2019年06月21日

『陸王』こはぜ屋のために知財コンサルティングをする(その5:第4・5話)

■幕間■
 『陸王』第4話では、
 茂木選手(竹内涼真)を契約選手とするアトランティス社の内部事情が描かれます。
 右向き三角1茂木選手が改良『陸王』を履いてその良さを実感するが、
  結局それ以上は改良『陸王』を履かず宮沢社長(役所広司)はがっかりする。
 右向き三角1茂木選手のシューフィッターでアトランティス社に所属する村野(市川右團次)が、
  茂木選手をトップランナー毛塚(佐野岳)の当馬にしようと、
  アトランティス社が画策するのを知り、
  アトランティス社と衝突した挙句に退職、茂木選手のためにこはぜ屋の顧問となる。
 右向き三角1茂木選手は、宮沢社長と村野のサポートを受け、
  アトランティス社の改良シューズにするか改良『陸王』にするか逡巡した結果、
  改良『陸王』を履いて、所属するチーム内レースに出場する。
  茂木選手は、こはぜ屋の社員が見守る中、健闘するが、
  改良『陸王』の履き心地のよさのため、うっかり走りすぎて足がつり完走を逃す。
 右向き三角1しかし、茂木選手は怪我からの復調の手応えを掴む。
 右向き三角1茂木選手が宮沢社長にアッパー素材をもう少し改良できないか、と注文をだす。

 詳細はこちらが参考になります↓
http://drama-night.com/tbs/rikuou-1wa
http://drama-night.com/tbs/rikuou-1wa2/2
http://drama-night.com/tbs/rikuou-2wa
http://drama-night.com/tbs/rikuou-3wa
http://drama-night.com/tbs/rikuou-4wa
http://drama-night.com/tbs/rikuou-5wa

 この中で、以下のような知財戦略の説明が挿入されてもよいでしょう。

■第4話■
●こはぜ屋の事務所●
 宮沢社長が社員全員を集めて、新規スポーツシューズの進捗を説明している。
〔宮沢〕
飯村顧問と大地のお陰で柔らかくて耐久性のある改良『陸王』が完成しました。
    飯村顧問と大地はよくやってくれました。

    西島先生には、この成果を基にして3件の特許出願をしてもらいました。
    富島専務は、これら3件について、
    飯村顧問と大地の特許を受ける権利のこはぜ屋への譲渡契約を頼みます。
    (富島専務が頷く)

    西島先生には、さらに、特許調査をしてもらい、
    『陸王』の開発に影響ありそうな他社特許はないとのことでした。
    さあ、これで、いよいよ、改良『陸王』の試作品を茂木選手に履いてもらうぞ!

■幕間■

 茂木選手が、こはぜ屋と秘密保持契約を結んでいれば、
 茂木選手は、宮沢社長が届けた『陸王』を、ドラマのように大っぴらには履けず、
 監督や仲間に隠れてこそこそと履くことになり、
 「お! これは凄いスポーツシューズだ」と実感することになるでしょう。
 この当り、もう少しドラマチックにしないといけませんね。
 
 ******

 『陸王』第5話では、以下のエピソードが展開されます。
右向き三角1契約選手である茂木選手が『陸王』の良さに傾くのをみたアトランティス社が、
  茂木選手仕様の改良シューズ『RU』を提供して巻き返しを図ります。
右向き三角1茂木選手は復活をアピールするため、ニューイヤー駅伝にエントリーしますが、
 そこで、『陸王』を履くか『RU』を履くかが山場となります。
右向き三角1宮沢社長は、茂木選手にニューイヤー駅伝で『陸王』を「履いてもらうために、
  アッパー素材の改良にとりかかります。

 こはぜ屋さんは、『陸王』完成に向けて貪欲に改良を重ねており立派です。
 顧客の技術開発に寄り添って知財戦略を検討するのが弁理士の役目です。
 「低弾性シルクレイ」をソール素材とした『陸王』について、
 西島弁理士は特許出願1〜3をしましたが、さらに踏み込んだ提案をします。

