い顔のポージング。
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 ようやく、準備にはいりました。
 今回は、パーカッションの相棒が助っ人で参加とのことでした。
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 第1部開演です。
 さすがに、ワンショット、ワンショット決まっています。
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 チャージ300円、ウィスキーのロックのダブルが1000円と
 高級Rock-Barとは思えない手頃なお値段。
 BeBさんのリクエスト可能な曲リストを手元に聴き入ってました。
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 第一部が終わり、休憩に。
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 お客様方もくつろいでいます。
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 店内のポスターは1960〜1980年代。
 やはり、この頃のロックはシンプルでよかったかな。
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 Be-Bさんは、英語、仏語、一部アジア言語と日本語で対応できます
 とのことでしたので、
 カーペンターズまでのRockしか対応できない私の嗜好と重なる
 貴重な隙間ということで「あなたのとりこ」(勿論シルビーバルタン)
 をリクエストしました。

 「あなたのとりこ」のどこがRockか、
 と思われる向きもあるかもしれませんが、
 ご一緒した、Be-Bさんのファンクラブの筋金入りメンバーが、
 「あれ? 今日は俺リクエストしてないのに?」
 と叫ばれており、同じ嗜好の同胞がいるのだと安心しました。

 Be-Bさんも、アルコール燃料が充填され、気合いが入ってきました。
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 第2部の始まりです。
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 私も、かぶりつきの席に移動して、気合いを入れて撮影しています。
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 英語訛りの仏語Rock調の「あなたのとりこ」
 かわいらしくてよかったです。
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******

 第1、2部合せて2時間近い熱唱、ありがとうございました。
 楽しいひと時を過ごせました。

 帰り際、階段を下りていると、2階から顔を覗かせたBe-Bさんが、
 「緑のカーデガン素敵です♡♡♡」と言って下さいました。

 すいません、高級Rock-Barに場違いな、
 お昼の恰好のまま行ってしまい。

 1日の間に、舞台のヒロインと美人ロックシンガーに褒められて、
 私のおめでたい日曜日は終わったのでした。




 
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2016年04月23日

『北の大地の詩』

 行政書士の大先輩の天辰先生が主催する漱石演劇団で活動している
 2枚目のプロパフォーマーの関井君に、
 早稲田大学の大隈講堂でばったりお会いしたことは、
 以前の日誌ブログでお話ししたのですが、
 その関井君が振付けと出演をされるということで、表題の舞台を観にいきました。
 私が行ったのは、千秋楽の4月10日(日)でした。

 劇場は、京王新宿駅から急行で20分、
 仙川駅から歩いて10分の「せんがわ劇場」でした。

 仙川駅前の桜は既に葉桜状態でした。
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 駅前は整備されている美しい街並みです。
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 閑静な住宅街を抜けると「せんがわ劇場」が見えてきます。
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 「せんがわ劇場」の入口横の講演中の案内に、本劇が掲載されています。
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 中では、劇団関係の方々が入場券を受付ていらっしゃいました。
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 外観は打ちっぱなしコンクリート仕立てですが、
 内部はそれほど殺伐としていません
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 この待合スペースで、「もしもし、『あいうえお』でよくお食事を」と、
 私と同じくらいの世代の女性に声をかけられ、
 「あ〜、どこかで」ど思って、頭の中を様々な女性の姿が駆け巡ったのですが
 「あ〜!、『あいうえお』の美人女将姉妹ではないですか」とうことで、
 私が新宿通り沿いの事務所に勤務していた頃、お昼にカレー定食を食べていた、
 新宿御苑入口に近いところにある『あいうえお』の美人女将姉妹でありました。

 『あいうえお』は、昼は木造小屋然とした定食屋なのですが、
 夜になると、「深夜食堂」に衣替え
 (正確に言えば、夜の方が木造小屋に合せているということ)
 になる新宿ならではの美味しい呑み屋です。

 店内には、1960〜1970年代の鈴木清順をはじめとする、
 日活の怪しげな映画パンフが張巡らせてあり、
 今回の演劇関係者に色濃く関係しているのも納得がいくという佇まいの店です。

 さて、開演前の舞台の雰囲気です。神々がいる天上に繋がる山と地上です。
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 席に着くと、近くに座った観客の皆さん、
 舞台・映画関係の筋金の入った方が多いようで、
 面白い雑談が漏れ聞こえてきました。

