2018年10月28日

特許法等改正説明会2018(H30.10.9)の参加報告

 弁理士会の必修科目ということで、標記の説明会を聴きに、
 東京ビッグサイト(国際会議場)まで出向きました。

 特許庁の近くの霞が関周辺にいくらでも会場がありそうに思いますが、
 10月とは思えない暑さの中、何でこんな遠いところでやるんでしょう、
 と、受付の特許庁の職員の方に愚痴を聞いてもらいながら入場しました
 (職員の方も賛同の表情で頷かれていました)。

 1000人以上は入れそうな広大なホールに、
 弁理士・弁護士・企業担当者が数百人くらいいたように思います。

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 私の顧客に最も影響のありそうな
 「中小企業等の特許料等の一律半減制度の導入」について、
 特許庁の説明が非常に解り難かったので、
 このブログで注意喚起も兼ねて報告します。

《特許料等の軽減制度とは》

 例えば、今から特許庁に特許出願をすると、
 権利化までに以下の特許庁費用が必要です
 (なお、弁理士に手続を依頼するとさらに弁理士費用が別に必要です)。

●特許出願時: 1万4000円
●審査請求料:13万8000円(請求項の数が5の場合)
●特許料   :19万3300円(請求項の数が5で10年分の場合)

 これらを一度に支払う必要はなく、
 それぞれ1〜3年ほど空けて支払うことになります。

 特許出願料は、中小企業の社長の2回分の飲み代で何とかなりますが、
 審査請求料と特許料は請求項の数が増えると更に増大するので、
 中小企業の社長のポケットマネーで、という訳にはいきません。

 そこで、特許庁は審査請求料と特許料を、中小企業の類型によって、
 1/2減額と2/3減額の2通りの特許料等減免制度を運用しています。

《現状の特許料等の軽減措置の概要》

 特許庁は、中小企業を3類型に分けてそれぞれについて、
 適用資格を定め、結構面倒な資格の証明を要求します。

●類型1(1/2減額):法人税非課税中小企業/中小ベンチャー企業等
●類型2(1/2減額):研究開発型中小企業等
●類型3(2/3減額):中小ベンチャー/小規模企業等

 なお、上記の「類型1〜3」と下記の「類型A〜B」は筆者による仮称です。

《法改正の内容》

 この類型が、以下の2類型になるというのが、法改正の内容です。

■類型A(1/2減額):類型B以外の全ての中小企業
■類型B(2/3減額):中小ベンチャー/小規模企業等

 類型Aの資格証明の手続は簡略化され(どうなるかは検討中)、
 類型Bは、現行の類型3のままです。

 但し、これまでは、類型1及び2に属さず、定額支払っていた中小企業が、
 類型B以外の全中小企業として1/2減額の対象になりますので、
 特許庁の収入が減少します。

 そこで、特許庁は審査請求料を値上げすることを検討しています。

 従って、これまで類型1〜3の制度を利用していた中小企業にとっては、
 値上げされてしまうことになります。

 以上が、筆者が理解した法改正の内容で、
 何となく体のよい値上げ話ではないか、と言う気がしてしまうわけです。

《特許庁の説明》


 今回の説明会で、特許庁はとても解り難い説明をしておりました。

(1)特許庁担当者は、類型1〜3を一律1/2減額の改正すると説明し、
   配布された資料も、そのようにしか取れない説明をしています。

   会場の弁理士先生の「2/3減額制度は残るのか」との質問に対して、
   特許庁担当者は初めて「実は残ります」と回答しており、
   そんな大事なことは最初に話して欲しいものだと思いました。

(2)特許庁担当者は、今回の法改正の趣旨を、
   特許出願数に占める割合が15%に留まる中小企業の出願を
   活性化することを法改正の目的としていると説明し、
   配布された資料もそのように説明しています。