■第5話■ 
●西島特許事務所●
 宮沢社長と西島弁理士がミーティングテーブルを挟んで対面しているところに、
 秘書(石田ゆり子)が、曙橋の大角玉屋の高級和菓子と緑茶を置いて、
 にこっと笑みを浮かべて退室する。
〔宮沢〕西島先生、というわけで、
    シルクレイ樹脂をソール素材にした改良『陸王』は茂木選手に断られましたが、
    その後、チーム内レースでは履いてくれて、とても良い感触だと言ってくれました。
〔西島〕良かったですね。
〔宮沢〕それから、資金稼ぎのために開発した、
    シルクレイ樹脂を応用した地下足袋『足軽大将』が当たりました。
    おかげで、特許出願1〜3の出願と特許調査の費用は余裕で回収できましたし、
    これからのさらなる特許費用も対応できると思います。
〔西島〕そうですか。技術的には後戻りせずに進展していますね。
    特許出願1〜3は、『足軽大将』も範囲に含むようになっていますから、
    将来は特許地下足袋ということになりますよ。
    それと、『足軽大将』も商標登録出願しておきました。
    ほかに進展はありましたか?
〔宮沢〕西島先生、いつもありがとうございます。
    シルクレイ製造装置が不調で、飯村顧問が怪我で入院している間に、
    大地が1人で修理しようとしたら、飯村顧問が装置図面を見せてくれず、
    頭を抱えたことは先日お話しましたが、
    シルクレイ特許の明細書に図面がある程度書いてあるはず、との
    西島先生のアドバイスに従って、大地が特許図面を見て相談したら、
    飯村顧問が大地の熱心さに驚いてあっさり装置図面を見せてくれました。
〔西島〕それは良かった。お役に立てたようで嬉しいです。
〔宮沢〕茂木選手から注文が付いたアッパー素材の件ですが、
    意外にも融資担当の大橋課長が打開策をアドバイスしてくれました。
〔西島〕それも良かったですね。大橋課長はどのようにアドバイスしてくれましたか?
〔宮沢〕大橋課長は、『足軽大将』の製造現場に足を運んでくれて、
    我々の『足軽大将』の製造管理にかける熱意を感じ取ってくれたことと、
    我々が特許出願と商標登録出願をしている点も評価してくれ、
    何とかまとまった融資ができると言ってくれました。
    そのときに、アッパー素材を提供できそうな織物メーカーとして、
    タチバナラッセル社を紹介してくれたんです。
〔西島〕宮沢社長、茂木選手が改良『陸王』を履いて復調が注目され、
    新たなアッパー素材の可能性もでてきましたから、
    今後の知財戦略として、以下の2点を提案します。
    @タチバナラッセル社のアッパー素材に適した織物が決まりましたら、
     すぐに連絡して下さい。
     アッパー素材に特徴のあるスポーツシューズとして特許出願4を検討します。
    A『陸王』にとっての基本特許出願である特許出願1〜3を早期審査にかけて、
     権利化を急ぎましょう。
     アトランティス社も、『陸王』に注目しだしてますからね。
     今から審査請求すれば3ヵ月後には特許庁から拒絶理由通知が届く筈です。
     宮沢社長、正岡様と私とで、審査官と面接に行きましょう。
〔宮沢〕え〜、特許庁の審査官と面接ですか〜。
〔西島〕審査官は、発明者から見ると、
    浮世離れした何を考えているのかわからない人に見えると思いますが、
    実際に会うといろいろな人がいて面白いですよ。
    何も取って食われるわけではないので、気分転換に行ってみましょう。
    特許庁は虎ノ門本庁舎が工事中なので、審査官は六本木仮庁舎にいます。
〔宮沢〕おー、六本木ですか。あけみさんは喜びそうだな。
(続く)

posted by Dausuke SHIBA at 21:02| Comment(0) | TrackBack(0) | TVドラマ

『陸王』こはぜ屋のために知財コンサルティングをする(その4:第3話)

■幕間■
 『陸王』第2話では
 特許樹脂「シルクレイ」をソール素材に最適と考える宮沢社長(役所広司)が、
 行方不明になっていた特許権者の飯村氏(寺尾聰)を探し出し、
 説得に説得を重ねて、飯村氏からライセンスを受けることに成功しました。

