2019年11月17日

N国党系YouTuberの著作権問答を考えてみた(その3)

■問答T:
 文化庁の問合せ窓口の職員との著作権問答■
 
 Youtubeで、話題のYouTuberが、
 結構真面目に著作権の話をしている配信番組がとても面白かったので、
 著作権制度の観点から、2本のブログ記事を挙げさせていただきました。

 『N国党系YouTuberの著作権問答を考えてみた(その1)』
 http://patent-japan-article.sblo.jp/article/186733696.html
 『N国党系YouTuberの著作権問答を考えてみた(その2)』
 http://patent-japan-article.sblo.jp/article/186763143.html
 対象としたのは以下の配信番組です:
 ●ユーザー名:平塚正幸さゆふらっとまうんど;
 ●配信番組名:
  『文化庁に「時事の報道」に著作権を主張できるのか聞いてみた』;
 ●URLhttps://www.youtube.com/watch?v=j1EDABP8Ix0

《YouTuber氏が直面したトラブル》
 YouTuber氏は、
 ご自身の過去のtwitter記事(以下「テロップ画像利用記事」)で、
 某TV会社の報道番組の文字テロップが映し出されている一場面
 (以下「テロップ画像」)をスクリーンショット(画像のまま複製)
 して、テロップ画像利用記事で、テロップ画像を表示して説明したところ、
 TV会社がTwitter社に、
 テロップ画像利用記事中のテロップ画像を表示して説明した部分は、
 著作権侵害であると訴え、
 YouTuber氏はテロップ画像利用記事を削除せざるをえなくなった。

 なお、テロップ画像利用記事が、
 Twitter社によって強制的に削除されたのか、
 YouTuber氏によって自発的に削除されたのかはわからないのですが、
 YouTuber氏としては不本意な削除であったようです。
 ============
 YouTuber氏と文化庁職員とは真面目に著作権問答をしていますが、
 文化庁職員は正確に回答しているものの、
 YouTuber氏は、著作権制度の不勉強もあり、理解の混乱が生じていて、
 なかなか話が噛み合いません。

《結論》
 私の方からは、この著作権問答について、
 著作権制度に基づいて考えると、以下のようになると説明しました。

 YouTuber氏は、著作権法32条(引用)に基づいて、
 スクリーンショットしたテロップ画像を、
 テロップ画像利用記事で表示した際に、
 「TV会社の報道番組からスクリーンショットした
  テロップ画像を引用して説明します」
 の一言を添えておくべきでした。

 引用して創作したYouTuber氏のテロップ画像利用記事(論評)
 に対して、著作権侵害を訴えられても、
 「引用でないこと」の立証責任は訴えた側にあるので、
 YouTuber氏、まずは、
 引用であることを理由に問題ないと突っぱねて、
 著作権侵害を申立てた側にボールを投げ返して、
 相手側に「引用でないこと」を立証させることが
 基本でしょう。

《YouTuber氏の理解の混乱を示す主張》
 報道番組中の時事問題を内容とするテロップ画像
 を利用した他人に対して 
 著作権者たるTV会社が、著作権を行使することを認めて、
 TV会社の許諾がなければ、
 誰も時事問題を内容とするテロップ画像が利用できないとなると、
 社会活動家を自称するYouTuber氏が行うような論評活動が
 実質的にできなくなり、一般需要者の公益を棄損する
 (従って、TV会社に著作権の行使を認めるべきではない)。
 ============
 YouTuber氏の上記主張に対して、私は以下の説明をしました。

 時事問題を内容とするテロップ画像は、
 他人の論評活動で自由利用できるようにすべきだ、
 とういうYouTuber氏の主張の趣旨はその通りですが、
 著作権法は、この趣旨を、YouTuber氏のように、
 TV会社に著作権の行使を認めないという規制でなく、
 TV会社に著作権の行使を認めた上で、
 論評活動者がテロップ画像の引用利用する限り、
 TV会社の著作権は当該引用利用には及ばない、
 という仕組みで保証しているということです。

 ここを理解していないと、
 YouTuber氏が引用の範囲を超えた利用をした場合、
 その途端、TV会社の著作権は当該利用に及び、
 YouTuber氏は、
 TV会社の著作権侵害が問われることになります。