   しかし、類型1〜3に属さない中小企業は、
   特許料等を定額支払う程度には体力がある筈なので、
   これまで出願していなかったところが、
   特許料等が半額になった程度で、俄かに出願をし出すとは、
   到底思えないわけです。

   そうであれば、
   これまで減免制度を受けていた中小企業が値上げ分の費用を負担して
   これまで定額支払って既に出願していた中小企業のために、
   半額で済むようにしてあげているだけになり兼ねないのではないかと、
   危惧するわけです。

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 ということで、特許庁には、
 中小企業の出願を増大するためであれば、
 中小企業が出願したがらない理由をもう少しきちんと分析し、
 全体的なシステマティックな支援の中で、
 特許料等の減免制度をどのように設計すれば効果的かを、
 真剣に考えて欲しい、というのが、筆者の感想でありました。
posted by Dausuke SHIBA at 16:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 特許

2017年07月22日

「弁理士の業務の実体等に関する調査研究」アンケートが来ましたが・・・

 一昨日(2017/7/20)、表題のアンケートが届いたので、中身をみたら、
 「経済産業省特許庁委託調査研究事業」ということで、
 以下に添付した送り状と共にアンケート調査票が入っていました。

アンケート調査への協力のお願い.jpg

 このアンケート調査ですが、
 私は下記(特に「3」)の点でとても違和感があり、
 パスしようかと考えています。

 なお、本記事は、このアンケート調査の差出人を非難する意図はなく、
 私が感じた素朴な疑問を書きとめただけですので、
 誤解なきようお願いします。

1.実施主体が不明
 このアンケート調査の送り状の差出人は、
 「受託事業者 株式会社サンビジネス
  事業担当部局 経済産業省特許庁総務部秘書課」
 となっているのですが、いったい誰が実施主体なのかが不明です。

 「株式会社サンビジネス」はアンケート作業の受託事業者であって、
 送り状を見ても「問い合わせ先」以上のものではなさそうですが、
 送り状の本文は「株式会社サンビジネス」が書いたことになっており、
 事業主体かのようにも読めてしまいます。

 「特許庁総務部秘書課」も「担当部局」というだけで、
 このアンケート調査でどのような役割を担当しているのか、
 何の説明もありません。

 封筒に、「経済産業省特許庁委託調査研究事業」と書いてあるので、
 特許庁が事業主体らしいと忖度はできるのですが、
 当該事業とこのアンケート調査がどのような関係にあるのかの
 説明も一切ありません。

 普通であれば、送り状の差出人は、
 「経済産業省特許庁委託調査研究事業」の責任者名義とし、
 この責任者の名の下に、
 ●当該事業と当該アンケート調査の関係、
 ●特許庁総務部秘書課の枠割、及び
 ●株式会社サンビジネスの役割を説明した上で、
 調査対象である弁理士に協力を求めるのではないでしょうか?

2.平成26年弁理士法改正で
  「オープン・クローズ戦略」に関する相談業務が新設された???

 送り状の
 「弁理士法は、平成26年に一部改正され、・・・
  いわゆるオープン・クローズ戦略に関する相談業務の新設・・・
  が盛り込まれました」
 のくだりを読んで、とても喉に引っ掛かるものがありました。

 弁理士法平成26年改正で新設された相談業務には以下があります:、
 第4条第3項
  弁理士は・・・弁理士の名称を用いて、他人の求めに応じ、
  次に掲げる事務を行うことを業とすることができる。・・・
 一 特許、実用新案、意匠、商標、回路配置若しくは著作物に関する権利
   若しくは技術上の秘密の売買契約、通常実施権の許諾に関する契約
   その他の契約の締結の代理若しくは媒介を行い、又は
   これらに関する相談に応ずること。
 二 ・・・
 三 ・・・事業活動に有用な技術上の情報・・・の保護に関する相談
   に応ずること。

 どこにも「オープン・クローズ戦略に関する相談業務」はないので、
 特許庁総務部秘書課に電話で確認しましたら、
 「弁理士法平成26年改正の逐条解説で説明しているので
  平たく書きました」
 とのことでした。