 その間に、西島弁理士は「シルクレイ」を使用する前段階の試作品について、
 特許出願をします(特許の無名塾版『陸王』第2話)。
 
 『陸王』第3話では、
 銀行の融資担当の大橋(馬場徹)が、新規スポーツシューズのための融資を渋り、
 宮沢社長の息子の大地(山崎賢人)の就活がうまくゆかず、
 飯村氏と大地が取り組む「シルクレイ」の改良は進まず、
 宮沢社長が届けた『陸王』試作品を茂木選手(竹内涼真)は履いてくれず、
 『陸王』の実用化に向けた開発が停滞してしまうエピソードが進みます。

 詳細はこちらが参考になります↓
http://drama-night.com/tbs/rikuou-1wa
http://drama-night.com/tbs/rikuou-1wa2/2
http://drama-night.com/tbs/rikuou-2wa
http://drama-night.com/tbs/rikuou-3wa

 こういうときに、西島弁理士(西島秀俊)は宮沢社長をどうサポートするかを
 挿入してみました。

■第3話■
●西島特許事務所●
 秘書(石田ゆり子)が電話を取る。
〔秘書〕西島先生、宮沢社長からお電話です。
〔西島〕宮沢社長、何か進展がありましたか?
〔宮沢〕西島先生、飯村氏と交渉することに成功しました。
    飯村氏は最初渋ってましたが、何とか説得した結果、
    「シルクレイ」特許をこはぜ屋にライセンスしてくれることになりました!
〔西島〕宮沢社長、それはおめでとうございます。
    それでは、私の方から、ライセンス契約書と秘密保持契約書を送りますから、
    飯村氏と契約を交わして下さい。  

●こはぜ屋の事務所●
 西島弁理士が、宮沢社長から「シルクレイ」の進捗状況を聞いている。
〔宮沢〕西島先生、飯村氏がこはぜ屋の技術顧問になってくれて、
    就活が上手くいかずブラブラしている大地を助手についけて、あれから毎日、
    2人でシルクレイ製造装置で柔らかいシルクレイの製造条件を検討してますが
    なかなかうまくいきません。
〔西島〕宮沢社長、大丈夫ですよ。
    佃社長(三上博史/阿部寛)のおかげで、
    ソール素材の柔らかさの目標値はわかっています。
    目標値がわかっていれば、樹脂製造技術者は製造条件を必ずみつけますよ。

●西島特許事務所●
 秘書(石田ゆり子)が電話を取る。
〔秘書〕西島先生、宮沢社長からお電話です。
〔西島〕宮沢社長、何か進展がありましたか?
〔宮沢〕西島先生、飯村氏と大地が、ついに柔らかいシルクレイの製造に成功しました!
    いやー、ここまでくるのに半年かかりました。
〔西島〕宮沢社長、ここで気を抜いてはだめですよ。
    「シルクレイ」に関する特許出願を検討しましょう。
〔宮沢〕え〜!、西島先生、「シルクレイ」はもう特許になっているのに、
    これ以上、特許出願できるんですか?
〔西島〕勿論ですし、当然しなければいけません。
    電話では長くなるので、こはぜ屋さんに行って説明します。

●こはぜ屋の事務所●
 西島弁理士が、宮沢社長と富島専務(志賀廣太郎)に、
 今後の特許出願の可能性を説明している。

《基礎出願》
 シルクレイ樹脂ではない既存の樹脂を使用した、
 基本コンセプトを満たしますが、耐久性が不足する試作品については、
 先日出願しました。

《基礎出願に基づく国内優先権主張出願》(特許出願1)
 そこで、先日した基礎出願の内容に、シルクレイ樹脂を使用した、
 基本コンセプトと耐久性の両方を満たすスポーツシューズを加えて、
 国内優先権主張出願をして、これを改めて基本特許出願とします。
 基礎出願から1年以内ですから、このような特許出願ができます。

《低弾性シルクレイ樹脂、その製造方法及びその製造装置》(特許出願2)
 従来は硬いとばかり思われていたシルクレイ樹脂に対して、
 飯村氏と大地君が半年間試行錯誤しして、ある特定の範囲の加工温度にすると、
 誰も予想しなかった柔らかい低弾性シルクレイ樹脂を得たのです。