■問答U:
 N国党第1公設秘書との著作権問答■

 前回のブログで、
 YouTuber氏と文化庁担当者との間の問答を一段落させて、
 今回のブログで、
 YouTuber氏とNHK職員との間の放送法問答について
 考えてみようと思っていました。

 しかし、YouTuber氏が、最近、新たな著作権トラブルに直面し、
 今度は、Youtube社からアカウントを抹消され、
 配信番組全体が削除されるかもしれないとの
 危機的状況にあるということで、そうなると、
 問答T・放送法問答の配信番組も消滅してしまいますので、
 その前に、
 この新たな著作権トラブルについて考えてみることにしました。

 対象としたのは以下の配信番組です:
 ●ユーザー名:平塚正幸さゆふらっとまうんど;
 ●配信番組名:
 『政策秘書・田中けんによって動画が削除されました。』;
 ●URL:https://www.youtube.com/watch?v=ZxOnhupBJbA
 
 《YouTuber氏が直面した新たなトラブル》
 YouTuber氏は以下のトラブルに直面しました。

 N国党国会議員政策担当秘書(以下「政策秘書」)氏が、Youtubeで、
 YouTuber氏にとって敵対的な内容の配信番組Xを公開したところ、
 (おそらくは)YouTuber氏との種々関係を考慮して、
 自ら配信番組Xを削除した。

 その後、YouTuber氏は、既にダウンロードしていた配信番組Xを、
 政策秘書氏に無許諾で、
 自身のYoutubeアカウントでアップロードして公開したため、
 政策秘書氏は、Youtube社に
 YouTuber氏がアップロードした配信番組Xの公開は、
 著作権侵害になるため、
 YouTuber氏がアップロードした配信番組Xを削除することを
 訴えた。

 Youtub社は、政策秘書氏の訴えを認め、
 YouTuber氏が公開した配信番組TはYoutub社によって削除された。

 *私は、配信番組Xを削除される前にたまたま見ていましたが、
  配信番組Xは、配信番組Yの中で、
  YouTuber氏の論評なしに丸ごと公開された印象を持ちました。

  以下では、
  @配信番組Xは政策秘書氏を著作者とする著作物であり、
  A配信番組Xは、配信番組Yの中で、
    YouTuber氏の論評なしに丸ごと公開されていた
  ことを前提に説明します。

《YouTuber氏の理解の混乱を示す主張》
 YouTuber氏は、
 N国党という公的政党の政策秘書氏の配信番組Xは、
 公益性を有するので、誰もが自由利用できるものであるから
 (米国著作権法に言うフェアユースを念頭に入れているのかもしれません)
 政策秘書氏の著作権行使を認めるべきでないと主張しています。

《著作権の保護対象の観点からの考察》
 著作権法は、著作物を創作した著作者に著作権を発生させて、
 他人の一定の利用を制限することで(著作権法18〜28条)、
 著作権者及び著作物を保護します。

 ここで、政策秘書氏の配信番組Xをアップロードして利用した
 YouTuber氏のアカウント上の配信番組Yは、
 そもそもYouTuber氏の著作物として保護される対象であるのか、
 という問題があります。

 配信番組Yは、他人(政策秘書氏)の配信番組Xを、
 丸ごとそのまま公開しているだけで、
 YouTuber氏の創作要素は実質的に0です。

 そうであれば、原則、著作権法によって
 配信番組Xは、政策秘書氏の著作物として保護され、
 配信番組Yは、YuoTuber氏の著作物ではなく、
 実質的には、政策秘書氏の著作物である配信番組Xとして、
 保護されることになります。

 従って、配信番組Xの著作権者である政策秘書氏は、
 Yuotuber氏による配信番組Yに対して
 差止請求できることになります(著作権法112条1項)。

《引用の範囲を超えた利用の観点からの考察》
 著作権法32条1項(引用)によれば、
 「公表された著作物は、引用して利用することができる。
  この場合において、
  その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、
  報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で
  行なわれるものでなければならない。


 ここで、引用は、
 「報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で
  行なわれ
」なければなりませんが、
 上記したように、YouTuber氏の配信番組Yは、
 YouTuber氏自身による報道、批評、研究等の創作の要素が0であり、
 単に他人の著作物である配信番組Xを、YouTuber氏が、無許諾で、
 ダウンロード→アップロードして公開しただけなので、
 YouTuver氏の創作中にあるべき「引用の目的」がなく、
 「引用の目的上正当な範囲」がそもそも0であり、
 引用の目的上正当な範囲の外であるということになります。
 