 照明でスモークが浮き上がって舞台ならではの妖艶な雰囲気です。
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******

 私は、アイヌ神話は全く知らなかったので、
 ウィキペディアなどを参考にして神話の概要を把握した上で、
 うろ覚えの舞台の流れを再構築してみました。

《ストーリー》

1.チキサ二姫(森うたう)らの神々が、未だ混沌とした大地に降臨し、
  大地から生まれ大地を支配していた魔神や悪魔を地底へと追いやり、
  世界を作り始め、やがて動植物や人間を作った。

2.天上でその様子をみていた雷神カンナカムイ(関井博之)が、
  地上のチキサニ姫を見初め結ばれて神の子が生まれた。

3.降臨した中の神コタンコルカムイ(側見民雄)は、
  地上に築いた砦で神の子を育てる傍ら、洞窟に生活する人間に言葉を教え、
  知恵を授け、神の子が生まれたときにチキサニ姫に燃え上がった炎を授け、
  村を守護した。

4.神の子は、人間の子たちと育ち
  「輝く皮衣を着る者」」の意味「オキクルミ」と呼ばれるようになった。
  やがて人間は、洞窟を出て家を建て、オキクルミ(新澤明日)と共に道具を作り、
  火を使い、農耕する生活をしだした。

5.コタンコルカムイの予言に従い、
  オキクルミは人間を指導するリーダーとなり、
  天上から遣わされ隣村の水辺から迷い込んだ美少女神サロルン(神田清夏)
  と恋に落ちた。

6.その頃、地底に追いやられた魔神(森うたう)が再び地上を襲い、
  隣村の水辺を暗黒に鎖してしまい、サロルンをさらい、
  そしてその暗黒が、オキクルミの村の水辺に到達しようとした。

7.オキクルミは、村の危機とサロルンを救うべく、
  共に育った村の若者達と立ち上がり、父の雷撃に助けられ、
  魔神に操られる湖の巨大魔魚を格闘の末に退治し、魔神を一騎打ちで滅ぼす。

8.平和が戻った地上で、オキクルミはサロルンと結ばれ、
 人間と共に村の幸せに力を尽くすのだった。

 古事記の日本国創造、スサノオ伝説、ヤマトタケルミコト伝説、
 ギリシャ神話のプロメテウスエピソードなど
 と同じような構造をもっているように思えます。

 千秋楽を終えて、感極まる関井君とツーショット。やはり二枚目です。
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 ヒロインの神田清夏さんとズーズーしくツーショット。
 「緑のカーデガンがお似合いです♡♡♡」
 とか言ってただき、ほとんど孫と爺の組合せですがやに下がってしまいました。
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 ところで、舞台はどうであったかというと、以下のような感想をもちました。

 森うたうさん関井君の振り付けで俳優の動きが躍動感に溢れており、
 特に、出だし冒頭で、
 関井君演じる雷神と森うたうさん演じるチキサ二姫が出会い結ばれるまでが、
 セリフが一切なく舞踏による2神の絡み合いだけで構成されており、
 なかなかエロティックでよかったです。

 また、後半の、操演された巨大魔魚との闘いと、それに続く、
 これも森うたうさん演じる魔神と新澤明日さん演じるオキクルミの殺陣も、
 派手な音響と共にスペクタクルが続き面白かったです。

 一方、少し残念なのは、物語の全体像があまりよくわからなかったことです。

 このアイヌ神話、知ってみると、とても面白く、先の粗筋の後、
 人間の堕落にあきれ果てたオキクルミは、
 いつか雷鳴と共に人間を見舞うとの言葉を残して姿を消してしまい、
 人間は深く後悔するも、雷鳴が鳴り響くと、
 オキクルミが来ていると信じて拝むようになった、
 という後日談があり、なかなか余韻の残る結末となっています。

 せめてパンフレットに原作たる神話の粗筋は載せて欲しかったのと、
 舞台では説明なく、上記1、3及び4の背景なしに、
 2及び5〜8が展開されるので、ナレーションでもよいので、
 背景がわかるような工夫が欲しかったと思います。