 従って、低弾性シルクレイ樹脂は、
 飯村氏の特許には開示されていなかったことになり、
 飯村氏のシルクレイ樹脂・製造方法・製造装置に関する特許があっても
 選択発明として新規性と進歩性を有する発明といえます。そして、
 加工温度を特定の範囲にするシルクレイ樹脂の製造方法も特許性がありますし、
 低弾性シルクレイ樹脂の製造装置も特許性があります。

 こはぜ屋さんがこれらについて特許権を取得すれば、
 低弾性シルクレイ樹脂は、こはぜ屋さんのライセンスを受けなければ、
 飯村氏といえども製造できず、他人にライセンスできません。

《低弾性シルクレイ樹脂を使用した靴用樹脂、靴底及び靴》(特許出願3)
 靴用途に限定した低弾性シルクレイ樹脂の発明です。
 こはぜ屋さんが特許権を取得すれば、
 誰もシルクレイ樹脂を靴用途に使用できなくなります。

〔宮沢〕私も冨島も頭が混乱して、
    西島先生のご説明にほとんどついていけなくなってますが、
    すいません、結局、特許出願1〜3をすると、
    こはぜ屋にどんなメリットがあるのでしょうか。
〔西島〕すみません。『陸王』が素晴らしい発明なので、
    目一杯の可能性を考えてしまいましたが、ややこしくなりました。
    要するに、貴社には以下のメリットがあると考えて下さい。

    @こはぜ屋さんが、これらの特許出願をして特許権を取得できれば、
     低弾性シルクレイ樹脂については、
     アトランティス社を始め、他社は手も足も出すことができなくなり、
     飯村氏も、どこにもライセンスできなくなります。

    A飯村氏のシルクレイ樹脂に関係する基本特許はあと6年で切れるので、
     こはぜ屋さんが、飯村氏から独占的なライセンス契約を結んでも、
     シルクレイ樹脂を独占使用できるのは、『陸王』販売からせいぜい5年です。
     ここで、低弾性シルクレイについて、こはぜ屋さんが特許権を取得すれば、
     飯村氏のシルクレイ樹脂に関係する基本特許を実質的に15年延命できる
     ことになり、こはぜ屋さんにとって、
     他社を排除した独占市場の中で、十分な投資回収期間を確保できます。
〔冨島〕西島先生、特許出願のメリットはよくわかりましたが、
    特許出願費用は最初の30万円どころか、100万円を超えてしまいますね。
    社長、どうするんですか。本当に発明名貧乏にならないのでしょうね。
〔西島〕富島専務、そこは私も考えたところですが、
    埼玉県でも、中小企業の開発支援事業をしていて、
    特許出願費用も支援してくれます。ダメもとで申請してみませんか。
    『陸王』は特許性のある技術の塊ですから申請が通る可能性はあると思います。
〔宮沢〕そうですね。我々も今ある様々な支援制度を利用しない手はありませんよね。
    私の方でも、せっかくのシルクレイ樹脂を応用できないか考えてみます。
〔西島〕それと、今回の特許出願を準備するときに、
    こはぜ屋さんが『陸王』を製造販売してときに侵害してしまう他社特許の存否も
    突っ込んで調査してみます。
    先日、基礎出願をする際に、念のため、先行技術は調べていて、
    他社は、シルクレイ樹脂並に強靭で、
    シルクレイでも困難だった低弾性を有する樹脂などあるはずがない
    という先入観があるのかもしれませんが、
    低弾性の樹脂をソール素材とする特許出願はなかったので、
    おそらく、『陸王』に影響する他社特許はないと思いますけどね。
〔宮沢〕西島先生だけが頼りですので、よろしくお願いします。    
(続く)
posted by Dausuke SHIBA at 20:25| Comment(0) | TrackBack(0) | TVドラマ

『陸王』こはぜ屋のために知財コンサルティングをする(その3:第2話)