 そうであれば、配信番組Xを、
 著作権者に無許諾でダウンロード→アップロードする行為は
 複製権(著作権法21条)及び公衆送信権(著作権法23条)の侵害
 ということになるでしょう。

《フェアユースの主張について》
 米国の著作権法のフェアユースの考え方は、
 我が国の著作権法には明示規定がなく、
 我が国の裁判所はYouTuber氏のフェアユースの主張を、
 そうそうたやすくは認めてくれません。

 また、米国の著作権法でも引用に近い概念が入っており、
 今回のような配信番組Xを丸ごと利用しただけの配信番組Y
 に対して、公益性だけを理由に、米国の著作権法であっても、
 フェアユースが認められるかは微妙です。
 
《知的財産権侵害の恐ろしさ》
 特許権・商標権・著作権等の知的財産権の侵害は、
 民事的には、差止請求や莫大な損害賠請求をされ
 (例えば、著作権法112条1項、民法709条)、
 刑事的には、懲役・罰金の対象となりますので
 (例えば、著作権法119条1項)、
 対応を1歩間違えれば、企業であっても倒産のリスクがあり、
 個人事業者であれば、
 破産や信用棄損による事業継続ができない状況に陥るリスクがあります。

 上記のYouTuber氏は今のところ、Youtube社とのやり取りの中で、
 配信番組Yが削除され、最悪でも、
 アカウントの抹消くらいで済むという言い方もできます。

 しかし、著作権者はYoutube社とは関係なく、
 著作権法等に基づき、
 YouTuber氏に直接に配信番組の差止請求(削除要求)ができ、
 YouTuber氏を司直に告発することも可能ですから、
 YouTuber氏は、
 上記の民事的・刑事的責任を追及されるリスクがあります。

 幸いなことに、政策秘書氏は、今のところ、
 Youtube社を通しての
 動画削除・アカウント抹消狙い以上の行動はしていませんし、
 仮に、YouTuber氏が刑事責任を追及されても、
 司直に悪質ではないと判断されれば、
 何事もないということもあり得るでしょう。

 しかし、YouTuber氏が、著作権法を無理解のまま、
 政策秘書氏に対して配信番組Xの丸ごと利用のような行動を繰り返せば、
 著作権法112条2項に基づき、YouTuber氏のYoutube活動は、
 政策秘書氏に対する著作権侵害のおそれがあるとして、
 YouTuber氏のYoutube活動全体の差止請求に至るリスクがあり得、
 行動が悪質と判断されて、
 刑事責任を司直に追及されるリスクもあり得るでしょう。

 そして、何と言っても、政策秘書氏は公的政党の公人ですから、
 政策秘書氏がYouTuber氏の刑事責任を追及しようとすれば、
 司直も全く無視することはできないでしょう。

 YouTuber氏の配信番組は、どうみても論評ですから、
 他人の動画等を「引用」して論評すれば、
 YouTuber氏の目的は十分に達成できると思われます。

 YouTuber氏は、著作権制度を勉強し、
 大きなリスクと背中合わせの無駄な活動は極力回避し、
 本来志している政治の道を歩まれることを願わずにいられません。
posted by Dausuke SHIBA at 20:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 著作権

2019年11月03日

N国党系YouTuberの著作権問答を考えてみた(その2)

 著作権関係の記事を検索していたら、たまたま、
 話題のN国党系YouTuber氏が、文化庁の問合せ窓口の職員と、
 結構真面目に、著作権の話をしている、
 以下の配信番組がヒットして、とても面白く見ることができました。

 ●ユーザー名:平塚正幸さゆふらっとまうんど;
 ●配信番組名:
 『文化庁に「時事の報道」に著作権を主張できるのか聞いてみた』;
 ●URL:https://www.youtube.com/watch?v=j1EDABP8Ix0

■YouTuber氏の直面したトラブルの概要■
 この配信番組だけでは、
 YouTuber氏の直面したトラブルの内容の詳細はわかりませんが、
 以下が概要と思われます。

 YouTuber氏は、
 ご自身の過去のtwitter記事(以下「テロップ画像利用記事」)で、
 某TV会社の報道番組の文字テロップが映し出されている一場面
 (以下「テロップ画像」)をスクリーンショット(画像のまま複製)
 して、テロップ画像利用記事で、テロップ画像を表示して説明したところ、
 当該TV会社がTwitter社に、
 テロップ画像利用記事中のテロップ画像を表示して説明した部分は、
 著作権侵害であると訴え、
 YouTuber氏はテロップ画像利用記事を削除せざるをえなくなった。