 また、同じ役者が一人二役をやる場合は、
 その必然性を組込んで欲しかったと思います。

 森うたうさんは、オキクルミの母親であるチキサ二姫と魔神の二役、
 関井君はオキクルミの父親である雷神と村の若者の二役で、
 結構重要な役どころを演じています。

 オキクルミの母親と魔神が実は同一人物である、などという設定も、
 神話を離れれば、それはそれで興味深い趣向なのですが、
 そのような趣向ではないとなると、
 人が足りないので1人何役もしたという感じになるので、
 役者が好演しているだけに勿体ないと思います。

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 短期間に、コロッケさんプロデュースのモノマネエンターテイメント舞台と、
 オーソドックスな本格的舞台とを続けてみたことになり、
 久々に精神衛生が回復した気分です。

 関井君の今後の頑張りに期待します。














タグ:アイヌ神話
posted by Dausuke SHIBA at 20:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台・ライブ

2016年04月03日

春と桜とMIMICと

 今年に入ってから、東京オリンピック関係の論文と講演の準備で、本業で外出する以外は新宿の事務所に籠っていましたが、世間はいつの間にか春になっていたという気分です。

 事務所の前の花桃も、普段はただ一本の木が突っ立っているだけの存在感のなさですが、今年も健気に咲きました。
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 近所の花屋さんの桜草も満開です。
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 近所のお寺の桜も例年通り絢爛豪華に花開いています。
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 前回の大田区の講演の後にコロッケさんにお会いする機会があったのですが、
 今回の大田区の講演の後も、六本木で仕事した帰りに、コロッケさんのプロデュースするものまねショーを見る機会をいただきました。

 場所は、地下鉄麻布十番駅の前にある前衛的なデザインのビル「ジュールA]の地下1階にあるものまねショーパブ「CROKET MIMIC TOKYO」。

 見栄えがコンパクトでかわいらしいハンバーグステーキ(結構ボリュームあります)と大瓶並容量のグラスビール(Carlsberg)でお腹を満たしながら、1時間のこちらも満腹感のあるものまねショーを楽しみました。

 ものまね芸人さん、シルクドソレイユ風パフォーマー、ライトセーバーパフォーマー、専属ダンサーによる迫力のある出し物が続きます。

 舞台は決して広くないのですが、立体的に組み込まれており、半透明スクリーンと煙幕を活用して描き出される色彩豊かな映像とシャープな音響の中で、芸人さん達が体全体を駆使してパフォーマンスを演じていました。

 いまどきの芸人さんの身体能力の高さは驚くばかりで、ここはコロッケさんとしての押えどころのように感じました。

 続く3枚の画像は、最後のフィナーレの場面ですが、それまでに各芸人さんそれぞれが単独で演じます。
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 舞台は立体的に組み込まれています。
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 まるで本人かと思ってしまうようにそっくりなのですが、どこまでいってもモノマネはモノマネで、ズーッと変な感じが続き、その変な感じが味わい深くもあり、物哀しくもありです。
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 私はここ何年もTVを観ておらず、それぞれの芸人さんは存じ上げていなかったのですが、かえって新鮮でよかったかもしれません。

 特に、イントロから歌いだす直前までの雰囲気を、ほぼ完全に再現している後川清さんが面白かったです。
 後川さんは、このまま一生、この一張羅芸で押し通すのでしょうね。応援します。

 後川清さんは結構二枚目で、こうしてみると、それほどソックリというわけではないのですが・・・。
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 また、今回の出し物の中で唯一の本物であるライトセーバーパフォーマンスは、ライトセーバーの回転が描き出す万華鏡のような色彩デザインが秀逸でした(これも本来は火炎を使用するとのことなので、ご自身達によるモノマネの範疇かもしれません)。

 コロッケさんの狙いは成功していると思います。
 欲をいえば、かつてのシャボン玉ホリデーのようなコントの間があれば、各パフォーマンスのメリハリがさらに鮮明になるかと思いました。

 今後のコロッケさんのプロデュースの進化を期待します。

 彼女は、ブサイク風に紹介されるせいで、舞台ではそのように見えてしまうのですが、近くでみるとお美しいので驚きました。
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 「CROKET MIMIC TOKYO」に訪れる機会をいただきました株式会社ミミック エンターテイメントの南原様には深く感謝申し上げます。


 
posted by Dausuke SHIBA at 10:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台・ライブ