 『陸王』第1話では、
 老舗の足袋製造メーカーのこはぜ屋の4代目社長である宮沢(役所広司)が、
 こはぜ屋の将来のために、
 こはぜ屋の縫製技術を導入した新規スポーツシューズの開発に着手し、 
 足袋縫製技術者の正岡あけみ(阿川佐和子)をリーダーに据え、
 新規スポーツシューズの試作に、社員の残業を全て投入するのですが、
 基本コンセプト(ミッドフット走法に適したフィット感と軽さ)を達成するも、
 ソール(靴底)素材の耐久性が不足するという壁に突き当たりました。

 詳細はこちらが参考になります↓
http://drama-night.com/tbs/rikuou-1wa
http://drama-night.com/tbs/rikuou-1wa2/2
http://drama-night.com/tbs/rikuou-2wa

 ここまでは、ドラマ通りなのですが、特許の無名塾版『陸王』第1話(後編)では、
 ここで、弁理士を登場させて、ドラマにはない展開をさせてみました。
 
 宮沢社長は、銀行の融資担当の坂本(風間俊介)に、
 特許出願を検討すべきと言われ、西島弁理士(西島秀俊)を紹介されます。

 宮沢社長は、壁に突き当たった状況で特許出願など夢のまた夢と思いつつ、、
 西島弁理士に会いに行きました。

 ところが、西島弁理士は、宮沢社長から、壁に突き当たった状況を聞きながら、
 新規スポーツシューズの発明は既に完成しているので、
 特許出願作業を開始しましょうと言いだします。

 宮沢社長が、この人は何で話を聞いただけで、
 特許出願できることがわかるのかと半信半疑のまま、
 西島弁理士に特許出願を託したところで第1話は終わりました。

 第1話の後、第2話までは、だいたいドラマの通り進展します。
 右向き三角1銀行は、こはぜ屋の無謀な新規事業を止めなかったとして坂本を左遷し、
  坂本の上司だった後任の大橋課長(馬場徹)が、宮沢社長に、
  こはぜ屋のリストラを提言し、宮沢社長は抵抗します。
 右向き三角1新規スポーツシューズの試作品を学校の採択コンペにエントリーするも、
  書類審査で、競合のアトランティス社に敗れます
  (西島弁理士は、コンペでの試作品の説明も新規性喪失にならないように、
   何らかのアドバイスをしたはずです)。
 右向き三角1左遷された坂本が、
  宮沢社長にソール素材として特許樹脂「シルクレイ」を紹介します。

 この流れの中で、弁理士がどう考えるかを挿入してみます。

■第2話■

●こはぜ屋の事務所●
 宮沢社長が社員全員を集めて、新規スポーツシューズの進捗を説明している。
〔宮沢〕新規スポーツシューズの特許出願を、西島先生に頼んだので、
    皆は、特許出願の作業が終わるまで、
    会社で行っている新規開発の中身は絶対に口外しないでくれ。

    西島先生には、こはぜ屋の知財顧問になってもらった。
    富島専務(志賀廣太郎)には、
    有村店長(光石研)との秘密保持契約の作業をしてもらっている。

    大地(山崎賢人)、西島先生が佃製作所にお願いしてくれた、
    失敗品の20足分のソール樹脂の弾性測定試験の結果がいつ届くか、
    佃社長(三上博史/阿部寛)に聞いてくれたか?(大地が頷く)

    西島先生が特許出願するまでの間、私の方は、
    坂本さんから紹介された特許樹脂「シルクレイ」を当たってみる。

    それと、新規スポーツシューズの名称は『陸王』にした。
    西島先生は既に『陸王』の商標登録の出願をしてくれている。

    先代の思いが籠もった名前だが、我々の手で『陸王』を完成させたい。
    これからも、皆、よろしく頼む。

■幕間■
 坂本が紹介した特許樹脂「シルクレイ」は誰からも注目されず、
 特許権者の飯村氏(寺尾聰)も行方不明で、宮沢社長も探し回ります。

 『陸王』の第2話のドラマの山場は、宮沢社長が、
 ようやく飯村氏をみつけたものの、なかなかライセンス契約に応じてくれず、
 宮沢社長の『陸王』にかける情熱を伝え説得した結果、
 飯村氏が心を動かされて特許樹脂「シルクレイ」をこはぜ屋にライセンスする
 という場面です。