 なお、テロップ画像利用記事が、
 Twitter社管理運営部門側によって強制的に削除されたのか、
 YouTuber氏によって自発的に削除されたのかはわからないのですが、
 YouTuber氏としては不本意な削除であったようです。

 ******

 YouTuber氏の文化庁職員への無手勝流の突撃問答ですが、
 YouTuber氏が真面目に正面から著作権制度を理解しようとしている
 ことがよく伝わる一方、
 ここまで怖いもの知らずに勉強しないで著作権法に挑めば、
 YouTuber氏のような理解の混乱が生じるのも無理はないと思います。

 この著作権問答について、
 著作権制度に基づきどう考えたらよいかを説明します。

 前回は、まず結論として、
 YouTuber氏は、著作権法32条(引用)に基づいて、
 スクリーンショットしたテロップ画像を、
 テロップ画像利用記事で表示した際に、
 「TV会社の報道番組からスクリーンショットした
  テロップ画像を引用して説明します

 の一言を添えて説明をすればよかった、ということを説明しました。
http://patent-japan-article.sblo.jp/article/186733696.html

 このことは、特段、著作権法を正面から勉強しなくても、
 多少なりとも報道、批評、研究に関する
 新聞・TV・論文・書籍を読んだり聞いたりして、
 これらの中でなされる引用の態様を経験的に理解するだけでも、
 YouTuber氏自身の他人の著作物の利用が、
 引用といえる常識的な利用態様なのか、
 引用といえない非常識な利用態様なのかは判断できる筈です。

 実際、まったく同じ問題に直面した他のYouTberであるI氏の、
 配信番組中での、某新聞社サイトのサイトキャプチャーの利用
 に対してなされた著作権侵害の申し立てについて、
 I氏が、配信番組は著作物を引用しているだけなので、
 問題ないと突っぱねて解決したようです。
 https://note.mu/ihayato/n/n8e3a24412da4

 I氏の主張が法的に万全か否かはここでは議論しませんが、
 I氏のように、まずは、
 引用であることを理由に問題ないと突っぱねて、
 著作権侵害を申立てた側にボールを投げ返して、
 相手側に「引用でないこと」を立証させることが
 基本であろうと思います。

 ******

 今回は、本題のYouTuber氏の理解の混乱について、
 著作権制度の趣旨に遡って説明してみます。

■著作権法32条(引用)■
 YouTuber氏は、以下のように主張します:
報道番組中の時事問題を内容とするテロップ画像
 を利用した他人に対して 
 著作権者たるTV会社が、著作権を行使することを認めて、
 TV会社の許諾がなければ、
 誰も時事問題を内容とするテロップ画像が利用できないとなると、
 社会活動家を自称するYouTuber氏が行うような論評活動が
 実質的にできなくなり、一般需要者の公益を棄損する。


 YouTuber氏の主張は全くその通りですが、
 YouTuber氏には、これまで、多くの人々が、
 時事問題を内容とする著作物を利用して論評活動をしているのに、
 問題になることが滅多にないことにも考え及んで欲しいところです。

 著作権法32条(引用)は、YouTuber氏の主張のような、
 論評活動において、他人の著作物
 (本件では時事問題を内容とするテロップ画像)を利用することを
 著作物の著作権者の著作権行使によって、
 妨げられることがないようにした規定である
 と理解した方が考え易いと思います。

 引用という利用行為が保護される理由は、
 YouTuber氏の主張する通り、著作権制度よりも古くから、
 公益・公正・表現の自由等の観点から、
 他人の著作物の利用についてのルールが確立されていた論評活動が、
 ルールに則っていれば著作権によって不当に制限を受けるべきでない
 という理念を担保するためです。

 ******

 人が生まれることで人権が発生するという基本原則と同様に、
 著作権制度は、
 著作物が創作されたと同時に、著作物の著作者に著作権が発生する
 (著作権法17条1及び2項)という、極めて原理・原則的な制度です。

 従って、TVの報道番組の背景に、
 番組のセット・タイトル・ロゴ・アナウンサーなどの
 TV局が構成したレイアウトが映り込んだテロップ画像は、
 著作物であり、そこに著作権が発生し、
 著作権者たるTV会社は著作権の正当な行使権原を有することは、
 現状の著作権法では認めざるを得ません。