 特許庁総務部秘書課が作成した
 「平成26年法律改正(平成26年法律第36号)解説書」には
 この第3号について以下のような解説がなされています。
 「優れた技術や商品を生み出すイノベーションを促進するために、
  企業の研究開発等の成果の取扱いについて、
 ⒜特許による収益の確保、
 ⒝製造のノウハウなど秘匿すべき技術や営業秘密の「ブラック・ボックス」化、
 ⒞標準化戦略による市場規模・市場シェアの拡大、
  といった取組を最適に組み合わせながら、
  自社の「強み」の差別化・付加価値の最大化を図る
  「オープン・クローズ戦略」が重要となっている」

 法文は概念的でそれを読んだだけでは
 その趣旨が理解できない場合も多いので、
 専門官庁に逐条解説で平たく解説いただくことは全く問題ないのですが、
 知財の専門家向けのアンケート調査において、柱書文とはいえ、
 そこまで平たく書いていただかなくても、とも思いますし、
 私のように物事を素直にとれない偏屈には、
 却って誤解を招くのではないかと思った次第です。

 「特許を出すか、ノウハウにするか」は、
 私が会社勤めし始めた頃には既に、
 特許に関わる技術者の誰もが悩ましく意識していた古典的な問題で、
 今さら仰々しく「戦略」というほどのものでないのではとも思いますし、
 そもそも「オープン・クローズ戦略」は、
 知財分野の学者かコンサルタントが使いだした概念用語で、
 その内容は広く多彩で法的定義などとてもできない用語です。

 ですから、やはり、特許庁という専門官庁が、
 「平成26年弁理士法改正で
  「オープン・クローズ戦略」に関する相談業務が新設された」
 などという趣旨の平たすぎる解説はしない方がよいと思うわけです。

 私などは、平たすぎて「素人臭い」ともとれるようなこの部分を読んで、
 このアンケート調査はもしかして、特許庁の名を借りた・・・
 などとあらぬ誤解をしてしまい、
 それだけでも胡散臭い感じが拭いきれなくなり、
 このアンケート調査をどう受け取ったものかと、悶々と悩んでしまいます。

3.同業の特定企業に弁理士事務所の情報を集中管理させてよいのか?
 「株式会社サンビジネス」は、知財コンサル系事業を主体としており、
 弁理士事務所と同業といえる会社のようです。

 このアンケート調査は、
 弁理士事務所の詳細な情報を回答者に記入させるようになっており、
 これらの情報が「株式会社サンビジネス」で集中管理されるというのは、
 どうもしっくりこないわけです。

 特許庁総務部秘書課に電話で問い合わせたところ、
 このアンケート事業を競争入札で決まった「株式会社サンビジネス」に
 委託したとのことで、
 特許庁総務部秘書課にも「株式会社サンビジネス」にも
 何らやましいところはないのですが、
 アンケート回答者としては戸惑わざるを得ません。

 特許庁総務部秘書課の担当者は、
 もし「株式会社サンビジネス」に情報が行くのがいやであれば、
 特許庁総務部秘書課に直接回答してもらってもよい、
 と説明されるのですが、やはりちょっと筋が違うように思うわけです。

 近年、役所の事業を競争入札で民間に委託することが浸透していますが、
 やはり、安ければ誰がしてもよいというものではなく、
 競争入札に馴染むか否かは、事業主体が考えて欲しいと思います。

 今回のアンケート調査などは、
 それこそ、弁理士事務所との利害関係があまりない
 特許庁OBが運用する特許庁の外郭団体にしてもらった方が、
 却って安心なのではないかとも思ってしまいます。

******

 私も日常お世話になっている特許庁による研究のためのアンケート調査
 に協力したいのはやまやまですので、
 協力し易い体制をつくっていただきたいと希望する次第です。
posted by Dausuke SHIBA at 09:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 特許