 『陸王』についてコメントする知財関係の方々は、
 このエピソードを「死蔵特許問題」のように取り扱っていましたが、
 西島弁理士は以下のような処理を提案します。 

●西島特許事務所●
 宮沢社長と西島弁理士がミーティングテーブルを挟んで対面しているところに、
 秘書(石田ゆり子)が、アマンドの高級ケーキを置いて、
 にこっと笑みを浮かべて退室する。
〔宮沢〕西島先生、というわけで、坂本さんに
    ソール素材として「シルクレイ」を紹介してもらったのはいいのですが、
    「シルクレイ」の特許権者の飯村氏が、
    彼の会社が倒産して以来行方不明なっていて困っているんです。
〔西島〕こういう場合、いっそ飯村さんが見つからない方がよいともいえます。
    「シルクレイ」特許は、あと7年の有効期間がありますが、
    特許料は来年までしか支払われておらず、
    飯村氏が財政的に困窮しているのであれば、
    特許料をこれ以上支払わないこともありえます。
    特許権が消滅してしまえば、誰もが「シルクレイ」を自由使用できます。
    
    特許樹脂「シルクレイ」が3年間実施されない場合、
    特許権者の飯村氏とライセンスの協議ができなければ、
    こはぜ屋さんが特許庁長官に裁定請求をして認められれば、
    ライセンス料を供託して、裁定によるライセンスを受けることができます。

    「シルクレイ」特許は製造方法も全て開示されているので、
    樹脂・繊維加工技術を有する企業であれば「シルクレイ」を製造できるはずです。
    我国の樹脂・繊維加工技術は今だに世界有数ですからね、
    その企業にも裁定によるライセンスを受けてもらい、
    こはぜ屋さんと「シルクレイ」を共同開発してもよいのではありませんか。
    佃製作所に余力があれば、共同開発を支援くれるかもしれません。

    「シルクレイ」特許が特許料未払いであと1年で消滅するなら、
    裁定のライセンスは1年だけで、あとは自由使用できますから、
    飯村氏の特許権の縛りはないに等しいですよ。    
〔宮沢〕なるほど、そんな仕組があるとは、特許制度は奥が深いんですね。
    しかし、西島先生、これは私の流儀というか、
    やはり、「シルクレイ」に思い入れがあるはずの飯村氏を探し出して、
    ライセンス交渉をやるだけやってみようと思います。
〔西島〕勿論、宮沢社長がやりたいように進めてよいと思います。
    もし、飯村氏とライセンス交渉できるようであれば、
    残りの6年分の特許料はこはぜ屋が持つということを、
    ライセンスの見返りにしてよいかもしれません。
〔宮沢〕西島先生、良い案を提案いただきながら、
    私の我儘を聞いていただきありがとうございます。
〔西島〕今準備している特許出願では、
    ソール素材は具体的な樹脂組成ではなく、
    柔らかさを示す樹脂の弾性で規定していますから、
    これがそのまま特許になれば、
    仮に、飯村氏が「シルクレイ」を他社にライセンスしても、その他社は、
    スポーツシューズ用の低弾性のソール素材としては使用できません。
    ですから、飯村氏には、
    せめて、スポーツシューズのソール素材の部分だけでも、
    ライセンスできないかお願いしてみて下さい。
    特許出願は今週中にしておきます。
〔宮沢〕
何としても飯村さんを探し出して食いつこうと思っています。
    それと、特許出願後に、茂木選手に試作品を届けてもよいでしょうか?
〔西島〕茂木選手に認めてもらえるか否かは営業上重要ですから、
    やむを得ないでしょう。しかし、
    茂木選手とは必ず秘密保持契約を結び、
    誰も見ていないところで履いてもらうようにお願いして下さい。

■幕間■
 この段階で、西島弁理士は秘密保持契約に拘りますが、
 茂木選手と秘密保持契約を結べるかはなかなか微妙です。
 常識的には、面識もない宮沢社長に秘密保持契約を突き付けられて、
 契約通り、こっそりと試作品を履くスポーツ選手はいないでしょう。
 脚本上は工夫を要するところです。
(続く)
posted by Dausuke SHIBA at 20:05| Comment(0) | TrackBack(0) | TVドラマ