 上記のレイアウトには、
 TV視聴者にインパクトのあるセットとアナウンサーの組合せ、
 アナウンサーとセットに合わせたタイトル・ロゴの大きさ・配置、
 アナウンサーとしてどのような顔の人を選ぶか、
 そのアナウンサーにどのような服を着せるのか、
 そのアナウンサーにどのような表情させるのか、
 全体の色彩配置等の、
 他の番組に対して特徴をだすための創作が伴うので、
 その画像は著作物といえますから、
 そこにテロップが被っても画像全体にTV会社の著作権は発生します。

 しかし、著作権法上は、そのテロップ画像の引用に対しては、
 TV会社の著作権は及ばないようになっているのです。

 仮に、TV会社が「報道番組の無断利用を禁じる」と
 どこかに注意書きを置いていても、引用する場合は、
 無断で利用して構いませんし、前回もお話ししたように、
 下手に引用させて欲しい、などと言わない方が良いということです。

 なお、繰り返しての注意になりますが、
 他人の著作物を引用していると言ってしまうと、
 後で、裁判等で、それが引用でないとされてしまった場合は、
 著作権侵害を自認したようなものですから、
 著作権者は情け容赦なく著作権を行使して、
 テロップ画像の利用に対して差止や損害賠償を請求しえます。

 従って、これも前回お話ししたように、
 ご自身の引用の行為が、正当な引用なのか否かについては、
 しっかり意識しておいた方が間違いがないということになります。

******

 YouTuber氏は、本来は、
 時事の問題を内容とする著作物はどのような場合にも
 著作権を行使することができないようにすべきではないか、
 と主張されているように聞こえるのですが、
 現状の著作権制度は、引用でない利用に対しては、
 原則、そのようになっていないということです。

 YouTuber氏は、政治家を志しているように見受けられますので、
 ご自身の主張は政治の場で議論し、
 著作権法を改正することで実現することが本道かと思います。

 ******

 著作権制度は、
 大体は常識的な範囲で考えれば対応できるのですが、
 あまりに原理・原則的なので、科学・技術の最前線では、
 ●猿が描いた図形に著作権が発生するのか?
 ●AIが書いた小説に著作権が発生するか?
 のような常識の範囲を超えた状況も考えなければなりません
 (それはそれで面白いのですが)。

 しかし、Youtubeがアップする配信番組のレベルでは、
 概ね常識的な範囲で考えれば対応できると思いますので、
 著作物の塊を駆使して活動するYouTuberの皆様には、
 Youtube上で視聴している方が恥ずかしくなるような次元の話で、
 無駄にエネルギーを浪費されないよう、
 著作権制度についての最低限の事項を
 (我々のような専門家に相談することも含めて)
 勉強しておいていただく方がよいと思います。

■著作権法41条
 (時事の事件報道のための利用)■

 YouTuber氏は、著作権法41条の規定:
 「時事の事件を報道する場合には、
  当該事件を構成し、又は
  当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる著作物は、
  報道の目的上正当な範囲内において、
  複製し、当該報道に伴って利用することができる。

 に基づいて、テロップ画像の利用は、
 著作権を行使されることなく利用できる、と主張しています。

 著作権法41条をサラッと読むと、
 YouTuber氏のように感じるのは無理はないかとも思います。

 しかし、YouTuber氏の理解は的が外れていることを、
 以下に説明します。

 ******

 YouTuber氏は、「時事の事件を報道する場合」の「報道」に、
 自身のTwitterの記事が該当すると考えています。

 ここでは、これは正しいということにしましょう。

 しかし、YouTuber氏のTwitterによる報道対象は「時事の事件」
 だったのかということが問題と思います。

 例えば、報道番組を放映中に、
 アナウンサーがニュースを読み上げていたら、
 隣のアシスタントに痴情のもつれで殺害されてしまい、
 その一部始終がすべて放映されたとしましょう。


 YouTuber氏が、この殺人事件たる「時事の事件」を、
 Twitterで報道するために、
 アシスタントがアナウンサーにナイフを突き刺した時の
 テロップ画像をTwitterで挙げたとします。。

 これは引用ではなく報道そのものですから、
 著作権法41条が適用されるでしょう。

 この場合、テロップ画像に映っている、
 アナウンサーとアシスタントは事件を構成し、併せて、
 スタジオ内のセット、タイトル、ロゴ等が映っている画像は、
 TV会社の著作物といえます。

 即ち、YouTuber氏は、「時事の事件」を、
 テロップ画像を使用してTwitterで報道する場合に、
 当該事件を構成し、又は、当該事件の過程において見られた
 著作物である「画像」を利用したことになりますが、
 テロップ画像を挙げてTwitterで報道することは、
 この「時事の事件」の報道目的上正当な範囲である、
 といえるでしょうから、YouTuber氏は、著作権法41条に基づき、
 テロップ画像を利用できると言いえると思います。

 ******

 しかし、YouTuber氏は、実際には、
 報道番組そのものを「時事の事件」としたわけではなく、
 YouTuber氏が説明したかった別の時事の事件を報道した報道番組
 の内容の一部であるテロップ画像を、
 YouTuber氏の説明の補強をするために、
 証拠としてスクリーンショットして引用して利用したということです。

 即ち、YouTuber氏は、YouTuber氏が説明したかった別の時事の事件を
 人の褌(テロップ画像)を借用(引用)して説明したとことになり、
 このような利用は引用であっても、
 著作権法41条の利用には該当しないということになります。

 念のため、申し添えますが、引用であれば、
 人の褌を借用(引用)して合法的に相撲を取れます。

 ******

 このように、著作権法41条は、
 時事の事件をTVカメラで映し出した中に、
 例えばインタビューした人の背景に、
 現代美術がはめ込まれた額縁がどうしても映り込んでしまう
 ようなやむを得ない(報道目的上正当な)場合は、
 その現代美術の著作権はその映り込みの行為(複製)には及ばない
 ということをイメージした規定であると理解すればよいと思います。

■著作権法10条2項(著作物の例示)■
 YouTuber氏は、著作権法10条2項:
 「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、
  前項第一号に掲げる著作物に該当しない。

 を根拠に、TV会社の報道番組等の、
 時事の報道には著作権が発生しない、と主張しています。

 しかし、YouTuber氏は、
 著作権法10条2項の「事実の伝達にすぎない」を読み落としています。

 「事実の伝達にすぎない時事の報道」とは、
 例えば、新幹線の車内入り口の上部にテロップ表示される、
 「●●新聞ニュース」が典型です。

 このテロップ表示は、どの新聞のニュースも、
 5W1Hだけを30字程度で定型的にまとめた文章で、
 「●●新聞ニュース」が付されてないと、
 どの新聞社のテロップ表示なのかがわかりません。

 即ち、新幹線内で見ることができるテロップ表示のニュースは、
 創作性が全くない文章ですから、
 そもそも著作物とはいえず著作権の対象にならないということになります。

 それに対して、前述したように、YouTuber氏が利用したテロップ画像は、
 映っていた説明テロップの文章が著作物といえなくとも、
 その説明テロップと共に映り込んでいる創作性のある要素と共に
 テロップ画像を構成するので、全体としては著作物に該当する
 (「事実の伝達にすぎない時事の報道」ではない)というわけです。

******

 次回は、おまけですが、このYouTuber氏が、
 NHKの女性職員と放送法問答をしていて、
 NHKの女性職員のからめ手の変則回答によって、
 若干たじたじになっていた配信動画がありましたので、
 これについて考えてみようと思います。
posted by Dausuke SHIBA at 16:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 著作権

2019年10月31日

知財テーマブログの最新記事:マラソン・競歩の札幌実施騒動

 私の知財テーマブログに、
 『オリンピック関連登録商標の異議申立と違法ライセンス疑惑の狭間で(13):マラソン・競歩の札幌実施騒動』を掲載しました。

 オリンピックにおいて、開催都市が如何にお飾りに過ぎないかを
 IOCを始めとする関係当事者間の複雑怪奇な契約関係を読み解きながら
 解説しました。

 小池都知事は、下記をIOCに提案して毅然と対応すべきと思います。
(A)東京大会の実施を、気候の落ち着いた秋に順延する;
(B)条件(A)の下で、マラソン・競歩は東京で実施する;
(C)条件(A)(B)をIOCが拒むのでであれば、
   東京大会を返上する。
posted by Dausuke SHIBA at 16:42| Comment(0) | TrackBack(0) | お知らせ